恋をする、という気持ちについて、花月は考える。

ただ、必要があるわけでもないのに、この人の側にいたいと思う。

自分に何の利があるわけでもないのに、この人のために何かをしたいと思う。

「雷帝」天野銀次。

この人の。

この人のために。

十兵衛、君はずっと、こんな思いを抱えていたのかい？

どこまでも冷えた銀次の心を、少しでも暖めたくて、抱きしめた。

ぬくもりを求められるまま、身を任せた。

十兵衛を、二重に裏切ってしまうことも承知の上で。

「は・・・ぁ・・・・ぎんじ、さ・・・っあ」

ひとつかふたつ年下の少年に、強い力で押さえつけられ、はしたなく開かれた脚の間を、何度も何度も抉りたてられ。

それでも花月は、背中に回した腕を緩めようとはせず、いっそうきつく爪を立てながら、銀次の動きにあわせて細い腰をうねらせる。

「カヅっちゃん・・・ここ、キスマーク」

不意に腰の動きを止めた銀次が、キスを繰り返していた二の腕の内側を舐めながら言った。

そこは花月の悦いところのひとつで、濡れた舌の這う感触に、ぴくぴくと体を震わせていた花月は、次の銀次の言葉に、たちまちのうちにその身を朱に染めた。

「十兵衛？」

「・・・・っ！」

最近、襟ぐりの緩い服を好むようになった花月のために、十兵衛は首周りには跡を残さない。

代わりに、近頃よくそこに吸い付いている・・・・と、思う。

「十兵衛の付けた跡のとおりに触るとさ、カヅっちゃん、すごくいい反応するよね」

「ん・・・ぁ、ぎんじさ・・・やぁ・・・」

言葉のとおり、十兵衛の跡をたどりながら、再び自分の中で動き出した銀次に、花月はきつくしがみつく。

同じ場所に触れられても、銀次と十兵衛では、何故こんなにも違うのだろうと、ふと思ったけれども、すぐにそんな思考は快楽の向こうに消えてしまった。

「オレたちがこうしてるの、十兵衛は知ってるの？」

情事の後の穏やかな時間。

銀次の腕の中でとろとろとまどろんでいた花月は、その言葉に目を覚ました。

「ええ・・・」

絃の花月が雷帝の情人だということは、VOLTS幹部の間では周知の事実だ。

「カヅっちゃん、オレ、思うんだけどさ、十兵衛といたほうが、カヅっちゃん絶対シアワセになれるよ？」

そう言う銀次の声には屈託がない。

銀次の心に、自分はいない。

「銀次さんも、そう思いますか？」

「うん」

でも僕は、あなたが好きなんですよ。

その言葉を封じるために、花月は自ら雷帝の肩先に口づけた。

そんなことを言って、銀次を困らせるのは本意ではないから。

「そうですね・・・」

そうなのだろう。

今、自分は恋する相手に抱かれているのに、全然幸せじゃないのだから。

「でも、銀次さん。僕たちはいつでも、あなたと一緒ですよ」

いつもの花月の言葉に、銀次は少し、笑った。

十兵衛、君はずっと、こんな思いを抱えていたのかい？

だったら。

君の幸せは、一体どこにあるんだろうね・・・

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