「はい・・・」

うつむいたまま答えた永泉の、細い顎を取りもう一度口付ける。

また膨れだした場所に舌を絡め、しかし最後までせずに更に奥へと舌を忍ばせる。

「やっ、やすあきどの！」

「だめなのか？」

先手を取ると、意外にあっさりと永泉は大人しくなった。

前からより、後ろから舐めたほうが脚が邪魔にならないと気づいて体を返す。

「あ・・・」

熱い内側は、引き裂いた肉に似ている。

同じ人の内部なのだから当然か。

うごめく襞を舐め尽くし、ひくひくと震える内腿に唾液の線を引いてから、そっと離れる。

自分のそれは、信じられないほど大きくなっていた。

これを入れたら、本当に裂けてしまうかもしれない、と思ったが、もう止めることはできなかった。

「あっ、ああっ・・・・」

肉を割る、たまらない感触に自身が包まれる。

舌や歯で感じるよりも、ずっと気持ちがいい。

震える背中に舌を這わせる。複雑に動く筋肉が面白くて、たちまち細い背中は唾液と汗でてらてらと濡れそぼった。

同じく濡れた内側を責めながら、抱きしめたままだった腕を片方外してなめらかな胸と腹部を撫でる。突き上げるたびに波打つそこに感じ入り、やがてその更に下、先ほど舐めていたところがまた硬くなっていることに気が付いた。

「気持ち良いのか？」

問い掛けても答えはなく、下に敷かれた泰明の狩衣にしがみつくように、ただ、喘ぐ永泉。

しかしその声の甘さが、泰明に真実を伝えた。

嬉しくなって、さらに激しく腰を突き動かす。

腕の中の体が、それに応えるようにつたなく動く。

後ろから頬に手のひらを添えると、意を察して、苦しい姿勢で永泉が振り返る。

交わした口付けは、その血肉と比べ物にならないほど美味だった。

月光を弾き返す、長い髪。

ちらちらと光る睫。その下の、閉じられた瞳。

「やすあきどの・・・？」

小さな声で呼びかけても、答えはない。

それが、自分に気を許してくれている証拠のようで嬉しかった。

ずっと憧れていた腕に包まれて、永泉は幸せだった。

あのとき。

貴族たちの言葉に、今まで感じたことがないほどの憤りを感じた。

声を荒げたことなど、初めてだった。

私の、大切な人。

その人を、傷つける言葉が許せなかった。

その言葉を止める力のない自分が悲しかった。

泰明に、申し訳ない思いでいっぱいだった。

だから。

泰明が欲してくれるなら。

食べられてしまっても良いと思ったのだ。

大好きだから。

食べられて、ひとつになってしまえたら嬉しいと。

でも。

永泉は、そうっと身を起こして、泰明の頬に口付けた。

さすがにこの動きには、泰明も目を覚ます。

ゆっくりと開いた色違いの瞳が、もう一度細くなって。

ご機嫌な猫の仕草で、永泉に肩に手をかけ、じゃれかかるように抱きしめる。

「泰明殿・・・お腹いっぱい？」

「ああ」

「口付けしたら、だめですか？」

「それなら、いくらでもしたい。」

絡み合う体のぬくもりと、柔らかく互いを束縛する(抱きしめる)力。

それから、触れ合う唇は。

血肉よりも美味な、幸福の味だった。