いつか
ハメられた、と、早瀬は思った。
いや、ハメるのは俺であってそーじゃなくってソレは策略とかそういう意味でいや策略とかそんな立派なモンじゃなくってうわああああ！
「このくらいでいちいちパニックを起こすな」
スーツのジャケットを脱ぎ捨てて、ぐいと早瀬の肩を掴み倒した森次は、もう片方の手で乱暴にネクタイを外して、シーツの上へ放り出した。
そう言っている割には、早瀬のパニックは完全にスルーだ。
「あ、アンタが言うなよ！」
ようやっと言い返した口に、ニヤリと笑った唇が、がっふりとキスを仕掛けてきた。
たちまち舌を絡められ、持って行かれてたっぷり吸われる。
それこそ、食われそうな勢いで。
無遠慮な手のひらが下肢をまさぐって、硬くなったソコを、ズボンの上からいやらしく撫で回した。
今日遅くなったのは森次のせいだ。
アレを手伝え、コレを手伝えと言われて、コキ使われて。
文句言ったら悪かったななんて珍しく言ってきて、夕飯をおごってくれて。
帰るのが面倒になって、明日が土曜なのをいいことに、与えられた部屋に泊まっていこうとしたら、そのまま部屋に引きずりこまれて、これだ。
正直早瀬も期待していなかった訳ではないが、でももっとこう、雰囲気とか・・・を、この人に求める自分が悪いような気が、さすがに早瀬も、そろそろしてきては、いた。
「アンタ、これ狙って手伝わせただろ」
この人とのキスの後は、いまいち舌が回らない。
それでも頑張って意地を張れば、早瀬を見下ろした森次は。
「当たり前だ」
と一言で切って捨て、そのまま早瀬のベルトを外し、制服のズボンを引き摺り下ろしにかかった。
「わーっ！自分で脱ぐ！脱ぎますから、ってうわぁっ！」
抵抗空しく引きずり出されたソレは、キスのせいでもう天を突く勢いだった。
「フ・・・」
コレを見るたび、何故だか森次は少しだけ笑う。
何で笑うのか、早瀬は怖くて聞いたことがない。
そうして。
笑った薄い唇を、大きく開いて。
森次は、少年のソレをぱくんと咥えた。
「う・・・っ」
のっけから、遠慮会釈のないディープスロート。
そう思えば、口をすぼめてずるりと吐き出し、器用な指先で先端を弄りながら、根元にキスをくれたりもする。
ここでイくと、後で散々バカにされるから、早瀬もガマンするけれど。
「どうせ、お前は一度目が持たないんだ。入れてからだと面倒だ、さっさとイけ」
そういわれた口で、そのまま、また奥まで咥えられて。
「アンっ、タ、勝手過ぎ・・・っ」
言いながら、堪え切れずに吐き出したものを、森次は喉を鳴らして飲み込んだ。
なんであんなもの飲めるのか、早瀬にはどうしても、わからない。
「お前が早いのが悪い」
濡れた唇をぐいと拭ってそう返し、森次は、今度は自分のズボンを手早く下ろす。
それから、たっぷりと濡れた瞳で早瀬を見下ろし。
あからさまに意図的な仕草で、ジャケットのポケットから探り出した小さなボトルを開け、その中身を指にまとわりつかせた。
長い指にとろりと絡んだそれが、指の股にいったん溜まって更にあふれ、着たままだったシャツの袖口に消えたところを見計らうようにして。
森次は、それを自分の下肢へと持っていく。
「ふ・・・っ」
実際、何をしているか想像はできても、それは白い脚とシャツの裾に隠されて、早瀬の位置からは寝転がっていても見えない。
それでも、その隙間から時折見える手の動き。
くちゅくちゅと濡れた音、甘く漏らされる吐息。
濡れた瞳が伏せられると、もうそれだけでイヤラシくて。
「・・・手間がかからなくていいな」
「ほっといてください」
見ているだけで、早瀬のソレは、準備万端になっていた。
「まあいい」
そう呟いた森次は、そのまま入れてしまおうと、早瀬のモノに指を添え、位置を合わせだして。
敏感な先端を、濡れた肌で擦られて。もっと気持ちのいい場所に飲み込まれる予感に、ふるりと腰を震わせて。
それでも早瀬は男の意地で、相手の腰を両手で掴んだ。
「森次さん」
何だ？と、言葉ではなく、濡れた瞳が聞き返す。
そうしながらも、場所を定めてしまった腰は、早瀬を飲んでしまおうと、下ろされようとしていた。
「なんでそんなに焦ってるんですか」
やっとのことでそう聞くと、見下ろす瞳と赤みを増した唇が、彼の象徴たる月輪を思わせるように。
ゆるり、と、絶妙な円弧を描いて、わらった。
「フン」
ず、と、濡れた肉に飲み込まれる感触。
熱くてきつくて気持ちよくて、みっともなく喘いでしまわないように、早瀬は歯を食いしばった。
そんな早瀬を見下ろして、彼のものを飲み込みきった森次は、甘やかな吐息と共に、少年への答えを吐き出した。
「私を本気にさせた、お前が悪い」
答えになっているような、いないような。
しかし、森次らしい物言いと、その表情。
何より、食らいついたそのナカの感触に、早瀬はもう、たまらなくなって。
「ムチャクチャですよ、アンタ・・・っ」
絞り上げられ食らわれながら、それでも早瀬は一生懸命に、乗り上げた体を突き上げた。
腹の上で揺れるシャツをめくって彼のモノが勃っていることを確認し、そこに指を絡めると、きゅう、といっそう締められて、それからその手を引き剥がされて。
その手をシーツに押しつけられて、何かを言ってやるその前に。
「生意気、だ」
その声が先に落ちてきて、早瀬の動きなどおかまいなしに、滅茶苦茶に腰を振ってきた。
わーっ、わーっ、わーっ！
見上げれば、わずかに眇められた目はもういかにも気持ちよさそうで、とろんととろけているくせに。
早瀬と目が合ったとたん、それにまた怖いほどの微笑みを乗せ。
ぐうっと深く、早瀬自身を飲み込んだ。
絡みつき、絞り上げる熱い襞。
うわ、やばい。
イかされる。
なんとか堪えていた衝動に逆らい切れず、早瀬はそのまま、森次のナカにたっぷりと吐き出してしまっていた。
「二度目で、これか？」
荒い呼吸に混じって、くつくつと嗤う声が、濡れた唇から落ちてきて。
少年は歯を食いしばって心に決めた。
くっそ。
いつかこのヒト、ひーひー言わせてやる！
その、【いつか】が、いつくるのかは、全くぜんぜんわからないのだけれど。
とりあえず早瀬は、遠い【いつか】よりも、とにかく今このヒトを何とかするために、腰の動きを再開させた。
萎えずに済んでいた自分のソレに、とにかくものすごく、感謝した。