俺の、家族 １３
触れてくるシンの手は、どれもこれも、信じられないほどに気持ちが良かった。
彼が、自分の体に夢中になってくれているのが嬉しかった。
でも。
でも、慣れた体は、それ以上のものを欲しがりだしてしまっていて。
わき腹の、柔らかいところの。
酷く感じる場所に吸い付かれて、我慢が効かなくなってしまった。
「・・・ごめん、我慢、できない」
快楽に蕩けはじめていた体を無理に起こして、シンのズボンを引き摺り下ろす。
あらわれたものは、もう完全に雄のかたちで、自然と口の中に唾が湧いた。
口でするのは、あまり好きではなかったのだけれど。
疲れるし、匂いや味が、どうにも好きにはなれなかったのだけれど。
でも、今は。
口の中に入れたシンは、熱くて硬くてひくひくしていて。
先端に舌で触れてみると、わずかに滲んだものの味も、決して嫌なものではなかった。
嫌ではない、というか。
これ。
もっと。
思わず舌を絡めて、吸い付いて。
もっと、と思ったところで。
「んっ・・・・っく」
口の中に溢れたものは、少し考えてから飲み込んだ。
少し喉に絡んだけれど、シンのものだと思うと嬉しかった。
ぺろぺろと、唾液に混じってこぼれてしまったものを舐め取って。
それからふと顔を上げて、真っ赤な顔でふるふるしているシンと目が合ってしまって。
「・・・・ええと、すまない」
つい謝ってしまって、アスランはしょんぼりとしてうなだれた。
やっぱり、呆れられただろうか。
それは、そうだよな。
いきなり咥えて、イかせて飲んで。
でも、誰にだってするわけじゃないんだ。
シンだからなんだ。
でもそれって、もの凄く言い訳がましくないか？
もの凄く、嘘くさく、ないか？
自分の素行が、少年を酷く傷つけてしまっていたのだと自覚のあるアスランは、そう思って開きかけた口を閉じてしまった。
しかしシンは、真っ赤な瞳をうるうるさせて。
「謝るの俺の方だろ！うわ、すっげー情けねーー！！」
そう叫ぶと、ベッドの上に転がって。
「今のナシですよ。カウントしないでくださいよ！うわでも初めてしてもらったんだから、ナシってのもナシで！じゃなくてええと、ええとーーー！」
じったじったと暴れるシンは、別に呆れているわけではなさそうだ。
それにほっとしたアスランは、それでも少し不安そうに、小首を傾げて聞いてみた。
「続き、するか？」
「は、はいっ！」
がばり、と起き上がったシンは、また勢い良くアスランの胸を押してひっくり返した。
そうして、自分だけズボンを半端に下ろされた情けない格好でいることに気が付いて。
それをばさばさと蹴って脱ぐと、勢いのままに、アスランのそれも引きずり下ろした。
白い脚があらわになる。
脚と、それから。
ごくり、と、シンの喉が鳴った。
艶かしい内腿なんかも、とっても魅力的だけど、それより何より目を惹いたのは。
アスランさん、感じてる。
シンの愛撫に力を持って、ゆるりと頭を持ち上げていたものだった。
えっと、してくれたんだから、俺もした方がいいよな。
シンは単純にそう思い、何の疑問もなくそこに口をつけた。
とたん、びくんと脚が跳ね上がり。
あ、気持ちいいんだ、と思ったところで、顎の辺りを掴まれて、ぐいぐいと押し返されてしまった。
「シン、いい。そこはいい！」
「え、でも俺してもらったのに」
「いいから！」
何で？と、無邪気に聞いてくるシンに、アスランは思わず大声で叫んでしまった。
「いいんだ、俺は後ろでイくから！」
「・・・・・・」
言ってから、すぐ真っ赤になったアスランと。
聞いて、少しぽかんとしてから真っ赤になったシンと。
顔を、見合わせて。
「え、と。じゃ」
シンは、恐る恐る白い脚に手を伸ばした。
「後ろ、いい？」
しなやかな筋肉に滑らかな皮膚の乗った脚は、心地良くシンの指を押し返して。
これから触れる場所への期待を、嫌がおうにも高めてくれる。
「もちろん。・・・・・ああ、そうだ」
頷いたアスランは、ふいと腕を上げてベッドボードの上にあった、プラスチックケースを指差した。
「そこ、ケースの中。ローションが入ってるから取ってくれ」
「え、あ、これ？」
安っぽいケースを開けると、安っぽいボトルが入っていた。
ラベルの文字は読めないけれど、
それが、まだ封を切っていない新品なのことに、シンは何だか安心した。
「お前がするか？それとも、俺が自分でした方がいいか？」
シンが取り出したボトルを眺めて、アスランが聞く。
女性なら、恐らくここまでの準備は必要ないのかもしれないけれど、アスランは男なのだから仕方がない。
「俺します！あの、でもやり方教えてください」
ボトルを開けた少年の手元を、アスランは思わず凝視してしまった。
「・・・・」
それは、なんだか自分でするよりも恥ずかしいような。
しかし、シンの表情は真剣そのもの。
これには・・・応えなくちゃ、いけない、よな。
アスランは、覚悟を決めた。
「わかった。じゃあ・・・」
頭の中で、幾通りかシミュレーションをして。
考えたあげくに、膝を付いて体を返した。
両膝を付き、シンの前に腰を突き出して。
シンの前に、恥ずかしい場所をすべてさらす格好を、して。
それは、ものすごく恥ずかしいけれど。
シンが、欲しがってくれるんだったら。
「場所、わかるよな？まずそれで濡らしてくれ」
「え、あ、はい！」
シンは言われたとおりに、ボトルの中身をそこへぼたぼたと垂らした。
「んっ・・・」
アスランの双丘が、ひくんと震える。
シンの前にさらされたそこが、濡れて、きゅ、と蠢いたのがわかった。
わ、わ、
ヤらしい。
なんか、すっげえヤらしい。
「それから…指」
えっと。
シンが触れると、そこはまた、ゆるりと蠢いて。
あ、あったかい。
そんな些細なことに驚きながら、シンはそこをそっと撫でた。
「入れて、大丈夫だから」
ローションをかけられて、濡れてぬるぬるしたそこは、酷くあっさりと、シンの指をつるりと飲み込んだ。
「わ・・・」
熱い、きつい、気持ちいい。
まず思ったのは、それだった。
入り口は、シンの指をきゅうきゅと締め付けているというのに、中は柔らかく、しっとりとシンの指に絡み付いてくる。
ここ、に。
入るんだ、俺。
そう思うと、ドキドキと心臓が高鳴った。
「動かして・・・シンの指なら、二本入れても大丈夫だと思うから。入り口、広げて。ローションは足した方がいいと思う」
「は、い。あの」
「う・・・ん」
問いかけの意味を含んだ語尾に、アスランが振り向く。
潤んだ瞳が色っぽい。
何かを堪えるように、掴まれたシーツに皺がよって。
長めの髪が、首筋に張り付いているのが、ひどく艶かしかった。
「どうやったら、気持ちいい？」
俺、今スゴイ気持ちいいんだけど。
アスランさんは、どうやったら気持ちよくなるの？
聞くと、アスランはふっと目元を和ませた。
「シンの・・・指が、入ってると思うだけで、もう、イきそうだ」
えっと、それって。
思わず、白い脚の向こうへと視線をまわす。
アスランのそれは、確かにふるふると震えて、先端に粘ついたものを滲ませていた。
「見・・・るな。続けて」
恥ずかしいのか、立てていた肘を崩し、額をシーツに擦り付けて、アスランは顔を隠してしまったけれど。
揺れる腰の、シンの指を呑んだそこは、曝されたまま。
更に腰だけを突き出したように、イヤラシイ格好になっていて。
頭隠して尻隠さず、ってこういうこと言うんじゃないかな。
そう思うと、なんだかアスランさん可愛いな、と思えてきて。
シンは、その可愛いお願いどおりに、ローションを足して、中を弄る指も、足した。
「っ、ふ・・・・ン」
アスランのそこは、彼の言うとおりに、２本の指を受け入れて。
そっとその間を離してみると、赤い肉が覗いて、イヤらしかった。
そのまま、２本まとめて奥まで突っ込んでみる。
そうすると、ひくんと腰が震えて、アスランの息に艶のある声が混じった。
「あ、は・・・・」
「気持ちいい？」
「あ・・・ん・・・・」
アスランの指が、シーツの上を彷徨う。
それが、自身の膝に達して、そのまま脚を伝い上げ…しかし、薄い茂みにわずかに触れたところで、ぱたりと落ちて、肘を付いた。
腰が浮く。
その動きに付いていけなかったシンの指先が、ぐり、と内壁を抉って、アスランはまた、切なげな吐息をもらした。
「は・・・・っ」
「アスランさん、イきたい？」
その動きの意味を理解して、シンは前に触ってやろうと手を伸ばす。
しかしアスランは首を振って、また、あの色っぽい瞳で見上げてきた。
「いや、いい。・・・言っただろ。後ろで、イくから。・・・・入れてくれ」
あと少しで、アスランのものに触れる。
そんなところで、シン手がぴたりと止まった。
「もう、大丈夫だと思う・・・」
正直なところ、慣らしは足りないと思う。
初めてのシンの指の動きは控えめで、そこはまだきついままだ。
でも、中が。
シンを欲しがって。
疼いて、疼いて、仕方がない。
「早、く・・・・」
欲しくて欲しくて、頭がおかしくなりそうだ。
いや。
たぶんもう、随分おかしくなっている。
だって、シンに嫌われるのが、こんなにこんなに怖いのに。
シンに嫌われるかも知れない、こんなにいやらしいことを口走っているのだから。
「シ、ン」
ささやくようなその声に。
切なげに濡れた緑の瞳に。
逆らうことなど考えもつかず、シンは再び力を持っていたものを、アスランの、一番イヤラシイ場所に押し付けた。
それだけで、そこはシンに吸い付くようにうごめいて。
そのまま、力を入れて押し込めば。
ずるり、と、心地良い抵抗と共に、飲み込まれて。
「っ、は・・・・」
「ん、あ、ああ・・・っ」
我慢が効かなかったのは、アスランの方だった。
ず、ず・・・・と、シンが侵入ってくるのを、体いっぱいに感じる。
久しぶりの襞が悲鳴を上げて、無理やりに押し開かれる、肉の軋みさえ気持ちいい。
シン、が。
俺の中、入って。
そう思っただけで、もう駄目だった。
関を切ったように、前から精が滴り落ちる。
「っ、や、あ・・・・っ」
体のコントロールは、ある程度できているつもりだった。
イきたくても我慢することも、そんなに気持ちよくなくても、なんとかイくことも。
後ろの締め付けを、相手の良いようにすることも。
なのに。
「ア、スランさん、それイ、タ・・・」
「・・・・・っ！」
根元をきつく締め付けられて、痛みを訴える少年の声に、歯を食いしばってそこを緩める。
緩める努力を、する。
でも。
「ご、めん。止まらな・・・・っ、あ、あん！」
アスランの背が、くん、と反った。
シンが、一度抜こうと腰を引いたのだ。
とたん、アスランの中はそれを引き止めるように絡みついた。
入り口が、出て行くことを許さないとばかりに、いっそうきつく、締め付けた。
それに逆らって、動いたりしたものだから。
「わ・・・っ、わ！」
きつききつく、絞られるようなかたちになって、シンはアスランの中に、二度目の精を吐き出してしまっていた。
「っ、は、あ・・・・・」
シンのものが、腰の奥いっぱいに満ちていく。
精を注がれる快感に、頭の中が一瞬真っ白になった。
イったばかりの前が、ぴくんぴくんと震えている。
精を受けた後ろが、びくびくと痙攣してそれを味わった。
気持ちいい。
すごく、すごく気持ちがいい。
「・・・ごめんなさい！」
しかし、慌てたシンの声に、アスランの恍惚は壊されて。
ずる、と、抜けていく感触と、その後の喪失感に、知らず、涙がこぼれた。
「っ、シ、ン・・・？」
もっと、中にいて欲しいのに。
もっと、満たしていて欲しいのに。
どうして？
「わ、わ、中で出しちゃった。えっと、あの。・・・・どうしよう？」
覗き込んできた赤色は、情欲に濡れて。
雄の色気を漂わせているくせに、子犬のようにくりくりとして。
そのアンバランスさが、また、アスランを感じさせた。
「あ・・・ん、いい。後で、かき出せば・・・・」
「え、あ、ホント？」
「ああ」
それよりもアスランは今、もっとシンが欲しかった。
もっともっと、欲しかった。
「痛かったか？」
「ちょっとだけです！すっごい気持ちよかった！！」
ほんとはとっても痛かったけど、そんなのはすぐに忘れてしまった。
忘れてしまうくらい、気持ちよかった。
もっとしたいな。
もっともっと、アスランさんと、セックス、したいな。
「あの！今度は失敗しませから。もう一回いいですか！？」
手を伸ばして触れた腰。
触れた肌は、しっとりとして、シンの指に吸い付いて。
ここを掴み締めながら、味わった中の心地良さを思い出し、シンの喉がごくりと鳴る。
「失敗・・・してないだろう。凄く、気持ちよかったぞ」
しかもそう言ってもらえて、少年の瞳が輝いた。
「え、ほんと？早くなかった俺？」
「ああ、まあ早かったかも知れないが」
即答されて、ちょっとしょげて。
「でも、とっても・・・気持ちよかった」
その言葉と、伸ばされて、頬を撫でてくれた腕に元気付けられて。
「えっと、前から、いい？顔見たい」
その手を引いてお願いすると、アスランは頷いて、シンの手に引かれるままに、体を返して脚の間にシンを迎え入れた。
「ああ。・・・・っ、その、ちょっと」
その脚の、内側をそっと撫でてみると、アスランの声が高く跳ねる
「何？」
気持ちいいそこを遠慮なく愛撫しながら、シンは、アスランの肢体を見下ろした。
「恥ずかしい、な」
・・・・えっと。
シンの前で、脚を開いて。
さっき、シンを呑んでいたところまで、曝して。
そんなアスランの姿は、どうしようもなくイヤらしくて。
あ、あ、しかも、俺が出しちゃったのがちょっと洩れてる。
こぼれてるーー！
それを自覚したのだろう、アスランは頬を染めて、その貌を白い腕で隠してしまった。
でもやっぱり、一番イヤらしいとこは見えてるし！
そう思いながら、シンは、その「一番イヤらしいとこ」をもっと曝すために、しなやかな脚を、掴んで大きく開かせた。
「っ・・・・」
すごく、ヤらしい、格好。
「入れるよ、アスランさん」
「・・・・・ああ」
「ねえ、顔見せて」
「嫌だ」
「そんなこと言わないで、さ」
片手を脚から離して、顔を隠した腕を取る。
両手を使って隠しているから、両方は取れないけれど。
半分見えた、緑の瞳。
それが、熱く潤んでシンを見上げて。
「顔、見せて」
もう一度言うと、捕まえた腕を離しても、アスランはそれを戻さずに、代わりにきゅっとシーツを掴んだ。
その仕草にも煽られながら。
シンは、アスランの腰を抱いて。
「ふっ、あ、あああ・・・・・・・ん！」
ずるずると、一息に奥まで飲み込んだそこは。
さっきよりも、締め付けが柔らかくてぬかるんで。
痛いことなんか、全然なくて。
「はっ、く、ぅン！あ、あ、やンっ！」
高く高く上がる声を、絶えず迸らせる赤い唇と。
シンを見上げて、快楽に潤み、切なげに歪む緑の瞳。
シンに抱かれるアスランは、ただひたすらに、気持ちよくてきもちよくてきもちよくて。
そしてそれは、アスランも、同じで。
「や、あっ、シン、シン！も、だ・・・・あ、ああああああっ！」
初めての快楽に、二人。
溺れて、果てた。