子わんこシン、縁日へ行く ２
「あれ何―？」
「あれはイカ焼きだな。お前は食うと腹壊すぞ」
ムウさんに抱っこのシンと、マリューさんと手をつないだレイは、ゆっくりゆっくり、神社に向かいます。
「あれはー？」
「たこ焼きだ・・・あれもダメだな」
「知ってる！イカとタコはね、お腹痛くなるもんね！」
シン、こっそり食べてお腹壊したことあるから、もう食べないよ！
「あ、金魚だ！」
シン、金魚も知ってます。
地球にいた時、お母さんが飼ってたんだよ。
ステニャもね、お魚大好きって言ってたから、シン、お母さんの金魚のお話してあげたんだ。
ひらひらひら。
赤くてちいちゃい金魚がいーっぱい！
「いっかい、４まるまる・・・・一回？」
一匹じゃなくて？
「うーん。シン、金魚はプラントに連れて帰れないから。やめておいた方がいいぞ？」
「だめー？」
「飼うんだったら、イザーク君に相談して、ここじゃなくてプラントで買ってもらったらどうかしら？」
「そっか。じゃ、隊長にお願いする！」
だって、６つしかないもんね。
旦那様に買ってもらえたら、その方がいいもんね！
「ねえねえ、あれは？」
次にシンが短い手で指したのは、真っ赤で綺麗な宝石みたいなものを売ってるお店でした。
「あれはりんご飴だ。お前の目みたいな色だな」
「うん！」
シンのご主人様はね。赤い色が好きだって言うの。
シンの目と、おんなじ色が好きだって。
綺麗だねって、言うの。
あれあげたら、喜ぶかな。
にっこり笑って、いい子だねって言ってくれるかな。
「えっと・・・これ３つだね！」
「帰りにな、シン、」
「うんっ！」
もっといいものあるかも知れないもんね！
クレープ、焼きそば、ベビーカステラ、お好み焼き。
お肉も焼いてたよ。から揚げもあったよ！
美味しいのだけじゃなくってね、スーパーボール流してるのもあった。
ハロみたいなおもちゃもあったし、風船の中にお水入れたのも売ってたよ！
でもね、シン、我慢したんだよ。
人にぶつかって、鳥居をいくつかくぐって。
そうしてるうちに、シンは、アイス屋さんを見つけました。
「アイス！」
「アイスっていうか、かき氷だな」
【かき氷】アイスは、氷をがりがり削って、その上に、甘い匂いで、綺麗な色のシロップをかけてあるものです。
赤、青、黄、・・・・緑。
その上に、白い練乳もかけてます。
美味しそう！
「かきごーりアイス、いくつ？」
「300アード・・・それ３つだな」
シン、３たす３は６だって、ちゃんと計算できるんです。
シンが持ってるのも、６つなんだよ！
「でも練乳は100アード追加だな。４つだ」
「えーーー！」
１つ足りないーー！
「ひとつ、これじゃだめ？」
ムウさんに、旦那様にもらった茶色い硬貨を見せますが。
「うーん。それじゃ足りないな。それに、それはお賽銭だろう。願い事しなくてもいいのか？」
「するー！」
アスランさんとみんなと、ずっといっしょってお願いしなくちゃ！
「お参りしながら、ゆっくり考えましょう？」
レイの肩を掴んだ男の人を、ぎんっ、って威嚇しながらマリューさんが言いました。
あっちはあっちで、なんだか大変そうです。
「うん・・・」
えっと、３たす３は６。
３たす４は、７。
でも、シンが持ってるのは、６つ。
銀色、６つしかないんです・・・・
神社に着きました。
神社の前にはね、怖い顔した大きなわんこが２匹いました。
神社を守ってるんだって！
秋田犬かな。って聞いたら、ムウさんにちょっと違うかなって言われちゃった。
お参りの仕方は、マリューさんに教わりました。
神社の前にある箱の中に、茶色い硬貨をぽーんと入れてね。吊るしてある紐を引っ張って、しゃらんしゃらんと音を鳴らして。
二回おじぎして、てちてちって二回お手手を叩いて。お手手を合わせたまんま、声に出さないでお願い事をするんです。
『アスランさんと、みんなと、ずっと一緒にいるんだよ』
それからもっかいおじぎして、お願いしますってするんです。
シン、カンペキにできたよ！
「さて、戻ろうか」
ムウさんに言われて、シンは、むーっ。
【かき氷】アイス屋さんの前で、またまたむーっ。
銀色オセロ、残り６つ。
アイスは３つ。練乳１つ。
赤い赤いりんご飴３つ。
アイスの色は決めてあるの。
ご主人様の目の色の、緑色って決めてるの。
でもでも、甘―い練乳もかけて欲しいの。
練乳はね、１つなの。
１つ、足りないの・・・
お店の前で、うーうー言ってる子わんこに、ムウさんもお店の人も苦笑い。
「「しょうがないな・・・・」」
二人の声が被ります。
それから、顔を見合わせてまた苦笑い。
「国防総監殿には、ないしょだぞ」
そう言って、ムウさんはうーうー子わんこのべったべたな肉球の上に、銀色の硬貨をもうひとつ乗せてあげました。
いちにいさんしい・・・銀色、７つ！
「ありがとー！」
子わんこの、キラキラお目目に見上げられ、ムウさん思わずにっこにこ。
「おじちゃん、緑のちょーだい！練乳もー！」
「ああ、オマケしてやろうな」
「オマケ！」
銀色オセロと交換のアイスは、氷たっぷり。シロップたっぷり。もちろん練乳もたっぷりです！
「おいしい！」
「良かったなぁ、ボウズ」
「うん。おじちゃんありがとーｖ」
「ああ」
お店のおじちゃんもにっこにこ。
もちろん、帰りに赤いりんご飴を買いました。
ご主人様のお土産、買いました。
「お土産なんだよ！」って言ったら、お店のおじちゃんは、飴の袋にリボンをつけてくれたんだよ！
「金魚―！」
「だからな、坊主」
「見るだけだもん！」
それから金魚のお店で、ひらひら金魚をもっかい見て、旦那様におねだりするんなら、どんな子がいいか考えました。
ステニャはね、ひらひらしたお魚が好きなんだって！
レイは帰りに、シンがジャスティスの綿菓子を買ったお店で、アカツキの綿菓子を買いました。
「おそろいだね！」
シンは大喜び。
それから、お向かいのお店で、みんなで【お好み焼き】を買いました。
旦那様のお土産に、買いました。
「ただいまー！」
「お帰り、シン。・・・ありがとうございました、ムウさん、マリューさん」
お宿に戻ったら、旦那様はご機嫌で、ご主人様は真っ赤な顔をしていました。
きっとまた、お風呂で逆上せちゃったんだね。
「アスランさんお土産！」
ご主人様のお顔みたいに、シンのお目目みたいに、赤い赤いりんご飴、ご主人様にあげたらね。
「へえ・・・綺麗だな。なんていうんだ？これ」
「りんご飴って言うんだよ！」
シンは、得意になって教えてあげました。
「そうか。お前の目の色だな。ありがとう、シン」
「えへへ・・・」
ご主人様、喜んでくれたよｖ
「あ・・・・美味いな。ほら、シンも」
それから、リボンを取ってひと口食べて、シンにも食べさせてくれました。
「おいしいー、あ、これもあげるよ！」
シンはジャスティスの袋から、綿菓子をちぎってご主人様に分けてあげました。
「こんなのも売ってるんだ・・・・うん。美味しい」
「でもフリーダムばかっりだったんだ。嫌んなっちゃうよ」
「そうだろうな・・・」
ご主人様、苦笑い。
旦那様は、ムウさんとお土産のお好み焼きを肴に、お酒を飲み始めちゃってます。
マリューさんと綿菓子を半分こしてたレイも、なんでだか混ぜられちゃってます。
「うわ、シン、手がべたべたじゃないか。洗って・・・口もだな。あー、首まで。風呂入って来るか」
「うん！あのね、あのね、アスランさん。おじさんの絵がね、銀色オセロになったんだよ！」
「オセロじゃない。硬貨っていうんだ」
「こうか、６つだったんだよ！それでね、赤い金魚がいたんだよ。いーっぱい！ひらひらしたのも、黒いのもいたんだよ！それからね・・・」
シン、お風呂に入っておネムになるまで、ずーっとご主人様に【縁日】がどんなに楽しかったかお話しました。
ないしょって言われたから、ムウさんに銀色こうか１つもらったのは、ちゃんと小さい声でお話したよ。
「ちゃんとありがとうって言ったか？」
「言ったよ！」
「偉い」
シン、褒めてもらっちゃった！
「今度はアスランさんも一緒に行こうね！俺、またりんご飴買ってあげる！」
「うん・・・そうだな」
ご主人様は、笑って。
シンに、おやすみのちゅーをしてくれました。
旦那様は、お酒でお布団に入って来ないから、シン、ご主人様を独り占めｖ
おやすみなさーーいｖ
縁日帰りの楽しい夜。子わんこシンの見る夢は。
赤い赤いりんご飴、緑のアイス、かっちょいいジャスティスの綿菓子。
イカ焼もたこ焼も、夢の中なら食べられる。
それから、赤い金魚と、浴衣の子猫。
楽しい楽しい、夢でした。
おわり
子わんこが縁日に行っている間、ご主人様たちは・・・？（18禁） ⇒