「おまえが何が言いたいのか、わからぬな」

「・・・・そうですか」

永泉は、小袖に包まれただけの体をきゅうっと縮めた。

きっと、呆れられてしまったに違いない。こんなことを話してしまうなんて、なんて、愚かな・・・・

泰明は、ふるふると震える背中を腕の中に感じた。何故だか、胸が痛い。

「私は、晴明様に造られた偽りの生命体だ。この形を持って、二年になる。私は、二年前に造られたのだ。親はいない。だから、わからない。」

少し下を向く泰明の瞳。綺麗なきれいな金と緑。

ああ、だから彼はこんなに綺麗なのか。

永泉はその瞳に手を伸ばした。目尻から頬へ指を滑らせると、少し冷たい肌はさらさらとして気持ちが良かった。

「あなたが、羨ましいです。泰明殿」

「私が？」

自分の考えが及ばない、というよりもどう考えてよいのかさえわからない事柄に泰明が混乱しているのをよそに、永泉は続けた。

「望まれて、つくられて。望まれて、存在する。私は、あなたが羨ましい・・・」

永泉の白い腕が、闇にくるりと舞った。あぐらをかいた泰明の腿に、ぐ、と体重が乗って、起き上がった永泉は、泰明に抱かれながら、泰明を抱きしめる。

「気持ち悪くは、ないのか？」

何から出でたかも知れぬものに、このように触れられて・・・・

「とても、気持ちが良いです」

変わらぬ言葉が胸を打つ。見上げると、優しい唇が降りてきた。

「泰明殿は、私の憧れでした。泰明殿は、私を救って下さいました。そのような方に触れられて、気持ち悪いなどと・・・・思うはずが、ありません」

「そうか」

よかった。

細い腰に腕をまわし、気持ちよくて仕方のない体に口付ける。何度も、何度も。

男を知る体は、口付けだけでは少し切ないのだけれど、知識も欲望も未熟な、幼子のような相手にそこまで望むつもりはない。この、優しい口付けだけで、もう・・・・

「泰明殿・・・・」

空気が、声が、唇が・・・甘い。

初めて感じる甘さの名に、２人が気付くのはもっと後のこと。

その名は、きっと、「幸せ」