プレゼントはウェディング
（注：「お義母さんといっしょ」を先にお読みください）
ぐったりとベッドに身を投げ出した奥方を見下ろして、イザークは機嫌良く、くつりと笑った。
「疲れた・・・」
「そうだな」
「お前は全然疲れてないだろ！」
そうやって手足をばたばたさせる様子は、まるで彼の飼い犬のようだ。
そう思うといっそう可笑しくて、イザークの笑みは深くなる。
「俺だって疲れたぞ。・・・貴様のあの格好を堪能するのにな」
今日は、イザークの誕生日。
『欲しいものがあったら言ってみろ』と言った奥方から、『何でもしてやる』という言質を取った上で、彼が望んだものは、奥方とのウェディングだった。
参列者は身内も身内、イザークの母と飼い犬と預かり犬と、何故か紛れ込んだディアッカのみというものだったが、イザークは非常に満足していた。
誰よりも美しい奥方のウェディングドレス姿と、嘘偽りなく祝福してくれる人たちと。
まあ、これで隣の奥方がもっとにこやかにしてくれればなお良かったが、それはそれ、そうならないのがアスラン・ザラであるのだし、そんなアスランに惚れたのがイザークなのだから仕方がない。
仏頂面でなかなか写真が撮れず、余計に時間を食ってみたりとか、気がつくとスカートのレースの中に豆柴が紛れ込んでいたりとか、うっかりヒールで踏まれてみたりとか・・・
仕方がない。
それでもアスランは、いつもとは比べ物にならないほどしとやかに動き、それを揶揄したイザークは、思いがけない言葉に黙らされた。
「だって、このドレス母さんのなんだ」
レノア・ザラが、パトリック・ザラとの結婚式で着たものを、その親友だったエザリア・ジュールがもらい受けたらしい。
どちらも、アスランやイザークが生まれる前のことだ。
それにまつわる話は、エザリアにははぐらかされ、子供たちは推測するしかないのだけれど。
推測した上でも、このドレスは大切に扱うより他になく。
おかげでイザークは、珍しくおしとやかな奥方を、思う存分堪能したのだった。
「このやろう・・・」
その奥方は、まあ、今はこんな口を叩いているのだけれど。
アスランは、流石にもう、いつものパジャマだ。
しかし、きちんと湯を使ったはずの肌からは、まだ少し、甘い香りがする。
「貴様、ちゃんと洗ったのか？」
「洗ったけど・・・まだ何か付いてるか？」
「甘い匂いがする」
「シャンプーだろ」
「もっと甘いぞ」
顔を寄せ合って、匂いをかいで・・・まるで、仔犬同士がするように互いを確かめ合えば、アスランが不意に顔を赤らめてそっぽを向いた。
「どうした？」
「別に・・・」
不意に目に止まったイザークの頬のラインに、うっかり見とれて増したなんて、恥ずかしくて言えない。
代わりに。
「改めて・・・誕生日、おめでとう、イザーク」
彼にしては珍しい殊勝さで、今さっき見とれた頬にキスをした。
とたんに「フン」といつもどおりに呟いたイザークは、それでもやはり嬉しそうで。
「プレゼントよこせ」
「今日散々やったじゃないか」
「仕上げだ、馬鹿者」
「仕上げって・・・・うわこの馬鹿」
「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは」
「ばかやろ・・・」
そのままパジャマを剥ぎ取られるのは、まったくいつもの手順だった。
しかし、ぶつくさ言いつつも蹴りのひとつも飛んでこないのは、やはり「プレゼント」の自覚があるのだろう。
白いシーツに、白い肌。昼間のドレスを思い出し、イザークはまた、機嫌よく笑う。
「貴様はドレスも似合うが・・・やはり、コレが一番だな」
「これって・・・」
するりと足を撫でられて、そのまますうっと腹から胸へ。さらに喉へと滑っていく手のひらに、アスランも「コレ」が何なのか、わかってしまう。
「っ、なら、別にあれ着せなくたって良かったじゃないか」
「着せた後だからまたいいんだろうが」
そう。
イザークの奥方様は、何を着せても似合うけれど。
何も着ていないのが、一番綺麗。
「ありがたみが再確認できる」
「ありがたがってるなら、ちゃんとそう扱え！」
「扱ってるだろうが」
「どこが・・・んっ」
その証拠にと、深いキス。
手のひらは、大事に大事にその身を抱いて。
アスランだって、わかっている。
大事にされていることくらい。
「ん、ん・・・ふ・・・」
するすると体を滑っていた手のひらが、きゅっと尻の肉を掴んだ。
とたんに揺れた腰を、イザークはアスランの口腔の中で、笑う。
「んんーーーん」
抗議しようと唸るけれど、もう片方の手でがっちりと頭をホールドされて、口付けが緩む気配はない。
ちょっと苦しい。
しかし、その苦しささえ、気持ちいい。
「んっ、ぷ、はっ・・・イ、ザー・・・」
「キスだけで、こんなに感じたか？」
「違っ・・・」
無意識に、硬くなったソレをイザークの腰に擦り付けてしまったことに気が付いて、慌てて腰を引いて。
しかし腰を押さえ込んだ腕にしっかりと阻まれた。
「何が違う」
濡らしてもいない指に、ソコをたどられて、背筋が震える。
早く欲しい、でも、このままじゃ痛い。
アスランはイザークを睨むと、服を着たままの彼の肩に、がふりと噛み付いた。
「つっ・・・フン」
意図を察したイザークが、噛み付かれた方、アスランの下を弄っていた手を差し上げて、その口元へ持っていく。
「噛むなよ」
「噛まれたくなきゃ、ちゃんとやれ」
「やってるだろうが」
そら、と憎まれ口を叩く口に、その指を突っ込んで。唾液を絡め、舌を弄り、喉の奥から甘い声を出させて。
それからソレを、下肢へと戻し、一番奥へと押し込んだ。
「んくっ・・・」
「なんだ、もう中はＯＫだな」
「そんなわけあるか、ばかっ・・・」
「自覚はないのか？淫乱め」
イザークに容赦なく二本目の指を差し込まれ、そのままぐいぐいと入り口をこじ開けられる。
痛みはない。ただ、酷い疼きが背筋を駆け上がった。
「あんっ・・・」
「誘うな」
「誘ってな・・・っあっ！」
その声、誘っているようにしか聞こえないぞ。
心中そう吐き捨てて、イザークは淫らにのたうつ腰を押さえ付け、跳ね上がる脚を割り開いた。
あの清楚な花嫁が、同じ晩、こんな淫らな姿を晒すのだ。
それはもう、ありがたく頂かなければ罰が当たる。
「やっ、あ、んっ・・・・」
イザークを迎え入れた襞は熱く、肉は心地良く自身を締め付けた。
まるで、イザークにあつらえたかのようなアスランの体。
イザークの、花嫁。
「んっ、あんっ、イ、ザ・・・」
「無駄に動くな馬鹿者」
腰を揺するアスランを一喝し、それでも彼に快感を与えるため、イザークは抽送を繰り返す。
やがて迎えた絶頂に、とろける奥方のその表情。
紅に染まった震える肢体。
ああ、素晴らしい誕生日プレゼントだと、イザークは目を細めつつ、アスランの中に吐き出す快感を、十分に堪能したのだった。
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