ぜんぶ
でかくて堅くて胸もなくて、突っ込むところは濡れなくて。
それでも、この体に執着し、欲情する自分を、桐山英治ははじめ、不思議に思っていた。
「っ、あ・・・・っ」
潤滑剤を使って無理矢理濡らしたそこに、無理矢理に押し入る。
痛覚のない玲二も、内蔵を押し開かれるのはさすがに苦しいのか、声を上げて身もだえた。
「コレで、僕だけ痛いって不公平だよねぇ」
堅く食い締められる痛みに眉をひそめ、それでも英治はぐいぐいと奥まで自分を押し込んだ。
「もうちょっと緩めてよ、玲二」
「な、ら、最初に・・・」
「しょうがないだろ、早く入れたかったんだからサ」
自分勝手な理屈を何のてらいもなく言い捨てて、英治は玲二の腰を掴んで、もっと深くと引き寄せる。
突っ込んだそこはまだ少し痛くて、手のひらに当たる、堅い腰骨の感触の方が気持ちいいくらいだった。
「ふ・・・っ」
玲二が喘ぐと、中が動く。
「少し待つからさぁ」
早く、馴染めよ、と。
それを、玲二がどうこうできないとわかった上で、そう囁く。
「ふ・・・・っ」
それでも、努めて力を抜こうとする玲二の様子と、結構かんたんに努力が実り、急速に馴染んでいくナカを愉しむ。
「痛覚ないって、こういう時、本当にイイよねぇ」
無理矢理に突っ込んだせいで、裂けて出血さえしているそこは、普通の体ならば、痛みで強張りを解くことさえできないだろう。
それが。
「んっ・・・・ぁ」
玲二がかみ殺したのは、快楽の喘ぎ。
英治を呑んだ腰が、堪えきれない衝動に、ゆるりと揺れる。
「もう、キモチイイんだ？」
確認すると、長い睫に涙を乗せて、とろりと濡れた漆黒が、幾度か瞬いて、伏せられた。
「仕方がない、だろう」
痛みのない玲二の体は、そのぶん、他の刺激に敏感だ。
その上、英治に念入りに仕込まれて、今では容易に快楽を拾い上げる。
「ふふ。玲二は素直で可愛いナァ」
白い頬に朱を上らせて、控えめに喘ぐ幼なじみ。
時折、深くしてやれば、びくりと身を跳ねさせて。
しなやかな脚を、英治の腰に絡ませて、言葉でなく、もっととねだる。
「っあ・・・・っ」
マァ、ふつう、こういうのキレイとか色っぽいとか言っても、可愛いとは言わないんだろうケドさ。
でも、僕が可愛いって思うんだからいいじゃナイか。
うん、僕の玲二は可愛い。
可愛くて、仕方がない。
でも、そうだナァ。
「胸、あったらいいのに」
言いながら、喘ぎに上下する胸をするすると撫でる。
しなやかな筋肉の感触は、それはそれで、気持ちいいケド。
でも、コレが柔らかかったら、きっともっと気持ちいいんじゃナイかな？
「な、ら、ユリアンヌでも、・・・っ！」
その先の言葉を、中を酷く掻き回すことで止めさせる。
まったくもう。
わかってナイなぁ、玲二は。
「僕は、玲二がいいの」
手術でもする？と聞いてみると、本当に嫌そうに首を振られた。
なんだ、つまらない。
つまらないから、赤みを増した胸の先端を抓り上げて、感じたそれが大きく反るさまを見下ろすことで、少しだけ溜飲を下げた。
「っぁ・・・・・っ」
「こんな感じやすいんだもん。胸つけたら、もっと感じるよ？」
そこは、少し酷くするくらいがいい。
爪を立てると、ぷっくりと膨れた先が、ひくひくと震えていやらしい。
「ああでも、コッチがあるからいいのかナァ」
英治は、するりするりと手のひらを、玲二の感じるラインを伝って下肢へと落とした。
不思議と、それをイジることに嫌悪感はなかった。
だって、玲二のだもんね。
それはもうすっかり大きくなって、英治の愛撫を待っている。
「っ、ぁ」
ゆるゆると握ってやると、それはしっくりと英治の手のひらに馴染む。
後ろへの刺激だけで、もう先端を濡らすほどになっていたそれは、酷く素直に快楽を示していた。
軽く擦ってやれば、それだけでふるふると震えて涙をこぼす。
とっても素直な、僕の玲二。
でも、一番素直なのは。
「やっぱり、ココかなぁ」
ぐ、と深くされるだけで、カラダ全部がびくんと跳ねる。
きゅうきゅうと締め付けるソコは、英治が大好きだと、襞全部が訴えている。
痛覚の件ひっくるめて、もともと素質があったの確かだけれど。
それでも、玲二のカラダをこんなふうにしたのは、全部、ぜんぶ英治の仕業。
でも、と、英治は思う。
でも、まだ。
まだ、ぜんぜん足りない。
ココロも、カラダも。
全部、僕好みに作り変えたい。
僕の玲二。
僕の。
ぜんぶ、僕の。
でも、サ。
「まったく、君なんかサァ」
玲二の柔らかくない胸を、英治は執拗に撫で回す。
汗にしっとりと濡れた胸は、指に吸いつくようで、ずっと触っていたくなる。
玲二の鼓動がどきどきと、指を跳ね返すのもたまらない。
「でかいし堅いし胸もないし、ココだって濡れないし・・・」
ぐいぐいと深く押し込んで、それからずるりと引き出して。
「ぅ、あ・・・っ」
ひくひくと震えるいやらしいそこを、また、深々と突き刺して。
「いまいち言うこと聞かないし、聞いてたってどーっか的外れてるし」
細められた眦に指を這わせると、長い睫が伏せられた。
ホラ、今だってチガウよ玲二。
今はお前の、涙に濡れたキレイな目が見たいのに。
それでも、サァ。
「お前が一番キモチイイんだもん、イヤんなっちゃうよ」
英治の勝手な言い分に。
玲二はただ、震える声で、「そうか」とだけ、呟いた。
英治は、そうだよと真顔で返し。
そうして、その、一番キモチイイ体をたのしむことに没頭した。
余計なコトは考えない。
それが、英治の一番最初に会得した処世術だった。