その後。

泰明は、何度も永泉をおとなった。

 

泰明の前で、笑わなくなった永泉。

いつの時も、他の男の気配のある永泉。

 

永泉を抱くときの幸福。

永泉を抱くときの痛み。

 

永泉に、会いたいと思う。

永泉に、会いたくないと思う。

 

・・・会いたくないと、思う。

 

 

 

「やすあきどの・・・・」

泰明のものにしゃぶりつく永泉の髪を、柔らかくかき上げる。

そこに見つけた赤い跡に、屈みこんできつく歯を立てる。

「ん・・・っ」

それでも、泰明のものには歯を立てない。

上手に、上手に男を喜ばせる。

「ん・・・んんっ・・・・！」

喉の奥に注ぎ込まれるなど、苦しくて仕方がないだろうに、一滴もこぼさずに飲み込んで、わずかに白濁のついたものの後始末さえしてみせる。

「泰明殿・・・もっと、口でいたしましょうか？それとも・・・あの、頂いても、かまいませんか？」

もぞもぞと下肢を揺らめかす仕草は、誘っているというよりも本当に物欲しげで、哀れでさえあった。

「ああ。かまわん」

答えるなり、必死の面持ちで泰明の下肢に再び飛びつく永泉に、泰明は悲しくなる。

 

あれ以来。

永泉の笑顔を見ていない。

花咲くような笑顔。

あれが、とても好きだったのだと、失ってはじめて気づく。

 

泰明のものを自分にあてがい、準備さえせずに腰を沈める。

しかしそこは、信じられないことに既に潤い、きついながらも従順に泰明を受け入れた。

「あ・・・っ、くぅ・・・ん」

泰明の上体にしがみつき、あられもない声を上げて腰を振る。

その体を、泰明は馬鹿の一つ覚えで抱きしめる。

「あんっ・・・や、すあきどの・・・動けな・・・あんんんっ・・・！」

きつく縛める動きで、永泉の深みを抉る。

ぬちぬちと、柔らかくて温かいその場所を責め、細い体が淫らに乱れるのを楽しむ。

しかしその快楽は、どこか遠くて。

何よりも愛する、永泉の柔らかい体なのに。

「あ・・・あはんっ・・・・やすあきどの・・・っ」

びくんびくんと体を震わせる永泉のそこに注ぎ込むものは、それでも熱くて。

「えいせん・・・・」

抱きしめたその身は、甘い、毒の味。

 

 

 

「泰明殿・・・もう一度・・・・？」

もう、何度も泰明の精を吸ったそこは、痛ましいほど赤く腫れていた。

それでも、その身を放しがたく思うのは、これが最後と決めたから。

それを知らない永泉も、何も言わずに泰明に従う。

きっと。

誰にでも従うのだろう。

 

愚かなことだけれど。

それでも、自分が側にいなければ、永泉は笑うこともあるだろう。

そして泰明は痛くなくて済む。

 

 

「いや、いい」

「はい・・・」

永泉の白い手が、泰明の衣を取って、今の今まで自分を苛んでいた男に掛けようとする。

それを取り上げ、すばやく着込んで、永泉には彼の衣を掛けてやった。

「もう、来ない」

「え・・・あの・・・」

見上げる瞳に、夜が映って美しかった。

永泉は、こんなに美しいのだと、改めて知らしめられた。

「帰る」

「あの・・・ま、待ってください。私、何か粗相をいたしましたか？その、お気に召さなかったのなら・・・」

「お前が悪いのではない。ただ、もう会いたくないだけだ」

言い置いて、簀子から飛び降りる。

 

振り向くことはできなかった。