ハニートラップ？？ ２
「へぁっ！？」
手ぇあったかい。
指の腹やらかい。
力加減が絶妙で。
「意味わからんわ！」
「ああもううるさい」
「むぐ・・・っ」
初めて他人にそういった意図で触れられた少年は、外野が黙らされて静かになったせいで、うっかりそっちに集中してしまう。
「ふぅ・・・っ」
「やっぱ若いと反応いいなぁ」
楽しそうな兵部の声が、近い。
思わず閉じてしまった目が開けられない。
だってこれ、開けたら。
「警戒しなくったって、シてる途中にヒュプノはかけないぜ？」
そうじゃなくって。
「ああ」
ふ、と、間近で笑う気配がして。
するり、と、喉から頬までを撫で上げられた。
耳元を、産毛を撫でるような声がかすめる。
「僕のカラダ見たら、完勃ちしちゃいそうなんだろ？」
「・・・・っ」
あー、あぅ。
見なくっても、勃ってるぅぅ・・・
男に触られて勃起している現実に涙している健全な青少年のソレを、兵部は相変わらず絶妙に気持ちいい力加減で触れながら言った。
「君さあ、同年代の男のカラダがイイって、ちょっとヤバくねえ？」
「だ、れの・・・」
誰のせいだー！
「フフン」
あ、やばい。
また声が近い。
「僕のせい、か？」
危険を察して思わず開けた目の先には、思った通りの兵部のキレイな顔があった。
そうして、薄紅い唇が、なんだか見とれるような動きでふうわりと開いて。
わざとらしいとわかってはいても、目を惹く瞳が上目遣いになって。
うわ。わ、わわっ！
ねとり、と、自分の先端に絡んだのは、どう見ても兵部の赤い舌だった。
ぞくん、と、感じたことのない快楽が、その先から一気に背筋を駆け上がる。
そうして。
開かれた唇に、自分のものが半分ほど飲み込まれて。
初めて感じる他人の粘膜の気持ちよさに、少年はなんだかもうびっくりしてしまい。
「・・・・っっ！」
出してしまったものは、たっぷりと、彼の唇を汚してしまっていた。
「うわぁあああ！すいません！！」
「っ、ん。そこで謝るか」
ぺろ、と口に付いたそれを舐め取る仕草も凄くやばい。
ていうか、えと。
出したもん、どうした・・・？
その思考を読んだのだろう、まだ白いものの付いている唇が、ニイ、と笑ってあっさりと言った。
「ごちそうさま」
うわぁ。
飲んだ？飲んだのかー！？
じったじたする少年の、顔ではなくまだしっかりと主張しているものを見下ろしてから、兵部はふい、と顔を上げた。
「あー、若いってイイなー、なー、皆本」
「〜〜〜〜！」
「〜〜〜〜！うわぁ・・・」
忘れてた。
すっかり忘れてたよ皆本さん！
壁に埋まった皆本は、真っ赤な顔をして手足をばたつかせていた。
おそらく兵部の能力だろう。声は全く聞こえないが、言いたいことは松風にもわかる。
『子供になんてことしやがる』だ。
でも、皆本さん。
それより、見ないでおいて欲しいです・・・
「フフン」
そんな二人を見比べて、兵部は非常に上機嫌だった。
ノーマル二人を見下して、自分一人が愉しんでいるこの状況は、彼にとってとても愉快なものなのだろう。
「さて、と」
兵部が、まだしっかりと勃起している松風のものに指を添える。
またあれが来るのかと、期待半分に身構えた松風を、とても楽しそうに見下ろして。
兵部は、膝を付いて腰を上げた。
見上げた体は白くて、男の目から見てもキレイで。
その分、胸に残った傷跡が目立って見えた。
しかしそれは、記憶した悲しい物語を思い起こさせるよりも、少年の目には、ただただ艶めかしくしか見えなくて。
濡れた先端に、肌の感触があった。
うわやばいと思った瞬間に先端が滑り、ぬとりと濡れた、粘膜の感触に行き当たる。
これはアレだ。
アレって、アレだ。
「あ、あのぉっ」
なんとか絞り出した声は、なんだかもうひっくり返っていた。
「ほんとに、するんですか・・・？」
「んー、大丈夫大丈夫準備して来たから」
何が大丈夫なのかは知らないが、彼は軽く請け負って。
「僕のカラダは、キモチイイぜ？」
そう笑うと、彼はそのまま、そこでゆっくりと腰を落としてしまう。
「はぅ・・・」
「ん・・・・っ」
さっきの口の中よりも、もっと熱くてきつい粘膜に、体の中で一番敏感な場所を飲み込まれて。
思わず声を上げた少年が、イってしまわず済んだのは、ただ単に、さっき一回イっているからだ。
柔らかな襞が、ぴったりとソレに吸い付いて。
まるで絞り上げるようにうねっていく。
うわ、うわ、やばい。
すっげ、キモチイ・・・っ
「フ・・・・」
腹の上で、兵部が笑う。
そうすれば、彼のナカがきゅうと締まって松風のものに絡みつき。
さっきより、もっと、キモチイイ。
「キモチイイ、だろ？」
「うぁ・・・っ」
そうして腰を揺すられて、少年はただただ喘ぐしかなくなった。
こんな、キモチイイの、知らない。
見上げれば、兵部も気持ちよさそうに目を細め、皮肉のない笑みを、紅みの増した唇に浮かべている。
揺れる体も、白から柔らかな薄桃色に染まって。
思わずその腰に手を伸ばせば、しっとりとした肌が指に吸い付いてきた。
この体の中に、今。
俺の、入ってる・・・
とたん、ぐうっとせり上がって来たのは、さっきから、凄くガマンしていた何か。
いつの間にか、体は自由に動くようになっていた。
それを自覚するよりも早く、衝動に任せて。松風はその気持ちのいい体を、ひっくり返すようにして敷き込んでしまう。
見下ろした肢体は、見上げるよりも、いっそう少年の興奮を煽るものだった。
握り込んだ手首は細く、肌は発情の色を濃くして甘く香り。
必死に理性で押さえ込んでいた、少年の欲望を解き放つ。
「あ・・・ん、そうだ」
笑った紅い唇に、自分のそれを押しつけると、誘うように開かれた口腔が、今、彼を食んでいるナカのようにしっとりと舌に絡みついた。
「腰、振って、そう。あ、」
気持ちいいキスが解けたとたんの要求は、もちろん少年の望むところ。
深くすればいっぱいに迎え入れ、引いていけばたっぷりと絡みつく体は、気持ちよすぎてどうにかなってしまいそうだった。
「イイ・・・っ」
高く上がった甘い声に、もしかして兵部も同じなんだろうか、と思ったそのとたん。
きゅう、と強く引き絞られ、ちょうど腰を引こうとしていた少年は、まさにその場で【搾り取られて】しまい。
「・・・・・っ」
「・・・・・・ふぅっ」
あんまりの気持ちよさに、ぽうっとしてしまった松風は、そのとき耳に入った地を這うような声が何なのか、とっさにはわからなかった。
「で。・・・・・どうだったんだよ、兵部」
え、あれ？
「・・・やっべー」
松風の下で、やはり、満足げにくったりとしていた兵部が、茫洋とした瞳に理性を戻して明後日の方へ向けた。
「気持ちよくって、透視んの忘れてた」
その見た方向は、本当にあさってで。
たぶん、ずっと見ていたのだろう皆本の方でもなくて。
って、あああああああああああ！！
生まれて初めてのセックスを、他人（ていうか上司だよ！初恋の人の保護者っぽい人だよ！！）に見られ、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうな少年の下で、兵部は、あーあ、やっちゃった、みたいな顔をしていた。
なんか、ジュースこぼしたとか、そんな感じの。
ええっと。
ええっと・・・
混乱を極める少年に、彼はバツが悪そうにへらりと笑うと。
「撤収！」
そんな声と共に、松風の下にあった気持ちのいい体は、一瞬にして消え失せて。
そうして、残されたのは。
「あー、ええっと」
なんだか、もの凄く申し訳なさそうな皆本が、壁に埋まったまま。
「なんていうか、ごめん・・・」
ボーゼンとした少年に、意味不明に謝っていたのだった。