熱かった

体が熱くて、おかしくて。

とうとう、壊れてしまうのだと思った。

怖かった。

ただ、神子の道具として存在していたのだから、その務めが終わったいま、壊れて無くなることは自然の流れだというのに。

怖い、と。なぜ、あれの前で言ってしまったのかはわからない。

同じ玄武として、何か通じることがあったからか。

あれを前にすると、ますます上がる熱に、耐えきれなくなったからか。

あれ、は

手を伸ばし、言った。

『大丈夫です』

と。

『大丈夫です。私が、冷ましてさしあげます・・・・』

導かれるまま、あれの中に、熱を注ぎ込んだ。

出し尽くしてしまえば、簡単に冷めるものなのだと知った。

同時に

自分に触れられることを、拒まない者があることを知った。

不思議な感覚。

やわやわと頼りない体は、熱を更に駆り立てたが、冷ますことができることを知っているから、もう怖くはなかった。それどころか、心地よいとさえ感じられるようになった。

そして、今日も、永泉のもとを訪れる。

永泉の寝室は、最も奥まった塗篭にある。夜目の利く泰明でも、ぼんやりとしか見えない闇の中、小袖をまとっただけの永泉はまるで白い影のように頼りなく見えた。

その帯を解けば、更に細い体が、現れる。

「あ・・・・泰明殿・・・」

自分の熱を冷ます体を、確かめる。

柔らかくて、いい匂いのする体。絹のような肌触り。

先程よりも温度の上がった体から顔を上げ、熱い息を吐く唇に自分のそれを寄せる。

受け入れる代償に、永泉が求めたのはそれだけ。

そっと触れて、柔らかく食む。吐息が洩れたところで舌を差し込んで。

これは、自分もしたいのだから、別のことにしろと言ったのに、他には何もいらないと言う彼のために、丁寧に、ゆっくりと。

「ん・・・・は・・・・」

濡れた唇に指で触れ、更に挿し込んでふたり分の唾液をすくう。

熱を注ぐ場所は、ちゃんと準備してやらないと傷つけてしまうから、そっと触れて、柔らかくなるまで、馴染ませて。

永泉の腰が無意識に揺れ、吐息が忙しなくなるころには、泰明の熱はもうどうしようもない程になっていた。

「いいか？」

もし嫌だったとしても、下肢を押し開かれ、熱いものを押し付けられた贄にそう言える筈もなく。

「は、い・・・・あ、あああっ・・・」

きつくて柔らかくて気持ちいい、永泉の中。

今は、もうそこに注ぎ込むことしか考えられない。

「ん・・・は・・・ん・・・あ、あ・・・ん」

永泉の声に刺激されて、ますます激しくなる熱に、泰明の理性は焼き切れた。

「ん・・・ふ・・・・」

大量の熱を吸ったそこを押し開くと、とろとろと指を伝って溢れてくる。

いったん自分の外に出してしまえば、それは只の液体になってしまう、不思議。

「大丈夫か？」

「は・・・・い・・・・」

息も絶え絶えな永泉を抱いて、横になる。

胸にかかる吐息が熱い。

胸に埋められた顔を上げさせ、熱を帯びた唇にくちづけると、濡れた瞳が一瞬何かを訴えて、しかしすぐにまた伏せられた。

永泉の息があたっていたところが、酷く熱い。

それは、怖いような、不安なような、しかしいつまでも抱いていたいような熱。

その熱ごと、永泉を抱きしめて、眠る。

胸に宿る熱の意味を、泰明は、まだ、知らない。

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