休暇 ２
湯上がりの肌って、どうしてこんなにいい匂いがするんだろう。
玲二の纏った浴衣の裾を、早々に割って滑らかな腿を撫で回し。首筋に鼻先を埋めながら、英治は少し、不思議に思った。
風呂場に置いてあったシャンプーと石鹸は、それはそれでいい匂いだったけど。
これはやっぱり、違うんだよなァ。
ひくり、と震えた喉元に噛みつく。
ねっとりと舌を這わせると、玲二の味が楽しめる。
うん、これこれ。
洗いたての肌は、余計なものを取り払った、全部が全部、玲二の匂いで、玲二の味。
英治の、大好きな。
「ん・・・・っ」
吐息が漏れていく様を、皮膚を通して直に感じる。
英治の前で、玲二は素直だ。
なんだかんだと言いつつも、素直に感じて体を開く。
藍染の浴衣をはだけさせ、現れた胸に唇を落とす。
玲二は胸でも感じるから、赤い頂は特に、丁寧に舐めてやる。
「えい、じ」
そうすれば、黒い瞳がとろりと光って、切なげに英治を見上げてくるから。
気を良くした英治は、腿を弄んでいた手をするりと上げて、脚の間のきわどいところに、核心に触れない程度にゆるゆると触れた。
「ぁ・・・・っ」
玲二がふるふると首を振ると、濡れてウェーブがきつくなった髪が、畳に擦れて綺麗に散った。
「玲二は、さ」
赤く染まり始めた耳朶に、一度、軽く噛みついて。
それから英治はやさしく言った。
「すっごく、イヤラシイ体、してるよね」
「っ！」
ひく、と、玲二の体が反応する。
英治が、いつも彼を受け入れている場所に触れたからだ。
そのまま、硬さを持ち始めた前まで指先を滑らせ、しかし触れてはやらずに、また戻す。
そんなことを繰り返していると、玲二の腰が、目に見えて、揺れてくる。
面白いほど、イヤラシイ仕草だった。
「どうしたのさ」
言った声が、笑っている。
あからさまな嘲笑に、身を震わせた玲二は、それでも従順に口を開いた。
「・・・・英治」
赤く染まった唇を、いやらしいかたちに薄く開いて。
位置のずれた眼鏡の向こう、濡れてとろけた視線を逸らして。
「もう、はやく・・・・」
そう喘ぐと、何かを堪えるように、畳の目に爪を立てて、口をつぐんでしまった。
「早く、なに？」
くすくすと笑いながら聞くと、消え入りそうな声で、答えが返った。
「して、くれ」
「うん。何を？」
すかさず聞く。
答えはない。
その代わり、玲二の踵が畳を滑り、英治の脚にぶつかって、止まった。
「っ・・・・」
「もう、仕方ないなぁ」
くすくすくすと笑いながら、英治は玲二の外れかけた眼鏡を取った。
ちらり、と玲二がこちらに視線を向ける。
「して、あげるよ」
そう言うと、英治はぺろりと指を舐め、そのままそれを、玲二の中へと押し込んだ。
「っ、あ・・・・」
玲二の息が弾む。
ナカが、ねっとりと包み込む。
「えい、じ」
非難するような声。
何だよ、玲二がして、って言うからしてあげたのにさ。
それとも。
「あれ？コッチじゃなかったかな？」
からかうように言うと、玲二の腰が浮いて、卑猥な動きで揺らめいた。
浴衣の合わせがするりと落ちて、かろうじて隠れていた場所が、あらわになる。
玲二のナカに入った指がきゅう、と締め付けられ、吐息と共に、意味のない喘ぎが赤く染まった唇から漏れた。
「ぁ・・・・・・」
「何だ、コッチでいいんじゃないか」
くすくすと笑うと、また、誘うように腰が揺れる。
違う、誘ってるんだね。
とろりと濡れた漆黒の瞳が、英治を映して、切なそうに細められた。
僕のコト、早く欲しくって仕方がないんだ。
そう思うと、楽しくて楽しくて仕方がない。
すり合わせようと寄せられた膝頭を押し広げ、英治は笑いを消さないまま、ずるりと差し込んでいた指を引き抜いて。
「コッチかも、って思ったんだケドさ」
触ってやってもいないのに、すっかり立ち上がっている玲二の前に指を絡めた。
「っ！」
たったそれだけの刺激でイきそうなのか、手のナカのものがびくびくと痙攣するから、英治はすぐにそこから手を離してしまう。
だって、先にイきまくらせて泣かせるのもいいけどさ。
今日はさっさと入りたい。
「玲二はやっぱり、後ろの方が好きだもんね」
そう言うと、膝を大きく割り開き、さっきまで英治の指を飲み込んでいた、イヤラシイ場所に、また、指を押し込んで。
ずるりと引き出し、二本に増やして、また、あたたかな玲二のカラダに差し込んで。
その指を開くようにしながら、ぐるりとナカをかき回した。
「っ、あ！」
上がった声と、浮いた背中。
入り口は、英治の指に沿って開いている。
このくらいなら、もう痛くないかな。
ボクが。
堅いところに無理矢理押し込むと、英治の方が痛い思いをすることになる。
なんだかとっても理不尽だから、そのぶん、玲二を虐めるのは英治の当然の権利なのだ。
二本の指を開いたまま、する、と、指を引き抜いた。
玲二の唇が、また、甘く喘いで。
黒々と濡れた瞳が、英治を見上げて。
それがまた逸らされる前に、英治は、玲二のナカへと侵入っていく。
「え、いじ・・・っ！」
こういう時、名前を呼んでくれるとこが好きだな、と思いながら、まだ少し慣れない場所を、緩く揺すって馴染めと命ずる。
イヤラシイ玲二のナカは、もうそれだけで、ひくひく震えて英治を包んだ。
「あ・・・ぁ・・・・」
大きく胸を喘がせて、たまらなそうに玲二が喘ぐ。
はだけた浴衣の合わせから、赤く勃った胸の赤みがよく見える。
ホント、卑猥なカラダ。
大好き。
「えい、っあ、あ・・・・・・っ」
ぐうっと奥まで侵入り込めば、玲二の声が高くなった。
湯を吸って光る黒髪が、畳を滑って。
ふるりと首が振られると、ぱらりと散って艶やかだった。
そうして赤い唇が。
「え、い・・・・」
英治の名前を呼ぼうとして、途中でくいと噛みしめられ。
空しく畳を掻いていた腕を引き寄せて、浴衣の袖をかふりと噛んだ。
閉じられた目元には、涙。
ナカが、きゅう、とキツくなる。
なんだ、これだけで泣いちゃうほどイイんだ。
可愛いナァ。玲二。
英治はそのままご機嫌に、玲二の体を犯していく。
大きく足を開かせると、緩んだ帯が、耐えきれないようにするりと落ちた。
すっかりはだけた浴衣の上で、恥ずかしい場所をすっかり晒し、玲二の体がびくびくのたうつ。
うーん、和装ってイイな。
今度は、もっとちゃんとしたの着せてヤってみたいなぁ。
そんなコトを思いながら、奥の奥まで差し込んでいた自分を、思い切りよく引き出せば、熱い熱い肉襞が、引き留めるように、絡みつく。
ああ、ホントに。
ホントにホントにキモチイイ。
でも、さ。
「声、聞かせてよ、玲二」
ぐいと強く袖を引けば、犬歯でも引っかかっていたのか、藍色の生地がびいっと裂けた。
裂けた藍の向こうから覗く、濡れた瞳。
噛みしめられたままの赤い唇。
ひくひくと震える白い肌。
そうして、たっぷりと英治を包み込み、いやらしく蠢く熱いナカ。
たまらなかった。
「聞かせてって、言ってるだろ」
顎を掴んで、無理矢理口を開けさせる。
藍色の生地が唾液に濡れて、ぬらぬらと光っているさまさえイヤラシイ。
「っ、あ！っ！」
沸き上がる欲望のままに蹂躙すれば、聞きたかった声は容易に上がり、英治の深い性欲と、支配欲とを満足させた。
痙攣を激しくした玲二の脚が、英治の腰に絡まって。
きゅう、と締め付けてきたそこに、英治は堪えることなく吐き出した。
でも、まだだ。
まだ、足りない。
幸いなことに、時間はまだ、たっぷりある。
たっぷりと、あるのだ。
終