初めて体を重ねたのが何時だったのか、花月はまったく憶えていない。

あれからすぐだったのか、それとも随分経っていたのか。

おそらく、そんなに重要なことでもないからだろう。

幼い頃よりも、ずっと逞しくなった十兵衛の体。

それでも、その腕は変わらず日溜りの匂いがする。

その腕の中で。

彼に溺れる。

「ん・・・あ、あんっ・・・じゅ、う、べ・・・・」

十兵衛の上に跨って、がくがくと震える膝を精一杯に使って腰を振る。

「かづき・・・」

快楽にかすれる、十兵衛の声が腰を砕けさせようとするのだけれど、その首にしがみつき、唇で声を塞いで我慢する。

触れるだけのキスよりも、舌を欲しがり合うようなキスのほうが。

キスなんかよりも、抱かれてしまったほうが。

ただ、抱かれるよりも、もっとたくさん気持ちよくしてあげられたら。

きっと、十兵衛繋ぎ止める、より強い鎖となる。

もはや、花月は十兵衛が側にいないことなど、考えられなくなっていた。

彼の気持ちを踏み躙っている辛さも、それを知られたとき、彼が離れていくという恐怖も、変わらず花月を苛むけれど。

変わらない十兵衛を、変わってしまった花月が繋ぎ止める方法を、もう、他には見出せなくなっていた。

「・・・・ぁ」

目が覚めたとき、離さないようにしがみついていたはずの温もりが側になくて、花月はうろたえた。

慌てて起き上がると、腰から背中にかけてがずきりと痛む。

下肢のだるさと併せて、もう慣れた痛みだ。

「寝ていろ、花月」

死角から、耳に心地よい声をかけられて振り返る。

そこに「親友」の姿を見つけ、花月はやっと息をついた。

「なんだ、いなくなっちゃったのかと思った」

「どこにいなくなるというんだ」

不思議と呆れを含まない声音で言った十兵衛の手に、ぐいと体を押されて、花月は再びベッドに転がった。

「うん、そうだね」

ここからいなくなって。そうして行ける場所なんて、たくさんあるだろうに。

そう思いながら、無骨に見えて器用に動く手にじゃれかかる。

「寝ていろと言っているだろう。お前は無茶をしすぎだ」

「そう？気持ちよくなかった？」

僕はすごくよかったけど、と言いながら、花月は絡めたままの指で、十兵衛の腕を引く。

望みどおりのキスをもらい、花月は嬉しそうに笑った。

傍目には、自分たちは仲の良い恋人同士に見えるらしい。

「上手なやり方」を教えてもらった、いくつか年上のチームのひとりなど、「花月さんにこんなに想われてるなんて、十兵衛のやつが羨ましいですよ」などと言っていた。

そう見えるなら、それがいいと思う。

僕は、キミに恋なんかしていないけれど。

花月はただ、十兵衛が側にいて、抱きしめてくれさえすれば幸福なのだから。