ゆらゆらと ２
湯船に反射した光が天井に映って、ゆらゆら光って綺麗だった。
明かり消したらアスランさん見えないじゃん！と、反対した自分を、何故イザークが鼻で笑ったのかよくわかる。
ゆらゆら揺れる、あえかな光に肌を染め、布団に四肢をついたまま、ゆらゆらと快感に揺れるアスランは。
とってもとっても、綺麗だったから。
「んっ、あ・・・・・」
とろりと光る緑の瞳が、闇に光って。今は、炎を模した明かりの色を映している。
「シ、ン。こっち・・・・」
「サボるな、小僧」
「さ、さぼってないですよ！」
それに見とれていたシンは、疎かになっていた愛撫を再開しようと、その、欲に濡れた肌に手を伸ばした。
ゆらゆらと、炎の色に染まった肌は、その色に相応しいほどに熱い。
「い、い。お前、こっち」
しかし、イザークを呑んだままのアスランは、シンの手を掴み取って、自分の前へと回らせた。
「贅沢者」
誰へともなく、イザークが吐き捨てて。
それに笑ったアスランは、シンの浴衣の合わせ目へ、恥じらいも遠慮もなく顔を突っ込んだ。
「えっ、い、いいですよっ！」
アスランの体に触れながら、大人しく順番待ちをしていた少年は、あまりに淫らな青年の様子に思わず腰を引けさせる。
だって、だって口でしてくれんのとか嬉しいけど！
でもでも、なんつーか、こう・・・・
「お前、浴衣なのにパンツ穿いてるのか」
「穿くんですよ普通！」
浴衣の下で、首を傾げた感じに布が動く。
「そうか・・・？」
それから。
ぎゃーーー！！
シンは、声にならない悲鳴を上げた。
シンのパンツを、容赦なく引き摺り下ろしたアスランは、じっとガマンの体勢だったシンのそれを、何のためらいもなく口に入れたのだ。
「んっ、んんっ、ん・・・・・っ」
何を言っているのかは定かではないけれど、アスランが口を動かせば、シンのものは、当然激しく刺激される。
「ア、アスランさんっ！」
たまらずばさりと浴衣をめくれば、シンのものを咥えたアスランが、上目遣いで見上げてきて。
背中に、蝶の浴衣を引っ掛けたままのアスランの、覗いた肌に、光が揺れる。
赤い唇には、シンのもの。見上げる瞳は幽玄の炎。
少年は、視覚的にも、追い詰められる。
「こら！貴様こちらにもちゃんと集中しろ！」
しかも、後ろでゆるゆると動きながらその様子を眺めていたイザークが、その体をそこからがんがんに攻めだしたからたまらない。
「んっ、ん！んぅーー！！」
身をよじったアスランの、その口にもっていかれるように。
「っわ！！」
シンは、たちまちイってしまい。
「こ、の。馬鹿っ！」
シンのものを吐き出したアスランが、毒づきながら、腰を揺する。
「くっ、キサマ・・・・！」
わ、またやってる。
シンもやられたことがある。
アスランのそこで本気で食い締められると、イタくって、でもヨくって、でもとってもイタくって凄くヨくって大変なんだ。
・・・・いいなぁ
きゅう、と、アスランが、シンの浴衣の裾を噛んだ。
その必死の様子に、自分のこと忘れられてる、と思ったシンは。
悔しくなって、硬く食い閉められた顎を取って。
自分の裾ごと、唾液と白濁に濡れたそれに、キスをした。
「んはぁっ！」
とたん、響いたアスランの喘ぎに、あ、イったなと思った瞬間。
「この、馬鹿ぁっ！」
アスランに、足に噛み付かれ。
「痛っ！！」
「加勢に感謝するぞ、小僧」
イザークに、嫌な感謝をされた。
ムカつくーーー！
「加勢したんじゃないですよ！アスランさんが俺のこと忘れてるからっ！」
「拗ねたのか」
「違います！！」
「・・・・そうか、拗ねたのか」
そのやり取りで何を納得したのか、アスランがこくんと頷いて、ぺろぺろと、噛み付いた足を舐めてくれた。
腿のあたりだったから、噛まれたら痛いけれど、舐められると凄くイイ。
イイから。
「若い、なぁ。もう・・・・おいイザーク、そろそろイけ！代われ！！」
「勝手、なっ！」
「ん、あっ！！」
これで最後、とばかりにアスランの奥深くまで突き込んで、そこでイったらしいイザークは、アスランに『勝った』からか意外と上機嫌だ。
「代わってやるぞ、小僧」
そう言うと、捕まえていた腰を、抱え上げるようにしてシンの方に投げ出した。
「丁寧に扱えよっ！」
「うるさいわ！」
ひとつ叫ぶと、イザークはうるさい口はふさげとばかりに、開かれたままだった赤い唇に、一度イって萎えたものに指を添え、深く深く突っ込んだ。
「んーーーっ！」
上げられた呻きは、明らかに抗議だ。
それでもイザークは気にしない。
「俺のの代わりに、貴様のを入れろと言ってただろう。さっさとしろ、小僧」
確かにそんなこと言ってたけども、なんか微妙に違う気がする。
それでもシンは、イザークの機嫌を損ねて「引っ込め！」などと言われないうちにと、目の前で揺れる、魅惑的な腰に手を掛けた。
その腰が揺れているのか、外の湯船に反射する光が揺れているのか。
どちらだかわからなくなりながらも、シンはその真ん中の、赤く色づいた場所に、自分のものを押し当てた。
「ん、んーーーーー」
これは、凄く気持ち良くなってる声。
何言ってるのかわからなくても、それくらいわかる。
だからシンは、アスランのこの中の、気持ちのいい襞のうねりにもっていかれそうになりながらも、歯を食いしばって頑張って、一生懸命にその中で動く。
口だって凄く気持ちいいけど、ここは違う。
だって、俺が。
アスランさんを、気持ちよくさせてあげられるところなんだから。
「んっ、んっ、ん、ふっ！」
リズミカルな突きは、アスランの好きなやり方だ。
それにあわせるようね鳴る喉に、少年はたまらない満足を感じる。
感じ、させられる。
「く・・・っ」
でもここで満足してしまったら、この人の男には、なれない。
大人しく食われるような男では、目の前で、大きなものをアスランに食わせてやっている男には、敵わないのだ。
「アスランさ、ん。イって・・・よ」
淫らにのたうつ白い背中に、灯りの光がゆらゆら揺れる。
「んっ・・・ふ」
小刻みに揺れる腰は、イく時の合図。
アスランは、シンのお強請りに弱い。
それを知っているから、シンは。
なのに。
「ま、だ。早いぞっ！」
なのにイザークは、ひとつ唸ると手を伸ばしてアスランのものを掴み締め、彼の快感を、無理やりに留めさせてしまったのだ。
とたん、アスランの体が硬直し、その白い背中に浮かぶかすかな傷跡を、ゆらゆら揺れる光が舐めた。
シンを食んだ場所もきゅうっと締められ、少年は、とっさに歯を食いしばる。
「何、すんですか！」
「ん、ぐっ・・・・」
「ばっ！噛むな馬鹿者！！」
三者三様の叫びが上がり、それでも三人が三人とも、己の位置を変えようとしない。
変えたら負けだ。
そんな真似が出来るか。
「む、ぅ・・・・っ」
一番早く立ち直ったアスランが、イザークのものに食らいつき、さっきまでとは比べ物にならない勢いで、その己を責める凶器を食いにかかった。
「っ、の・・・・！」
その喉奥を、イザークは負けじと塞ぎ込み。
「ちょっ、アンタら・・・！」
また忘れられては嫌だと、シンはせっせと腰を使う。
「ん、ん、んっ、んーーーん！」
二人がかりで責められて、それでも負けないアスランは、今夜も立派に二人を食らい。
そうして。
「俺が食ってやったんだ！」
「・・・も、何でもイイです・・・・・・」
二人の恋人に、いつものセリフを吐かせて果てた。
ゆらゆらと。
光るさざ波に目を細めながら、アスランが小さく呟いた。
「綺麗だな・・・」
「キサマ、他に言うことはないのか」
「だって、綺麗だろ」
ぱしゃん、とアスランが湯を跳ねさせると、弾けた飛沫がシンの頬を濡らしたけれど、少年は気にせずに、再び跳ね上げられた雫が、光を弾くのを楽しんだ。
「贅沢、だな」
夕食前と、同じセリフを呟いて。
アスランは、やはり夕食前のシンのように、ぶくぶくと顎を湯に沈める。
「キサマ、同じことを何度も言わせるな。湯に口を・・・・・寝る気かこら！」
その顎を掴み上げ、がみがみと叱るイザークを睨み上げ、今まで散々男を食らっていたとは思えない、冴えた瞳でアスランが言う。
「だって、美味いもの食べて、気持ちいいことして、気持ちいい温泉入って、こんな綺麗なもの見て・・・・」
そうしてその瞳を、ゆらゆらと昇りながら炎を模した光を乱反射していく湯気へ。
そしてその先の、空へと向けて。
「生きてるって、ものすごく贅沢だな」
「・・・・・フン」
鼻を鳴らしたイザークが、ふと、その手を離す。
たぷんと顎を湯につけて、また沈み込もうとするのをシンが肩をぶつけることで止めて。
「ゼータクなのはアンタとこの人だろ。生きてたってこんなこと、滅多にないですよ」
そう、低く呟くように言い、ぽかんと開いて、今にもお湯の入りそうだったアスランの唇に、酷く稚拙な、触れるだけのキスをした。
「・・・・・・・そう、か」
「あたりまえだ！」
目の前でイザークが、また、吠えた。
叱りつけるその声と、唇に残る熱を。
アスランは、やっぱり俺には贅沢だな、と思って。
ゆらゆらと、昇る湯気の先を、そっと見上げた。
きらきらと光るそれは、やっぱり、とっても綺麗だった。