「んんんっ、やっ、は・・・ぁん」

口腔深く、くわえ込まれ、脚の間でとぐろを巻く、泰明の髪をかき回す。

「や、だ・・・め、また・・・・っ」

　幾度目かの遂情に、永泉は赤く染まった体をふるふるとふるわせた。

　口許を無造作に拭う泰明は、自分がどれほど、永泉を快楽に落とし込んでいるかがわかっていない。

ただ、触れていると心地よいのだといって、ひたすらに永泉の体を撫でまわす。

「あ・・・・」

再びさまよいだした指から、永泉は身をよじって逃れた。

今夜は、言わなければならないことがあるのだ。

「泰明殿・・・・」

きゅっ、と、きれいな髪を握り締めて。

「あの、・・・後ろも、してください・・・・」

「だめだ」

一度、思い込んだ泰明は、あきれるほど頑なだった。

「でも、泰明殿・・・・」

大好きな、張りつめた肌に身をすり寄せて、永泉は懇願する。

「泰明殿と、一緒になりたいのです・・・」

「だめだ」

それでも、永泉は食い下がる。

「でもっ、あの・・・あれは、私が下手だったせいで・・・上手にできれば、その、裂けるようなことは・・・・」

「・・・・・本当か？」

泰明とて、永泉の望みは叶えてやりたい。

こくこくと頷く永泉に、泰明は、是と答えてやるしかなかった。

 

 

香油に濡れた永泉のそこを、泰明の指が深く探っている。

膝が肩につくほど身を折られ、ぴくぴくと反応するところを執拗に弄られて、永泉は涙を散らせた。

「ん・・・っ、ねえ、もう・・・・・」

熱い粘膜、甘い声。思い出される、過ぎた夜の快楽。

すっかり熟したそこから指を引き抜き、泰明は慎重に自身をあてがう。

迎え入れる永泉は、肉の薄い肩にしがみついて、ささやいた。

やすあきどの、だいすき・・・・

「っ、・・・ああああああっ」

深く、深くまで侵されて、永泉は我を忘れた。

熱い人の内に、泰明は夢中になった。

ぐちゅぐちゅと、混ざり合って、身も心もひとつになる快感。

ただ、それだけがすべてだった。

 

 

 

 

 

「永泉、持っていろ」

泰明が差し出したのは、首飾りから外したらしい、月の色をした玉。

腰の抜けた永泉は、ただそれを両手で受け取って、いつかの朝のようなうつくしい笑顔を見せてくれた。

「ありがとうございます」

手に中に降りてきた、きれいな月。

小さな月を胸に抱く、うつくしい人。

手に入れたものの大きさ、その幸せを、ふたり寄り添って噛み締めていた。

 

 

それは、朔から三日目

闇の中から輝きだした月が、山の端で、ちいさくわらう夜だった。

 

 
終