Meteor　-ミーティア-

最後に触れた指先が、あんなに冷たかった理由が。
なんだか、わかったような気がした。

凍りついた月に照らされた、君の指、白い頬。
その記憶は。
僕の、胸の中で、硬く凍って。
もう、解けることも、なくなることも、ない。

あの夜、ほんの一瞬、見えた光。
もしも、あれが、愛なら。

・・・・いや、あれは幻。
瞼裏に残る、残像。





圧倒的な火力と、フロートシステムによる機動力。
それが、敵の最大の武器。
赤い光が、すぐ側を駆ける。
十分な収束のおかげで余波は少ない。それでも、紙一重の回避で第一装甲が溶け、防護スーツで保護されていなかった頬が、激しい熱を持った。
後ろで、サザーランドが３機、爆散するが、かまわず。
僕は、フルスロットルで飛び出した。
当たらなければ、どんなに強力な火器も意味がない。
機動力。速さだけなら、こちらが、有利。
フロートアタッチメント、全開。
エネルギー残量など、頭から吹き飛んでいた。
僕は、今。
目の前の、黒いナイトメアを倒すことで、いっぱいだ。



あの機体との間に、立ちはだかる機体を打ち砕く。
敵は、お前らじゃない。
敵、は。
ルルーシュ。
君、ただひとり。
それ以外は。

敵ですら、ない。

引き金を引く指も、腕も。
ワイヤーを操る腕も。
軽々と、動く。

命を屠る。
罪を、重ねる。

不意に、スピーカーから、途切れ途切れに君の声が聞こえた。
ノイズまみれの笑い声。
狂気すら含んだその声に、僕は、嬉しくなった。
ああ、君も、僕と同じ。
己の欲望に、狂っている。


何故だろう、今、僕は今までで一番、君を近くに感じている。
君と、繋がっていると、感じる。
そう。
もう、僕には、君しかいない。
君を殺して。
そうして、すべてを終わらせることしか、ない。


収束する赤い光。
また、空を焼いて。
僕に、愉悦の熱を残す。
君の与えた熱。
それに、応えなければ。
君を、殺さなければ。

ああ、今撃った赤い機体には、きっと、良く見知った女の子が乗っていたね。
でも、もう仕方がないんだ。
罪の上に、罪を重ねて。
過ちの果てに落ちていく、僕の見る、最後の夢。

終わらない、夢。

「貴様さえいなければ！」
「お前がいるから！」





犯した罪を、償いたいと思っていた。
そうして、それと同じくらい。
同じくらいに強く、守りたいと思ったものがあった。
同じくらいに、儚く。
祈っていた、幸せが、あった。




あの夜。
空の彼方に、ほんの一瞬見えた。
見えた、気がした、光。
あれが、愛なら。





きっとそれは、幻。

悪夢を見続ける僕の、瞼裏に残った残像。




幻の、流星。

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