My little lover
東洋人の肌の肌理は、ヴァレンタイン卿の愛するもののひとつだった。
しかもそれが、まだ幼い少年のものであれば、また、格別。
白いシーツに横たえられた、搾りたてのミルクのような色味の肌を愉しみながら、ヴァレンタインはさらさらと指通りの良い黒髪の間からのぞく、愛らしい耳朶にそっとささやいた。
「随分、柔らかくなったね」
もう片方の指は、彼の中へと埋め込まれている。
「ふ・・・っ」
節の立った長い指で、体の奥、誰にも触れられたことのなかった襞をたっぷりと嬲られて、少年はひくひくと体を震わせながら、まだ１１とは思えない、艶の乗った息を吐いた。
ゆっくりと、時間をかけて。
無垢な少年の体を開いていくのは、たまらなく楽しい作業だった。
できれば、もっと時間をかけて、この体が溶け堕ちていくのを愉しみたいところなのだが。
地球の裏側から誘い出してしまった彼が承諾した期間は、３日。
そうそう時間もかけてはいられない。
内側に差し込んだ指はもう３本。
もちろん、自分のものはそれよりももっと太いが、そこに親指を添えてぐうっと開けば、口を開け、中を見せてしまうほどには、そこは慣らされ切っている。
「ん・・・っ」
少し無理に開かれて、少年が甘苦しく呻いた。
そこに、苦痛の色はない。
そのまま奥まで入れ込めば、快楽を教え込まれた柔らかな襞が、たっぷりとその指を包み込んだ。
「マーカス・・・」
瞑っていた漆黒の瞳をふわりと開き、たっぷりと濡れた瞳で少年が誘う。
これは、将来が怖いね。
くすくすと笑ったマーカスをどう思ったのか、黒い瞳を瞬かせて、祐介はふいと赤く染まった頬を枕に頬を埋めた。
そんなことをしても。
大きく開かせた脚の間、彼の恥ずかしい場所は、すべてヴァレンタインの顔前に晒され、その中に深々と、長く節の立った指を差し込まれているというのに。
まったく。
天使と小悪魔、両方の顔を持つ、この子を手に入れるであろう、あの生意気な少年が羨ましい。
日本人の貞操観念が堅いことは、ペイル・ブルーとのことでよく知っている。
きっと、彼のものになったなら、こうしていろいろと教えてやった自分にさえ、触れさせてはくれなくなるだろう。
ならば。
その前に、十二分に愉しんでしまうに限る。
恋は一時、愛は永遠。
そんなことは、とうに知っている長命の紳士は、ゆっくりと襞をなぞるようにしてあたたかく濡れた場所から長い指を抜き取ると、ちらりと見上げてきたその黒く濡れた瞳に微笑みかけ、そうしてシーツに倒していた小さな体を、その大きな手で抱き上げた。
特に指示をしなくても、首に回された腕は、驚くほどに熱かった。
「挿れるよ」
そう、赤く染まった耳朶に囁きかけると、腕の中の体がふる、と震えるのが可愛らしい。
どんなに強がってみても、これが初めての無垢な体なのだ。
そう思うと、自分でも笑可しいくらいに高ぶった。
こんな感覚は久しぶりだ。
それだけでも、この子に感謝しなくては。
「あ・・・」
そこに大きなものをあてがうと、それだけで少年の息は乱れた。
宥めるように、ちゅ、ちゅっと頬や唇に口付けて、
「息を吐いて。力を抜いて。・・・いいね？」
こく、と上下する小さな顎。
自分の体をコントロールするのは、術者の基本だ。
その端くれである彼も、この事態においても呼吸程度ならばなんとか整えられるだろう。
それが、ヴァレンタインほどの達人になると、ほんのわずかな指先の愛撫と口づけ、そうしてその声だけで、他人の体さえも操るのだ。
「そう、いい子だ」
「あ・・・・っ！」
ずぐ、と、大きすぎるものが、小さすぎる場所に侵入っていく。
ぴかぴかの新品の襞をかき分ける感覚は、幾度味わっても良いものだ。
「どうだね？祐介」
その肌と同じに、信じられないほど柔らかな襞に食い締められ、緩く目を細めながら魔術師が問う。
「んっ・・・」
初めて他人を受け入れた、物慣れない体を震わせて。
それでも思わず閉じた瞳を片方開き、祐介は喘ぎとともに、小さく言った。
「ま、だ、全部・・・」
「全部入れたら、さすがに君が壊れてしまうよ」
少年のそこはもういっぱいに口を広げ、ヴァレンタインのものを飲み込んでいる。
太さもそうだが、特に長さの人並みはずれたそれは、この小さな少年にはまだ無理だろう。
そう思っての言葉に、少年は涙で濡らした漆黒の瞳を上げて、酷く真摯にヴァレンタインを射た。
「壊してって・・・言ったら？」
まさかそう来るとは思わなかった。
ヴァレンタインは緩く目を細め、自分でも驚くほど甘い声で、小さな少年に囁いた。
「・・・壊しては、あげないよ？」
「それは、残念」
初めて男を受け入れたとは思えない、艶やかな目をして。
半ば無理をして作った笑顔で、少年が、笑う。
それは、百戦錬磨のヴァレンタインの目さえ奪う、極上の媚態だった。
ペイル・ブルーなどは、彼のこういう顔に目をつぶり、子供らしい部分を守ってやりたいなどと思っているようだが。
「私は、どちらの顔も好きだけれどね」
むしろ、そのアンバランスさに惹かれるのだと。
そう言ったなら、ペイル・ブルーはきっと、他では滅多に見せない、もの凄く嫌そうな顔を見せてくれるだろう。
「・・・誰のこと、考えてる？」
不意に、ヴァレンタインの首に腕を掛け、やっと息をしていた祐介が、声の震えを押さえて言った。
「俺といるのに」
そう囁く唇は、キスにたっぷりと濡れた赤。
見上げる瞳は漆黒の、すべてを見通すイヴル・アイ。
「・・・怖いな、君は」
希代の色事師、サー・マーカス・ヴァレンタインに、本気でそう言わせた少年は、ふっ、っと子供らしくない顔で笑い。
やれやれ、と首を振ったヴァレンタインは、こみ上げる笑いを隠さずに、抱いた体を軽く揺すった。
「あ・・・」
物慣れない小さな体は、たったそれだけの動きでびくりとひきつった。
その反応を腕いっぱいに愉しみながら、しかし男はそれでは満足しないのだ。
ひくひくと震えながら、やっとのことで男を受け入れている幼い襞から、その大きな物をずるりと引き出し。
「や・・・っ！」
そうしてまた、ここが限界だろうというぎりぎりまで、たっぷりと飲み込ませてやる。
「は・・・あぅぅ・・・」
首に回った細い腕に、きゅうと力が入るのが可愛らしい。
無意識だろう、膝を閉じようとして、柔らかな内腿が腰を挟み込むのが、素晴らしく心地良い。
そのまま、それを繰り返し。
初めて男を知った柔らかな襞を、自慢のものでずるりずるりと責めてやれば、まるで、悲鳴のような声が上がった。
「だ・・・め、マーカス、まだ・・・っ！」
「いいや、君なら大丈夫だ」
声音だけでも必死とわかるそれを一言の元に切り捨てると、抱き支えた体はびくびくと震え、包み込む襞もびりりと痙攣した。
その様子に満足しながら、ヴァレンタインは更に言葉を重ね、愛撫を重ねる。
それがもう、既に少年のキャパシティを越えているとわかった上で、だ。
「初めてなのに、ここをこんなに柔らかくして・・・嘘はいけないよ」
「ひんっ！」
動きやすいように体を倒し、背中をシーツに付かせて腰だけを支えてやる。
そうして、いいように弄んでやれば、やがて、悲鳴はすすり泣きのような声に変わった。
「ぁ・・・死ん、じゃ・・・・・」
長い睫に涙の滴をたっぷりと乗せて、そんなことを言ってくる可愛らしい愛人に、ヴァレンタインはとっておきの甘い声で答えてやる。
「随分、色っぽいことを言ってくれるね」
「あんん・・・・」
そうすれば、すっかりとろけたその場所で、もう十分に感じているらしい少年は、背筋を震わせて甘く喘ぎ。
頃合いを感じて、ヴァレンタインはすっかり立ち上がった幼い性器を、親指の腹で軽く擦ってやった。
「んっ、ああっ・・・」
とたん、きゅうと締まった可愛い口から、ずるりと自分を抜き出せば。
「あ・・・ああんっ」
許容範囲を超えた快感に、少年ははたはたと精をこぼし。
そうして、ヴァレンタインも自分の物でいやらしく濡れた少年の腹に、たっぷりと熱い物を吐き出してやった。
「あ・・・・」
初めて他人と交わった末の遂情に、涙を湛えた瞳は虚空を映し。
赤く濡れた唇は、忙しない呼吸の合間に甘い呻きを織り交ぜて。
二人分の精で濡らした薄桃色の腹を、艶めかしく波打たせ。
そうして、大きく開かせたままの脚の間で、閉じきらない口の中、赤い肉を見せつけて。
ああ、なんて素晴らしい。
その極上の眺めを心行くまで鑑賞していると、濡れた瞳がゆるりと上がった。
「よく頑張ったね」
ようよう理性を取り戻したその目元に、労るように口付ければ、少年はまたふるりと身を震わせて。それでも、投げ出していた腕を伸ばし、また、ヴァレンタインにしがみついてくれた。
快楽の汗を含んで、しっとりと吸いつく肌の熱さ。
とくとくと早い鼓動が伝わり、はあ、と、色っぽい吐息が、髪の間をくぐって消えた。
うーん、これは。
本気で手放すのが惜しいような。
らしくもなくそう思った男の耳元で。
「ねえ」
喘ぎにかすれた甘い声が、熱い吐息と共に囁いた。
「こういう時、あなたの国ではなんて言うの？」
「・・・・・」
思わず身を離して、その貌をまじまじとのぞき込んでしまう。
ひたりとそれを見返す瞳は、底の見えない深い黒。
ああ、と、ヴァレンタインは思った。
恋をするというのは、なんて素晴らしいことだろう。
それは、何度味わってもたまらない、極上の蜜の味だった。
「それはね・・・・」
幾通りも知っている中から、最も彼にふさわしい言葉を探すのは。
とてもとても、愉しい作業だった。