また、今度
誕生日の夜、ベッドの上。
「誕生日おめでとう、イザーク」
白い肌を全て曝して、ふうわりと、美しく微笑う愛妻に、最前線の白鬼の頬も緩む。
今年のプレゼントもまたハロだったのだが、その辺はもう、どうでも良くなる微笑み。
しかし。
「だから、今日は・・・」
そう言った妻の瞳が、ぎらりと光った。
獲物を狙う、グリーンアイズ。
男の夢が、破られる。
「乗ってやる」
「いらん」
ほぼ脊髄反射で言い返し、イザークは深々とため息をついた。
それはそれで男の夢かも知れないが、少なくとも、彼の趣味ではない。
「何だよ、せっかく俺がしてやろうって言ってるのに！」
先程の微笑みはどこへやら。
むうっと膨れた頬をして、（悔しいことにその顔もまた美しいのだが）アスランは問答無用でのしのしと、イザークの上へと乗り上がろうとしてくるから。
「貴様、有り難迷惑という言葉を知っているか」
ここで引くのは自分の趣味ではない。
だから逆に乗り上がってやろうと、肩を掴んで間近に顔を付き合わせた。
イカンな。今日も妻は美人だ。
「何だ、結局有り難がってるんじゃないか」
にこりと笑った笑顔も本当に美人だ。
美人だが、人の話を聞いていない。
「迷惑だと言っているんだ！」
そう怒鳴り返してから、イザークはふと、またむうっと膨れた妻の頬に目を留めて。
「・・・よし」
その子供じみた仕草に目を細め、珍しく前言を撤回して見せた。
「やってみろ」
よぅし！と乗ってこようとするアスランを、まずは勃たせろと押し返す。
それもそうだと頷いて、アスランは素直に、イザークの足の間に首を突っ込んだ。
「ん・・・結構大きいじゃないか」
下着の中から引っ張りだしたそれは、既にそこそこの硬度を持っていたのだが。
「この程度で満足するのか？」
そう挑発すれば、ちらり、と緑の瞳を上げて。
「そういうこと、言うか」
そう呟いた赤い唇を、これ見よがしに開くと、はくんとイザークをくわえ込んだ。
すぐさま絡みつく熱い舌。
それは、イザークのイイところを熟知した動きで男を煽る。
「んんっ」
唇をすぼめるようにして、一度軽く引いた後、舌先で先端を包み込むようにして、そこからまた、ずるーっと飲み込んだから。
イザークはすかさず藍色の頭を捕まえて、そのままぐいと引き寄せた。
んくん、と喉を塞がれて、目を白黒させたアスランだったが、そこはさすがにアスラン・ザラ。
そのまま喉の奥をすぼめるようにして、きゅうと先端を攻めた後、イザークの手から力が抜けたのを見計らい、首をよじって角度をずらし、むせ込む位置から逃れて見せた。
さあどうしてやろうと、上目遣いの瞳が愉しそうにきらめいている。
アスランの左頬が、イザークのモノの形に膨らんでいて、これはこれでもの凄く卑猥だ。
ついでに、ひどく圧迫されて挙句軽く歯先が当たったりして、かなり、とても気持ちがいい。
このままイきたいのは山々なのだが、それはそれで、負けたようで悔しいので。
イザークは、今度は両手でアスランの頭を抱え込んだ。
また、喉を攻められることを警戒して、アスランの舌が、イザークのものを押し返す。
それをなだめるようにして、今度はアスランの口腔に感じてすっかり反り返った先端を、口蓋に擦りつけるようにして抜き差しする。
「ん、ん・・・・・っ」
そうすれば、もう、片手を離しても、アスランはイザークのされるがままに、自ら舌を絡めながら、その仕草を繰り返す。
そこは、アスランの性感帯なのだ。
「あふ・・・・」
そろそろやばいと引き抜けば、アスランはうっとりと吐息をついた。
「貴様は、口の中も感じやすいな」
からかう声に上げられた瞳も、睨むというより何かをねだっているようで。
「しょ、が、ないらろ」
そう言い返すも、呂律が全然回っていない。
与えられた快楽に、腰が砕けて動けない。
そんな愛妻の様子に、イザークは機嫌よく、その肩を押してシーツへと倒した。
「ちょ、待っ」
本来の目的を思い出したのか、じたじたと暴れようとするがもう遅い。
肩から首をするりと撫でれば、あんと喘いでその無駄な抵抗もやんだ。
「俺が、乗るって言ったのに・・・」
「また今度な」
「今度って、いつら！」
よほど気合いを入れて舐めていたのか、まだ、舌の回らぬ唇を、キスで塞ぐ。
同時にさらさらと脚を撫で、そのまま指先を内腿からつうっと撫で上げて、一番感じるその奥へ、つぷりと指を押し込んだ。
「う、んっ」
ひくん、と、アスランの腰が跳ね上がる。
「指を入れただけだろうが」
嘲笑と共にそう言うと、指がきゅうっと締め付けられた。
その反応に気を良くし、指を増やして奥を探る。
探ると言っても、よく慣れた場所。
感じる場所も、その手前の焦らしどころも、すべて、イザークの手の内だ。
「やっ、あっ、ぅん・・・・っ」
イザークの手に溺れて喘ぎ。
白い体をくねらせるさまは、コレもプレゼントの内と思えば、いつもよりも、殊更にいとおしい。
やがて、たまらなくなったのだろう。
シーツを掴んでいた腕を上げ、イザークの足をべちべちと叩いてくるから。
「どうした？」
くつりくつりと笑いながら、赤く染まった頬から、藍色の髪を払ってやる。
「乗るんじゃなかったのか？」
そう、意地悪く聞いてみれば。
愛妻は、頬よりももっと赤く、濡れた唇をちいさく開き。
「・・・今度」
その、色めいた仕草とは裏腹の、子供じみた答えをぼそりと返す。
アスランの口で、たっぷりと育てられていたイザークも、この辺でそろそろ限界だった。
フンと機嫌良く笑い、無駄に絡みつこうとする脚を抱え上げる。
「今度、な」
「ばかやろぉ・・・」
そのまま、可愛いことを言う唇を自分のそれで塞ぎ、すっかりとろけてひくつくそこに、深くふかく、自分自身を差し込んでやる。
「んぅーっ！」
びくびくと、抱き込んだ体がのたうった。
イザークに差し貫かれたそこは、まるで痙攣するように震えた後に、離さないとばかりに絡みつき、締め付け。
抜き出そうとする動きを、精一杯に引き留める。
それに逆らい一息に引き抜き、そうしてまた、深々と貫けば、また、打ち震える淫らな体。
貪れば貪るだけ、必死に応えてくる唇。
たまらなかった。
「んっ、あっ、あふっ、イ、ザークぅ・・・」
腰を抱え直すために離れた唇から、絶え間鳴くこぼれるのは、甘く甘く、とろけきった喘ぎ。
その唇のこぼした、可愛いセリフを思い出す。
今度。
また、今度
今日も明日も明後日も。
来年も、再来年も。
きっと、同じことを繰り返す。
それは、なんて幸福なことなのだろう。
「あぁんっ！」
ついうっかり、感じる場所を思い切り突き込んでしまい、アスランの体が跳ね上がった。
ぎゅーっと、その弾みで締め付けられて、イザークは歯を食いしばる。
まあ、繰り返すには繰り返すなりに、努力も試練もある訳なのだが。
それこそ、望むところ。
男の本望というやつだ。
ニヤリとやせ我慢の笑みを浮かべ、喘ぎのたうつ愛妻を、これ以上の快楽に落とし込むために、イザークはせっせと体を動かした。
今年も勝てたと、その感慨は、決して大げさなものではなかった。