Display １
部屋の隅に置かれていた８０インチのテレビを、ずるずると移動して来る裸の背中を睨みながら、兵部は忌々しげに低く唸った。
「これだから、合衆国産の考えることは・・・・っ」
「あー、ハイハイ」
おざなり過ぎる返事をしながら、ヒノミヤはテレビをベッドの側にぴたりと寄せ、そこに置いておいたハンディカムを持ち上げて弄りだした。
「あー、やっぱこれ有線じゃなくちゃダメか」
「コメリカのものとは、規格が違うんじゃないのか？」
そのベッドの上で、兵部を後ろから抱き抱えてい真木がのんびりと言う。
「でも、ジャックは合うんすよ。・・・同じ日本製だから平気だと思ったんだけどな」
しょうがねえか、と家電同士をケーブルで繋ぎ出したヒノミヤの頭を念動力で軽く（兵部基準で軽く）小突き、テレビ台に顔面を突っ込ませてから、兵部は自分を抱き抱える男を睨み上げた。
「真木、お前も止めろよ」
「今度は何か趣向を変えろとか言ったのはアンタでしょう」
真木の方も容赦はない。
言いながら兵部のシャツのボタンを外し、ズボンを抜き取り裸にしてしまう。
「だいたい、本当に嫌だったら、アンタこれ壊して暴れてるでしょうが」
「だからって・・・」
まだぶつぶつと文句を言っている兵部の前で、ヒノミヤはカメラのRECボタンを押した。
「三人でヤんの気に入ったとか言うお前には言われたくねえ」
真木に両足を抱えられ、秘所をヒノミヤとカメラの前に晒して。
「何だよ、嫌なら帰れ」
それでも偉そうな兵部に、ヒノミヤは口先だけでなく謝った。
「嫌じゃないス、すいません」
そうでないと、本気で放り出されかねない。
ここまでこぎ着けて、それは嫌だ。
「フン」
不思議なもので、そうすれば兵部は、偉そうに鼻を鳴らしてヒノミヤを許した。
真木の膝の上で、脚を開いたまま、だ。
このドＭ女王様め、と心中毒づくと、とたんにぶつけたばかりの顔面を蹴られた。たぶん、思考を読まれたのではなくて、兵部曰く、『だだ漏れ』だからだろう。
「つかさ、お前今、すんげえエロい格好してんのわかってっか？」
くい、と線で繋いだテレビ画面を指させば、そこにはまるで幼い女児にトイレをさせるような格好の兵部が映っていた。
「うるさい」
唸った兵部の頬と耳が赤い。
色が白いってこういう時分かりやすくっていいなー、と思いながら、ヒノミヤはカメラのレンズを、開かれた脚の間に持っていった。
「ほんと、エッロ」
「ーーーーっ！」
色の薄い性器から、やはり薄い陰毛。それから。白い脚の間の奥まった場所がズームアップされ、そこがひくりとひくつく様子が、大画面いっぱいに映し出されて。
兵部は、羞恥に身を震わせた。
もともと、自分で見られる場所ではない。
他人に晒す場所でも、ない。
「俺、弄っていいすか？」
「ああ」
本人とは関係ないところで勝手に合意が形成され、体の上でローションが受け渡される。
「ひゃ・・・」
粘液を纏った指がゆっくりとそこをなぞると、まるで咥え込もうとでもするかのように、そこが震える。
その様子から目を逸らすと、耳元で、「ダメですよ」と深い声が囁いた。
「・・・っ」
耳朶をしゃぶられ、顎を取られ。
閉じていた目を恐る恐る開けると。
「ぁ・・・・・」
下肢に、慣れた感触。
体の中に触れられる、嫌悪すれすれの快感。
そうして。
淫猥に濡れたその場所が、節の立った男の指を、ぬぅっと飲み込んでいく様が、まざまざと映し出されていて。
「一本くらいなら、あっさり入るぜ」
その様子を揶揄する言葉と共に、そのまま根本まで押し込まれ、引き抜きながら、中をくりくりと弄られる。
何を探しているのかははっきりしていて、それから逃れようと腰をよじったのに、それが仇となって。
「ひゃぅ！」
「よし、ココだ」
にいっと笑う男の顔が気に食わない。
蹴ろうとして脚をばたつかせても、それは真木にしっかりと捕まれていてままならない。
しかも。
「ヒノミヤ、音が入っていない」
真木のそのセリフに、兵部もヒノミヤも一瞬、ぽかんとした。
「お？そっか」
先に反応したのはヒノミヤだ。
片手を兵部の中に突っ込んだまま、手にしたハンディカムをしげしげと眺め、それからテレビを振り返って、でっかく映し出されたもののいやらしさに、思わず釘付けになる。
「リモコンを寄越せ」
呆れたような真木の声に、ヒノミヤは手元のカメラと兵部のそこを見比べて。
それから、カメラを置くと、その手でやたらとたくさんスイッチの付いたリモコンを拾って、真木へ渡した。
「これスか？」
「ああ」
兵部の部屋のことは、部屋の主よりも真木の方が知っている。
一時兵部の脚を手放した大きな手が、たくさんあるボタンのうち一つを何度か押すと、くち、という音がスピーカーから漏れた。
それが何かを了承し、ヒノミヤがローションを足してそこを弄る。
ぐちゅ、ちゅ、と濡れた音が、スピーカーから繰り返し響いて、ただ指を感じているよりも、激しく兵部の官能を煽った。
「お前もノリノリだな、真木・・・」
兵部の声が、演技ではなく呆れている。
コイツを呆れさせるとか、なかなかできないよなー、と思いながら、ほぼ元凶のヒノミヤは、ぐちぐちと兵部のそこをかき混ぜることに専念した。
「俺も男ですからね」
そう言った真木の声がことのほか優しくて、兵部はひくん、と背筋を震わせた。
その様子の親密さに、なんだか妬いてしまったヒノミヤは、ふと思いついて声を上げ、二人の空気をあえて壊した。
「そういやこれ、マイク外れんだよな」
「マイク？」
好奇心の強い兵部は、結果自分が泣くことになるとわかっているのか（たぶんない）、新しい提案にすぐに興味を示す。
ヒノミヤは、テープテープ、と呟いて、常備してある救急箱から、医療用のテープをひっぱり出した。
主にヒノミヤのための救急箱だから、その中身はよく知っている。
そうして見つけたテープでもって、外されたマイクを、太股の内側の、際どいところへ張り付けてしまう。
これで、そこから漏れる音は、ほぼ完璧に拾えるという案配だ。
「マイクはひとつか？」
何をされているのかやっとわかり、じたじた暴れようとしている体を押さえ込みながら、真木が聞いた。
「オプションで別口があったはずですけど」
「なら、一つは口元だな」
「真木さんナイス」
確かに、兵部のイイ声を拾わないという、もったいないことはできない。
口にはさすがに貼れないので、鎖骨のあたりに貼り付ければ、ばかだの死ねだの兵部にしてはひねりのない罵倒が、耳に心地よい喘ぎと混じってスピーカーからも流れてきた。
「声でっかすぎてコッチの音入んないっすね」
「カメラで調整できないか？」
「やってみます。じゃ、コッチお願いしてイイすか」
「ああ」
言葉と共に、ずる、とヒノミヤの指が抜き出された。
「あ・・・・あっ！」
そうしてすかさず、真木の指が侵入ってきて。
ヒノミヤのものよりも節の強いそれに、兵部は甘く声を上げた。
「ええっと」
脚の間で、ヒノミヤががさごそやっている。
スピーカーから漏れる音が、大きくなったり小さくなったりして、その間も、兵部の中は真木のものによってかき混ぜられている。
「ひんっ、ぅふ・・・ぁ・・・・・」
慣れた男の慣れた指だ。どこをどう弄ればこの口が緩むのか、どうすれば感じるのか、よくわかっている。
しかも。
「ひょーぶー、画面見ろよ」
言われて顔を背けるも、顎を取られて固定され。
ぐちゅ、くちゅっ。
濡れた音が大きく響き、思わず目を開けてしまって。
「・・・・っ！」
赤く染まったその場所が、たっぷりと与えられたローションに濡れて。
男の指をくわえ込み、淫らに蠢くさまを、まじまじと見てしまい。
「ふ、ぇ・・・・・」
思わず腰を揺らめかせれば、当然、画面の中のそこも揺れて。
その弾みで、じゅる、といやらしい音を立てて、半分ほど侵入っていた指が、根本まで埋まってしまった。
「ーーーーーっ！」
とたん、びくりとひきつった脚に蹴られそうになり、ヒノミヤは慌てて半身を引いた。
そこを映したカメラはそのままで、だ。
「おいおい、指だけでイく気かよ」
「イってますね。中だけで」
「マジか？」
その会話の間にも、兵部の中は弄られ続けて。
ぐちぐちと、いやらしい音はこぼれ続けて。
もちろん、大きな画面には、恥ずかしい場所が大写しになっていて。
「ばっ・・・か、やろ・・・っ」
とうとう、ほろほろと涙をこぼし始めた兵部に、二人は慌てて謝った。
「すみません、焦らし過ぎましたね」
「悪ぃな、兵部」
しかし、するコトといったらコトなのだ。
「先でいいな？」
「うぃす」
脚の間でヒノミヤが、しっかりとカメラを構え直す。
蹴ってやろうと上げられた脚は、しかし後ろの男に掴み直されて。
「あ・・・・」
「ちゃんと見とけよ」
兵部の視線は、画面に釘付けになっている。
そこには、真木の大きなものが、兵部の小さな口に押し当てられている様子がまざまざと映し出されていて。
「入りますよ」
そう、囁かれたとたん、ぐうっと、慣れた感覚があった。