Sex and Shoot ２
変態に、変態に似てるって言われた。
じゃなくて。
コイツ、子供の頃からこんなこと・・・！
皆本にとって、それは許されないことだった。
子供は、守られるべき存在なのだ。
それは、チルドレンだろうが兵部だろうが変わらない。
こんなことに、晒していいはずがないのに。
「自分で言うのもなんだけど、僕も可愛かったからねえ」
皆本の唇から引き抜かれた舌が、ぺろりと皆本の顎を舐めた。
それで初めて、そこまで唾液が滴ってしまっていたことに気がついた。
「キスも、あいつに教わったから。どーしてもね」
そうして、改めて見てみれば。
にじみ出る雰囲気がそう思わせないので、どうしても忘れがちになってしまうのだが、中身はともかく、兵部の体は１５の子供だ。
薫たちと、そう変わらない、子供の。
そのことに気づき、皆本は慌ててブラスターに重ねられていた手で兵部の胸を押し返した。
「おいおい、それ使い方間違ってんじゃん」
まあいいけどさあ、と呟いて、兵部は片手で皆本の唯一自由な手を、再びブラスターの上へ押さえ込んだ。
そうして。
「そろそろ頂いちゃおっかなー」
そう、フザケたセリフと共に、かちゃかちゃと腰のあたりから金属音がした。
それが何だか、皆本が認識する前に、兵部の体が少し離れる。
「・・・・っ！」
その隙になんとか起きあがろうとするも、皆本の体を押さえ込んだ力は衰えず、ただ、ブラスターの上に押さえ込まれた右手で、それをきつく掴むことしかできない。
「今更じたじたするなって」
言われて思わず顔を上げれば、兵部が脚から学ランのズボンを抜くところだった。
それなりに筋肉がついているものの、未発達な線の細さと、何よりその白さに息を飲む。
ついさっき意識してしまった、『子供の体』という認識が、実感として皆本の胸に迫った。
しかし、兵部がそんなことを斟酌する訳がない。
むしろ、面白そうに笑うと、皆本の口の中に、人差し指と中指を揃えて、ぐいと突っ込んだ。
「濡らしてくれよ、皆本クン」
「むーっ！」
「だあっ！噛むな！」
反射で噛みついた皆本の口から、慌てて指を抜き出して。
もういいよ、などと勝手なことを呟くと、兵部はそれを、シャツに隠れた脚の間へと持っていく。
濡れた指が、白いシャツをめくった一瞬、皆本はがばりと起きあがろうとして、できずに少し腹筋を痛めた。
「おまっ！下着！！」
「んっ・・・バカだろ、お前」
酷く軽く罵られる前の、兵部の喉から漏れたあの声は何だ。
「夜這いにっ、来てんのに・・・穿いてくるわけ、ないじゃん」
その、鼻にかかったような妙に甘い声は何だー！
「な・・・何しに来てても下着くらい穿け！」
何かに必死な皆本の剣幕に、兵部は何か面白いことを思いついたように笑った。
そうして、下肢で何事かをやっていた指を胸元に持ってくると、シャツのボタンを二つばかり外し、右襟を引いて肩を露わにしてみせた。
「こっちも下着てない」
ほれほれ、と見せられた肩と浮いた鎖骨に、感じた妙な感覚を振り払い、皆本は目を閉じて叫んだ。
「知るかー！」
「ははっ、おっもしれー」
げらげらと笑った兵部は、そのままぼそりと呟く。
「もういいや。ちょっと痛いくらいで丁度いいだろ」
何がいいんだ、何が！！
思わず目を開けたとたん、ぞくり、と皆本の下肢に快感が突き抜けた。
見れば、兵部の指が、皆本のそれに絡みついていた。
「若いなぁ、回復早えー」
何度か擦られただけで、もうすっかり勃ち上がってしまったそれを片手で支え、兵部はついと腰を上げる。
いったい、何をするつもりなのか。
わかっていてもわかりたくなくて、皆本は呆然とそれを見届けてしまった。
ぬと、と快楽の元の先端に、濡れた何かが軽く当たって。
それにぬるりと擦られた後、ぐうっと、熱くてきついものに、その半ばまでを包まれた。
「・・・・・っ！」
「ンぁ・・・・・ぅ」
声を上げなかった自分を誉めてやりたいが、その分、兵部の声がよく聞こえてしまい、皆本は歯を食いしばった。
何て声出しやがる！
ていうか。
「てめ・・・なんて、こと・・・・」
自分が今触れているのが、兵部の中だというのが信じられない。
「んっ・・・、イイ、だろ？」
実際の距離よりも、ずっと高いところから皆本を見下ろして、兵部が嗤う。
「何回ヤっても狭くてサイコーって、すっげえ評判イイんだぜ？」
子供の体なのだから、そんなもの狭いに決まっている。
「ただ、ちょっと、狭すぎて・・・んっ、も、ちょい、待て」
ぶる、と皆本の上で兵部が震える。
はあ、とひとつ息をつき、それから半端に侵入っていたそれが、また、ぐうっと圧迫された。
「ん・・・っ」
目を閉じて、何かを堪えるかのような兵部の表情。
飲み込んでくる狭く、熱い肉。
ブラスターの上で重ねられた指が、ぎゅうと皆本のそれを掴んできて。
こんなのは、知らない。
こんなのは。
兵部じゃ、ない。
そう思ったとたんに、目の端に涙を浮かべた昏い瞳が、ちらり、と皆本を見下ろしてきた。
世界中のすべてをあざ笑うような、世界中ののすべてを悲しむような。
それは、いつもの兵部の瞳。
「なんか、お前、余裕じゃね？・・・気に食わないな」
そう呟くと、兵部のそこがきゅう、と締まった。
ただでさえ狭いそこに締め上げられて、更にずるりと引き抜かれる。
「むぇ・・・っ」
堪えようとした声が半端に漏れて、その声を兵部に笑われる。
「ヘ、ヘンな声・・・っ」
そういう兵部の声は、どこかせっぱ詰まった甘さを持っていて、皆本の背筋を震わせた。
それから。
「大人し、く、喘いだほうが、楽だぜ・・・っ」
そう講釈されながら、再び狭い肉の中に飲み込まれ、今度はぺたりと兵部の尻が皆本の腰に密着した。
「ぐ・・・っ」
皆本のものにきゅうきゅうとしがみつく襞は、ただ締め付けるばかりでなく絶妙な蠕動を繰り返し、根本から先端までを、まるで愛撫するかのように絡みつく。
触れた肌は熱く滑らかで、その感覚を確かめに、思わず手が伸びてしまいそうだった。
「や・・・やめ・・・・っ」
必死にそう絞り出し、ぎゅう、と目を瞑る。
自分の上に座り込み、目元を赤く染めて自分を見下ろす子供の姿は、それが仇敵の変態ジジイだとわかっていても、皆本には見ていられなかった。
しかし、それは兵部を余計に喜ばせるだけになり。
「いー顔、するなぁ」
まるで愛おしむように、するり、と頬を撫でられる。
やばい、と思う間もなく、ぬとりと濡れた熱いもので、唇を塞がれる。
潜り込んでくる舌が異常に滑らかなのは、やっぱり、子供の・・・
そこから思考が離れなくなってしまった皆本のそれを読んだのか、それとも読むまでもなかったのか。
皆本の口腔に、くす、と確かな笑いが漏れて。
それから兵部は、大きく腰をグラインドさせた。
「むぅっ！ふ、はぁっ！」
「ん、あ！ふぁ、ははっ！イイだろっ？」
イイとかよくないとか、もうそんなんじゃない。
駆け上がってくる射精感は、いっそもう暴力的だった。
駄目だ、と、わかってはいても。
そんなものはもう、止められるものではなくて。
「ーーーーーっ！」
搾り取られる快感は、強烈だった。
意志に反して腰が浮き、それを笑う声に、我に返る。
「うぁ・・・おい、中出しかよ」
「な・・・っ！」
それは、お前が！
そう言い返そうと、うっかり目を開けてしまった皆本が見たものは、はだけたシャツを引っかけて、面白そうに自分を見下ろす兵部の姿。
散々動いたせいでシャツが前にずり落ち、肩が隠れた代わりに、胸元が露わになっている。
その隙間に、ひきつれた銃創がかいま見えていた。
胸の真ん中に、ふたつも。
自分で見せびらかしているせいで、兵部の額に銃痕があることは皆本も知っている。
しかし、これは。
「ああ、これかい？」
皆本の視線が、何に釘付けになっているのか気づいたのだろう。
兵部はついと自分の額を指さした。
浮いた汗に張り付いた前髪に、いつもは隠れている銃痕がはっきりと見えた。
「コレと一緒だよ。さっき言った、初めての男にやられたのさ」
そうして額から下ろした手でもって、シーツに突かれた皆本の手を取り、兵部はそれを、ぺたりと自分の胸に当てた。
ざらりと感じる銃痕は、周囲の皮膚が滑らかなぶん、よけいに酷く感じられた。
「おまえもそのうち、こうやって・・・」
ずい、と兵部の顔が近くなる。
快楽の涙に濡れた瞳は、嗤いのかたちに歪められ、しかしひどくかなしそうだった。
泣いてるのか、おまえ。
皆本がそう、口にしてしまう前に。
猫のように嗤った男の濡れた唇が、口付ける寸前の距離で。
「薫を抱いて、そうして撃つのさ」
そう、囁いた。
「ーーーーーっ！」
絶句した皆本をげらげらとわらい、そうして兵部は大きく腰を振って自分の中の雄を愉しんだ。
今の表情だけでもイけそうだ。
でも、まだ。
もう少し、このオモチャで遊んでいたい。
何も言えず、わなないている唇にキスをする。
嫌がる舌を吸って捕らえ、緩く噛みついて反応を楽しむ。
「っ、はぁ・・・なんだ、まだ、でかくなるんじゃん」
ははっ、と笑って腰を使う。
自分を弄んでいる相手にさえ、あんな表情を見せてしまうような男だ。
こいつはきっと、あの男が自分にそうしたように、やさしく薫を抱くのだろう。
そうして。
撃たれるあの瞬間でさえ、あんなに嬉しそうな顔をさせるのだ。
まったくもって、腹立たしい。
腹立たしい、から。
兵部は、ニイ、と嗤って腰の動きを激しくした。
「も・・・やめ・・・っ」
皆本が、悲鳴のような声を上げる。
それが楽しくて仕方ない。
「何だよ、ヒトのナカにこんだけ出しといてさあ」
ずる、と先端付近まで引き抜けば、皆本の放ったものが、どろりとそこから流れ落ちた。
「キモチイイんだろ？」
また、深くくわえ込むと、ぐじゅりと耳を覆いたくなるような、粘ついた水音が立った。
自身の表面のぬるつきに、今の水音が何なのか、イヤというほど思い知らされる。
大きく首を振った皆本の、汗の滴る顎を取り。
深い闇を宿した瞳が、ずい、とのぞき込んでくる。
それが、催眠をかけようとする兵部の癖だと、不本意ながら知ってしまってる皆本は、ぎゅうと目を閉じて口を開けた。
「・・・・お前のっ」
そこで、再び深く飲み込まれ、ぐっと息を詰まらせて。
しかし、なんとか強く吸い込んで。
「お前の言いなりにはならない！」
そう、一息に叫び切ると、皆本はまた、歯を食いしばった。
でないと、また変な声が出てしまいそうだったからだ。
「・・・これくらいじゃあ、お前の心は折れない、か」
そう、低く響いた兵部の声は、しかしすぐさま軽くなった。
「まあ、しょうがない」
軽く、空虚な呟きに、思わず目を開けたくなった皆本は、続いた言葉と飲み込む動きに、必死になって自制した。
「僕は、愉しめれば、それでいいんだから、ね」
「うぁ・・・・っ」
自制したそばから声が漏れるほど、『愉しむ』兵部の中は気持ちがよかった。
「ははっ、ばーか」
それを聞いて、嗤う兵部の声に、先ほどの言葉が重なった。
『おまえもそのうち、こうやって。薫を抱いて、そうして撃つのさ』
胸の傷跡。
手の中の銃。
倒れる薫。
下肢から、沸き起こる快感。
こんなことは。
こんな、ことは。
はくはくと、皆本の口が声にならない声を放つのを、兵部はつまらなそうに眺め。
そうして、自分の唇で塞いでしまうと、大きく腰を動かした。
もうすぐイきそうなのだから、余計なことは、もう、いらない。
ぐんぐん性感が高まって、ぷは、と唇を離し、泣いている男の顔を見る。
そうして兵部は後悔した。
自分に泣かされているはずの男の目は。
まるで、泣いている子供を見るような。
何かを哀れむような、途方に暮れるような。
そんな色を、していたから。
終