ご主人様とお休み
シンは子わんこです。
子わんこなので、ご主人様大好きです。
シンのご主人様は、アスランさんっていいます。
時々わけわかんないけど、でもやさしくって強くってキレイで、やっぱりとっても大好きなのです。
さて、今日は、シンはお仕事お休みです。
でも、シンたちの隊長・・・ご主人様の旦那様は、お仕事です。
今はシンのお家にいる、お友達のレイもお仕事です。
レイが乗るモビルスーツの、調整があるんだそうです。
シンが乗るのより、微妙ーな設定があるので、三日くらいかかるんだそうです。
と、いうことは。
三日も、ご主人様と二人っきりーｖなのです！
シンはわくわくしながら考えました。
今日は、フリスビーしてもらおうかな。
ご主人様、すっごく遠くまで投げてくれるし、旦那様みたいに、意地悪してわざと外したりしないんだ。
それとも、ポケバイ乗ろうかな。
ご主人様に買ってもらったポケットバイク、ご主人様とタンデムしたいのに、まだしたことないんだ。（注：サイズ的に無理です）
一緒にゲームするのもいいな。ご主人様とオセロをすると、なんでか途中まで勝ってるのに、最後にばたばたってひっくり返されちゃうから、子わんこ、悔しくって何回もやっちゃうんだ。
でもね。
うっきうきで朝ごはんを食べ終わって、お口に付いたジャムを拭いてもらって。
『何しよう？』って聞こうとしたら、ご主人様はシンの頭をぽんぽんと撫でてくれたんです。
それで、シンがほわんとしてるうちに。
「じゃあ、大人しくしてろよ」
そう言って、ご主人様はお仕事する部屋へ入って、ぱたんと戸を閉めてしまいました。
「・・・・・」
シン、ぽかーん。
え、あれ？
ご主人様？
シンのご主人様は、お家でお仕事。
おしごと・・・・
「アスランさーーーん！」
でもでも、シンはお休みなのです。
ご主人様と二人っきりで、お休みなのです。
旦那様に、邪魔されたりしないのです。
今だけは、シンだけのご主人様なのです。
そう思ってたのにーーー！！
「アスランさぁああああああん！」
「・・・シン？」
ドアを開けたご主人様に、シンはぴょんと飛びつきました。
「俺お休み！遊んでよ！」
「あー」
ご主人様、困り顔。
「明日までに、図面を引いて送らないといけないんだ。終わったら遊んでやる。だから今日は・・・な？」
「やだー！」
シン、一気に駄々っ子モード！
やだやだ！今日は絶対遊んでもらうんだ！！
ご主人様、もっともっと困り顔。でもね。
「じゃあシン、こうしよう」
そういって、シンの泣いちゃった頬っぺたを、大きな手でごしごし撫でてくれました。
「夕方までには、何とか終わらせるから。だから夕飯は外で食べよう。公園の向こうのお店でどうだ？お前、あそこのハンバーグ好きだろう。デザートには大きいケーキを付けてやるぞ？」
大きいケーキ？
シンは、目をぱちくり。
でも。でもでも。
「夜はもちろん一緒に寝ような。あすランさんも一緒でいいぞ」
「うー」
旦那様が一緒だと、ご主人様と一緒でも、あすランさんは一緒じゃだめなのです。
『邪魔だ』って言って、ベッドの外に出されてしまうのです。
「そうして明日は一緒に遊ぼう。何をするか、今からよく考えておけよ？」
何するかなんて、もうとっくに考えてあります。
「フリスビーする」
「うん。わかった」
「ポケバイ乗る」
「うん」
「ゲームも」
「何のゲームだ？」
「オセロ」
「うん。・・・そうだ、そろそろチェスを教えてやろうか」
「うん！」
「いい子だ」
「うん・・・」
そう、シンはいい子。
ご主人様の邪魔は、しないのです。
「オヒル！オヒル！」
跳ね回るハロに背中をド突かれそうになって、寸前でぺたりと手で止めて。
ご主人様は、ほっと息をついて、アラームハロのスイッチを切りました。
自分で作っておいてなんだけど、これ、ちょっと危ない。
でも、ご主人様は眠り込んだり集中したりすると、なかなか『起きない』んだから、しょうかないのです。
さて、と。
ご主人様は、うーん、と、伸びをしました。
お仕事は順調です。
子わんこにゆっくりお昼を食べさせても、きっと夕方には終わるでしょう。
ご主人様はにっこりして、かたんとドアを開けました。
かたん。ずずーーっ。
ドアは、なんだか重たい手ごたえ。
何？
「？・・・・シン！」
ドアの向こうを覗き込むと、シンがあすランさんを抱っこして、ドアによっかかってぐうぐう寝こけちゃっていました。
「あ・・・」
ずっと、ここで待ってたのかな。
悪いこと、しちゃったな。
ご主人様は、シンを抱っこして、とんとんとん、と階段を下りました。
「・・・くぅ」
ご主人様の腕の中、やさしく揺すられて、シンは目が覚めてしまいます。
目が覚めたので、
「アスランさん、お仕事終わった？」
そう、きらきらお目々で聞きました。
「・・・いや。でも夕方には終わるよ。とりあえず昼食にしよう。イザークが何か作って行ってくれたから」
「うん！」
お仕事がまだ終わらないのは残念ですけれど、お昼は嬉しいのです。
「隊長、何作ってくれたの？」
「サンドイッチだ。あと、これ飲めっていうんだろうな」
冷蔵庫を開けたご主人様が、サンドイッチのお皿と、カップスープの袋の乗ったトレイを引っ張り出しました。
旦那様のサンドイッチーｖ
「中身は？」
「スモークサーモンとクリームチーズ・・・・こっちは野菜のマリネだな」
サーモンって。
「しゃけ！」
「野菜も食えよ」
カップスープの素にお湯を入れて、フーフーしてあげて。
「しょっぱいー」
「ああ、お湯足りなかったかな」
「熱いー」
「気をつけろよ・・・ほら」
ご主人様、シンをお膝に抱っこ。
抱っこでご飯は、お行儀が悪いって、旦那様に怒られちゃうんです。
でも、今日は見てないから大丈夫ｖ
ご主人様のお膝の上で、ご主人様がフーフーしてくれたスープを飲んで。
旦那様が作ってくれたサンドイッチ食べて。
シンはご満悦。
その上。
「邪魔しないって約束するなら、午後は仕事場の中で待ってるか？」
ご主人様の提案に、子わんこ大喜び！
「うんっ！」
男の約束だからね。
シンは、午後はいい子でお仕事をするご主人様を眺めていました。
ご主人様のお仕事部屋は、いろーんなものがいっぱいあって、凄くウズウズするんですけれど、今日は我慢ガマンです。
モビルスーツに乗って、シンたちに命令するご主人様も格好良かったけど、パソコンの中で、いっぱいの線とか数字をどんどん作っているご主人様も、すっごく格好良いのです。
やっぱり、シンのご主人様は凄いのです。
そうしているうちに、日が落ちてきました。
もう夕方です。
まだかな、まだかな。
シンは、ちょっとソワソワ。
まだかな。
シンがじーっと見ていると、ディスプレイに向かっていたご主人様が、小さく「よし」って呟きました。
それからかたんと立ち上がって、じーっと待ての子だったシンの前に、すとんと座り込みました。
「終わったぞ。食事に行こうか」
「わーい！」
シンは、抱えていたあすランさんごと、ご主人様に飛びつきました。
やったぁ！
ご主人様とハンバーグでおっきいケーキ！
「ケーキはイチゴだよ」
「クリームは白いやつか？」
「うん！ハンバーグはね、目玉焼き乗っかったやつ」
「おいしそうだな」
「アスランさんはロールキャベツ？」
「ああ。・・・ほら、着替えて来い」
「はーいｖ」
やっと、シンの『お休み』が始まりました。
お店に行くエアカーでは、シンは助手席に乗せてもらいました。ご主人様のお隣です。
前の席は、いっつもご主人様と旦那様の二人なので、助手席はすっごいトクベツなのです。
ハンバーグは美味しかったです。
イチゴのケーキは売り切れでしたけど、その代わりチョコレートのアイスケーキがありました。
1ホール頼んだけど、食べ切れなかったのでドライアイスで仕舞ってもらって、明日のおやつにすることにしました。明日の楽しみが、もうひとつ増えましたｖ
ゴキゲンのシンは、ゴキゲンなのでお風呂も大人しく入ります。
ご主人様と、いつまでも泡アワで遊んでも、旦那様に怒られません。
でも、シン、あぶくの出るアヒルさんを握ったまんま、ねむねむになっちゃって。
「ほら、じゃあ上がるぞ」
「うぅーぅ」
「お風呂は明日また入ればいいだろう？」
「うんんー」
お耳を押さえて、ざばーっと泡を流してもらって。
「ほら、ブルブルしろ」
ブルブルした濡れわんこは、ぽーんとベッドの上。
シンのベッドじゃなくって、ご主人様と旦那様のベッドの上。
広くって、ご主人様のいい匂い。
「わー」
「こら、拭く前に暴れるな」
タオルでごしごしする力加減は、実は、旦那様のが上手なの。
ご主人様は、ちょっと強くてたまにキュウってなっちゃうの。
でもでも、キュウっってなっちゃうちょっと前の、強ーいごしごしが、シンは好きなの。
だってそれが、シンのご主人様だもんね。
キュウ、は困るけど。
「よし。シン、パジャマ取って来い」
「このまんまでいい！」
「はだかんぼか・・・イザークには言うなよ。じゃあ、あすランさん取って来い」
「はーい」
とことことあすランさんを取ってくると、ご主人様はあったかい腕で、ふわんとシンを抱っこしてくれました。
ふんふんっってすると、ぜーんぶご主人様の匂い。
洗いたての、いい匂い。
いい匂いのご主人様、だーいすき。
「お休み、シン」
「おやうゃ、ぐぅ」
ぬくぬくの腕に包まれて、子わんこふわふわ夢の中。
ふくふく子わん子抱っこして、ご主人様も、夢の中。
明日は、いっぱい遊ぼうねｖ