泰明は、しばしば、御室寺にやってくる。

永泉は、たびたび、安倍の屋敷や陰陽寮に招かれる。

 

ちょっと、釈然としないのだけれど、すごく、幸せだから、永泉は大人しく押しかけられたり引っ張りこまれたりしている。

 

 

今日も、今日とて。

 

 

「あ・・・はん・・・」

ぺちゃぺちゃと、割られた裾の間を舐められて、砕けてしまった腰がふるふると震える。

小袖を纏ったままの腰をきつく抱き寄せられ、最後にちゅっ、と先端を吸い上げられて、一声高く鳴かされてから、永泉のそこはやっと開放された。

泰明の頭が離れると、ひやりと冷える感触が恥ずかしい。

慌てて乱れた（どころではない）裾を正そうとすると、泰明の手が伸びてきてそれを止めた。

「まだだ」

「え・・・でも・・・」

もう、三回もいってしまったのに。

「まだだ！」

「でも・・・きゃ・・・・・・っ！あ・・・・」

乱暴に、定位置の膝の上に抱き上げられ、小さく悲鳴をあげた永泉は、腿に当たったものを感じて、更に声をあげた。

「や・・・やすあきどの・・・・」

泰明も、既に袴も狩衣も脱ぎ捨ててくつろいだ姿だったから、薄い布越しのそれは、質感どころか熱までも伝わって、永泉をどきどきさせた。

「いくら飲んでも、足りぬ。私は、壊れてしまったのやも知れぬ」

泰明が、はじめに気に入った永泉の腕が、ぎゅっ、と握られる。

耳元にかかる息が、熱い。

背中にぴったりと添った胸も熱くて、鼓動が左の肩に響く。

もう一度、切ないほどに熱い息が吐き出されると、腿に当たったものが、更に熱く、硬くなったような気がした。

「・・・いえ、おそらく、それは、あの・・・違うと、思うのですが・・・」

おんなじ男として、それはすごく良くわかるからだの反応。

「何が違う」

凄みさえある声は、いつもならばすくみ上がってしまうものなのに、何故か永泉は頬を赤らめて、うずうずする口許を精一杯なだめていた。

ああ、泰明殿は、生まれてまだ二年なのでしたね・・・・

恥ずかしいのだけれど、なんだかすごく。

口がうずうず。

「何が違う」

答えない永泉に、更に凄みの増した声で泰明が問う。

「いえ・・・あの・・・。泰明殿も、私と、同じで・・・」

言葉にすることは、すごく恥ずかしいから、泰明の耳元まで伸び上がって、小さな声で。

『出してしまえば、良いと思うのですが』

「・・・・・」

 

暫しの、沈黙。

 

ええと、言い方がいけなかったのでしょうか・・・

永泉が、不安になった頃。

「どうすれば、良いのだ？」

色違いの瞳でしっかりと見つめられ、永泉は言葉に詰まった。

「え、ええええええええと・・・・」

思わず身じろいで視線をそらすと、はずみで布越しの熱いものに、更に腿を擦り付けることになってしまった。

「あ・・・・」

更に、頬を赤くした永泉の様子を覗き込みながら、泰明は力強く頷いた。

「なるほど」

泰明は、ちょい、と自分の小袖の裾を引く。今まで永泉の脚に押し付けられていた物が露わになり、内腿の柔らかいところに直接触れた。

「え・・・・？、あ・・・あんっ・・・く」

敏感な肌に熱いものがすり寄せられ、思わず口をついてしまった喘ぎを、永泉は慌ててかみ殺した。

しかし、泰明はその姿勢で永泉をぎゅうっと抱きしめ、脇腹やら、背中やらを撫でまわす。

そして。

感じやすい場所に、熱くて硬いものが、すりすりと。

「ん、ん・・・っ！」

「永泉・・・」

かすれた声でささやかれ、優しい戒めの中で、びくんと体が跳ねたとき、永泉は熱くてとろりとしたもので脚が濡れるのを感じた。

 

 

ほう・・・っ、と大きな息がからだ全部に響いて、単を纏った、細いのにやたらと強い腕が緩む。

ちょっと信じられない思いで目を下に向けると、泰明の腕の向こうに白いものに濡れた自分の膝が目に入った。

なんだか、ただただびっくりしていると、視界の半分を占めていた腕がすうっと引いて、白いものを、すくいあげ。

ちゅく。

「不味い」

「あ・・・っ、当たり前です！」

「そうだな。私のが美味いわけがない」

「そういう意味ではないのです・・・」

ぐったりと、力が抜けて、うっかりと、泰明のからだに寄りかかってしまった。

自分とは違う、しっかりとした、からだ。

それを感じて、また、ぴくんとからだが反応してしまう。

「あ・・・・は・・・」

そのからだを、また、強く抱きしめられ、喘いだ唇を舐められた。

それから、熱い息が耳元にかかって。

「おまえは、素晴らしいな・・・・」

ため息のような言葉を流し込まれ、永泉はふるふると震えるからだを止められない。

「や・・・やすあきどの・・・・」

「私が触れても嫌がらないし、私の知らないことを知っている。美味くて、柔らかくて、気持ち良い。・・・良い匂いも、する・・・」

抱きしめる力が強くなって、声が首の後ろに回り、髪の間にくぐもった。

「あの・・・でも・・・じ、女性の方などはもっと柔らかいと思いますし・・・・」

「私は、おまえの話をしているのだ」

「え、と、その・・・」

泰明に褒められると、胸が、きゅうっと痛くなる。とってもとっても嬉しくて、嬉しすぎて。胸が、きゅうきゅうと甘い痛みでいっぱいになる。

「あ・・・ありがとう、ございます・・・・」

やっと、それだけを言うと、ぐい、と顔を上げさせられた。そうして、頬や瞼に、あたたかく濡れたものがひたひたと触れる。

「これも、美味いな」

知らず、こぼれていた涙を舐めとられ、自分が泣いていることを自覚したとたん、それはいっそう激しく流れ出す。

しかし、それも全部泰明の唇に受け止められて。

永泉はたまらなくなって、自分を包み込むからだに、ぎゅうっとしがみついた。

返る、確かな手応えが、奇妙な安心感と甘い疼きを呼ぶ。

それにひたひたと浸る心地良さに、永泉はぼうっとなってしまった。

しかし

「ん・・・・あ、泰明殿・・・っ！」

いつのまにかまた反応してしまったそこを、泰明に指の腹でつつかれて、永泉は思わずからだを離してしまった。

「出してしまえば、良いのだろう？」

腹のあたりから、なんだか嬉しそうな声が聞こえて。

なんにもいえない永泉は、今度は違う涙を流しながら、それまで全部。

泰明に。

 

 

 

 

 

「美味かった」

「そうですか・・・・」

 

やっぱりちょっと、釈然としないのだけれど、でも、すごくすごく。

 

幸せな、夜でした。

 

 

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