ちいちゃいからって一口で頬張ると火傷するぜぃ！ 子わんこシン クリスマスイブ 初出 2005/12/24

シンは子わんこです。 シンのご主人様はアスランさんと言います。 綺麗だけどとっぽいです。でも強いです。 シンはアスランさんが大好きです。 それからシンには旦那様もいます。 正確にはシンの旦那様ではなくって、ご主人様の旦那様です。 ダースベー……もとい、ジュール隊長といいます。 ご主人様の旦那様は、シンの隊長なのです。大変です。 厳しいし、ダークフォースを持ってるし、もう、 う〜わんわん！って感じの方です。 子わんこシンは、そんなご主人様と旦那様と一緒に暮らしています。 さて。 今日はクリスマスイブであります。 旦那様もシンもお仕事はお休みで、久しぶりにご主人様と楽しい休日を過ごせそうです。 旦那様は朝も早よからお部屋の飾りつけに専念しております。 旦那様は、結構イベントごとに凝り性なトコがあります。大発見です。 リビングに大きなツリー（本物のモミの木です。貴重です）が運び込まれ、月やら星やらプレゼントやら。 サンタにトナカイ、チャペルやソリ、雪だるまにベル等等等……。様々なオーナメントが綺麗に取りつけられ、金銀のモールが巻かれ、チカチカ点滅する小さなライトも色とりどり、それはそれは立派で、とてもとても綺麗です。 シンは、こんな大きなツリーも、ピカピカ光るオーナメントも初めて見たので、ひたすら魅入っておりました。 その隣で、ご主人様も嬉しそうにツリーを見上げております。 旦那様は何も言いませんでしたけど、1人と一匹のそんな様子に満足のようです。 因みにお仕事仲間のディアッカがダースベーダーの金ピカオーナメントをくれましたので、それも飾り付けてあります。 旦那様は最初、すごく嫌がってすごく怒りましたけど、ご主人様がまったく気にせずつけてしまいました。 ご主人様は強いです。 因みの因みにこの商品、ビッグスター社製で高さは１０センチくらいです。偉そうなポーズが超・かっちょいいです。 わぁ、すごいｖ それからご主人様と旦那様とシンは、明日のディナーの為の買出しに出かけました。 大きなショッピングモールでもって、たくさん食材をカートに入れてゆきます。 シンの指定席はカートのまん前の籠であります。 依然、やっぱり一緒に買い物に来て、足元でウロチョロしていて旦那様に何度か蹴られてしまいまして。 それで旦那様がシンをそこに乗っけてしまいまして。 それ以来、ショッピングモールでのシンの場所はここであります。 カートを押すのは旦那様ですので、シンはちょっと偉くなったような、いい気分です。 しかしながらここにおりますと、好きな物を勝手に取りに行けないというデメリットもありますので、ちょっとコンチクショーな気分でもありますが。 明日はご馳走を食べますから、今日はまぁ、普通に質素にしようかとご主人様が言いました。 質素はいいですけど、デザートにはアイスがいいとシンは訴えます。 起訴は受理されました。やったー！ お前は甘やかし過ぎる、とかなんとか口うるさく旦那様がご主人様に異議申し立てますが、ご主人様はいいじゃないかと笑顔であしらってしまいます。 本当はご主人様もアイスが好きです。 だからシンの味方をしてくれるのです。 シンはアイスが好きで、アイスの好きなご主人様が大好きです。 まだ明るい内から、街はイルミネーションでにぎやかです。 世界中が、1番、美しい時です。 いっぱいいっぱい、たくさんたくさん、哀しいことや辛い事があって、それは何処かで今も、続いてはいるのだけれど。 でも。 祈るように街を飾って 天に、誰かに、届くようにと賛美歌を歌って ほんの一時でも、いいのです 世界が平和でありますようにと いっぱいいっぱい哀しい想い出を背負っているご主人様も旦那様も シンも この美しい時を祈りながら過ごそうと。 一緒に。 ２人と一匹で。 家に帰ると旦那様は、ライブラリーの次に我が城と称する広いシステムキッチンにて、今夜の分と、明日のディナーの下準備です。 質素なとは言いましたが、旦那様はなんと、お料理が上手です。 すごく上手です。 プロ級です。わぉｖって感じです。 なんでも、職場の食事が口に合わないとかで、勝手に調理場を使って自分の食事を作っている内、本格的に凝り始めたのだそうです。 以前、ディアッカがディナー時に押しかけてきて（でも旦那様のお仕事の件で呼び出しをくらったのです、ホントは）旦那様の料理を食べて大感激。無理矢理固い握手をして「結婚しよう」などと血迷ったことをほざいた挙句に旦那様に家から蹴り出されていました。 連日のお仕事で疲れていた上に、独り身の彼には心身共に、美味しいご飯が沁みたのでありましょう。 シンも、旦那様はおっかないし厳しいのでちょっと近寄りがたいのですが、それでも旦那様の作るご飯は美味しいので大好きです。 ご主人様はって言うと、すごくすごく料理がへたっぴであります。 ご主人様は機械いじりやマイクロユニットを造ったりするのが得意で、手先も器用ですのに料理はちっとも上手ではありません。 でも器用なのは本当で、この間も、こっそり何か縫っておりました。 そんなご主人様は、片手で食べれて片付けも簡単、というのが理想の食事で、以前、そういう食生活ばっかししていたことが旦那様にばれて超こっぴどく叱られておりました。 あんまり旦那様が怒るので、すっかり拗ねたご主人様が、じゃぁ俺も作ってやるさと作ったお料理はと言うと、 少なくとも哺乳類が食べれる味ではございませんでした。 シンは子わんこでしたので、引きつけを起こしまして。 それで半泣きのご主人様に抱っこされて獣医さんに駆け込みまして。 子わんこはご主人様が大好き。だけどご主人様のお料理は、罰ゲームでも、もう食べたくないと思っております。 どんなにＡＩがあっても、越えられないモノってあるんだなぁと。 シンはそう学んだ訳でして。 それはともかく。 その日のディナーも終わって、デザートのアイスを食べている時に旦那様が面白いお話をしてくれました。 今夜はイブです。サンタさんがやって来て、良い子にはプレゼントをくれます。 そんなことは子わんこのシンだって知っておりました。シンはもう欲しいモノが随分と前から決まっていたので、それに合うアホのようにでっっかい靴下をシーツで作って用意していたのです。 それを枕元に置いておけば、朝にはプレゼントがその中に入っているという寸法であります。 知識もバッチリ、準備も万端と胸を張るシンに、旦那様はしかし、「爪が甘いな」と鼻先で一笑。 …お手々にくっついたアイスは、もうちゃんと舐めましたけど。 ……どうやらそういうことではないようです。 旦那様曰く、良い子とは、夜にきちんとひとり寝の出来る子。そういう子供のところにだけ、サンタさんはプレゼントを持って来てくれる。 とか。 シンは、ご主人様と一緒に寝ています。 ご主人様と一緒、ということは、必然的に旦那様とも一緒な訳です。 でっかいベッドで一緒に寝ているのです。 旦那様と一緒にお仕事の時には、ちゃんと一人の部屋で寝ていますけど、でも旦那様だけがお仕事の時には、ご主人様にひっついて寝ています。 つまり、そういうことなのです。 しかし今夜は一人で寝なくては、サンタさんはプレゼントをくれないそうです。 ……確かに、闇のフォースを持っている旦那様と一緒では、サンタさんも怖くて近寄れないのかもしれません。 仕方ありません。 シンは、お部屋にお布団を敷いて、アザラシ枕と一緒に寝ることにしました。 枕元にでっけぇ靴下をちゃんと置いて。 ご主人様と旦那様におやすみなさいをして、さてお布団に入ってしばらくは、サンタさんが来るのをじーっと待っていたのですが でもすぐに ぐぅぐぅ、眠ってしまいました。 「…凄いな…大当たりだ」 「当たり前だ、これくらい分からんでどうする」 「シンも、もっと良いモノ強請ればいいのになぁ…」 ひそひそ…話し声に、シンのお耳がピクピク動きました。 サンタさんが来たのでしょうか。目を開けて確認したい。でも眠くて眠くて起きれません。 「これで我慢しろ、小僧。俺なりの譲歩だ」 「何いばってるんだよ…」 ガサゴソ…と音がして、それから、大きくて暖かい手が一撫で、頭を過ぎて(それは何処かで嗅いだ匂い)、それから柔らかい優しい感触がほっぺに落ちて(これも知ってる、大好きな匂い)、やがて、何者かが去る気配。 ……お部屋はまた静かになりました。 シンは結局、眠くて仕方なくて起きれないまま。 前夜は過ぎて行きました。 明けまして聖夜の朝です。 シンはお目目を覚ましてコシコシと顔をこすりながら枕元を見ました。 さ！　べっくらです！！ サンタさんは、ちゃんとシンのお願いを聞いてくれていて、プレゼントしてくれたのでした。 シンはもう大喜びでフカフカな感触のご主人様をぎゅぅっと抱きしめて、シンはそのまま、リビングに向かいます。 もう、朝のいい匂いがしていますから、本物のご主人様も起きていて、旦那様は朝ご飯を作っている最中でしょう。 ２人に、シンがいい子だっていう証拠を見せに行くのです。 さぁ、今夜はクリスマス。 ２人と一匹で、楽しく過ごしましょう。

オイラやっぱしワンコが好きかもー！！　つか、背景無くてごめんなさい。