ぺんぺん！
シンは、子わんこです。
子わんこですが、「モビルスーツぱいろっと」です。
しかも、「エースぱいろっと」です。
スゴイのです！
でも、シンたちの隊長は、もっとスゴイです。
「さきのたいせんのえいゆう」で、モビルスーツに乗ると、びっくるするくらい強いのです。
それに、シンをたくさんかまってくれます。
時々、よくわかんないことを言うので噛み付いちゃうのですが、そのときは怒られても、後でイイコイイコしてくれるのです。
だからシンは、余計噛み付いちゃいます。
だってそうすれば、隊長はもっとかまってくれるからです。
隊長の白い手に、シンの噛み付いた跡があると、痛かったかなぁ、ごめんなさい。と思うのですけれど、でも、俺が付けたんだぜい！とも思います。
フクザツなのです。
それで、やっぱり噛み付いちゃうのです。
がぶ。
「シン！」
でも、今日の隊長は、いつもより凄く怒っています。
シンは、ばっちーん！と、ほっぺたを叩かれてしまいました。
「なんなんだようっ！」
シンは、また命令違反をしたのです。
そんなこと、いっつもしています。
でも、こんなに怒られたことはありません。
「俺、間違ったことしてないもん！助けてあげたんだもんーーーっ！！」
そう、シンは、「みんかんじん」の人たちを、助けてあげたのです。
「戦争はヒーローごっこじゃない！」
でも、隊長はそう言うと、シンの首根っこを、ひょい、とつまみ上げました。
そうして、膝の上に乗っけると、シンのおしりをぺんぺんと叩き始めたのです！
「自分だけで勝手な判断をするな！」
隊長は、すっごいバカ力です。
ぺん、ぺんっ、とされるたび、シンの尻尾はびんっ！ってなって、お耳はぎゅうっと伏せてしまいます。
「ひーん、ごめんなさいーーー！」
シンは、すぐに謝りました。
だって、凄く凄く痛かったのです。
「わかれば、いいんだ。もうするんじゃないぞ？」
隊長は、そう言ってシンを下ろしてくれました。
でも。
「いーーーっだ！」
シンはちょろりとモビルスーツの影に逃げると、そこで歯を出して「いーっ」をしました。
言うことなんか聞きません。
日本男児は、わが道を行くのです！！
「こら、シン！」
隊長が追っかけてきました。
もちろん、シンは捕まったりなんかしません。
捕まったりなんか・・・
ひょい。
ぷらん。
「離せようっ！」
でも、あっという間に追いついた隊長は、また、シンをつまみ上げてしまいました。
そうしてシンは、また、おしりぺんぺんされてしまいました。
「わーーーーん」
「お前はちゃんと考えて行動しろ！！」
でもね、ちゃんとごめんなさいしたらね。
隊長は、「わかればいいんだ」って言って、痛い痛いなおしりと、泣いちゃったほっぺたを、やさしく撫でてくれました。
隊長の手は、気持ちいいのです。
なんだか、ほわんとしてしまうのです。
だからシンも、噛み付いちゃった隊長の手を、ぺろぺろと舐めてあげました。
「もう、あんなことするんじゃないぞ？」
「うー」
それには、答えませんでしたけれど。
でも、うーうー唸っているシンに、隊長は「みんなには内緒だぞ」と言って、アイスをご馳走してくれました。
シンは、アイスが大好きです。
・・・ほんとは、かまってくれたり、アイスをくれたりする隊長も大好きです。
わんこには、たいてい「ご主人様」がいるのだそうです。
シンは、隊長が「ご主人様」だといいなぁと思うのですが、そんなこと言いません。
日本男児はツライのです。
でも、隊長のアンヨにすりすりしてしまうのです。
くんくんもしてしまうのです。
あ、アイス溶けちゃう。
急いでアイスを食べて、ぺろぺろとカップを舐めているシンに、隊長は自分の分のカップをくれながら、言いました。
「お前は強いんだから。もっと、いろいろ考えなくちゃダメだぞ？」
強い強い隊長がそう言うので、シンは隊長のカップを舐めながら、聞きました。
「考えたら、もっと強くなれる？」
シンの夢は、大きくて強い秋田犬になることです。
秋田犬くらい強かったら、きっと、お父さんやお母さん、妹みたいな人を、助けられるに違いありません。
「ああ。そうだな」
「おっきい秋田犬になれる？」
「きっとなれるさ」
なら、頑張ろうとシンは思いました。
そうして、早く立派な秋田犬になるのです。
あぐあぐと、空になったカップを齧るシンを、隊長は、また、やさしく撫でてくれました。
シンが、考えた挙句に、ステニャをお家に返してあげたのは、また、後のお話。