Feeling ６
「永泉」
今夜も、泰明は元気だ。
なんというか、友人でも情人でも、もちろん恋人でもない彼は、最近覚えたいたずらを気に入ったらしく、以前よりも頻繁に永泉のもとを訪れるようになった。
まあ、いきなり陰陽寮や安部の屋敷に引きずり込まれるよりもましなのだけれど。
いつもいつも、いっぱい気持ちよくなって喘いでしまう自分を、泰明殿はどう思っているのだろう？
そう思うと、ちょっと心配。
「どうしたのだ？」
「あ、あの、なんでもないです」
自分がとっても淫らに思えて、恥ずかしくなった永泉は、泰明の胸に顔をうずめた。
「そうか」
言うと、泰明はいつものように永泉を小袖まで剥いて、撫で始める・・・と思ったのに！
「や・・・っ！やすあきどの・・・・・！？」
「何か間違えたか？」
「あ、あの、そうではなくて！」
いや、そうなのかもしれないけれど・・・・
「だって・・・っ、き、汚いです・・・っ」
泰明は、あろうことか永泉の脚の間、その更に奥の蕾に指をはわせているのだ！
「汚くはない。おまえは全部美しい」
「そういうことではっ・・・きゃ！」
つぷり、と、泰明の指をそこに差し込まれ、永泉は悲鳴をあげた。
何か、ぬらぬらとした感触が狭間をこぼれ落ち、その助けを借りてか、指は更に深くへと侵入っていってしまう。
その上、様子を確かめるように泰明はそこを覗き込む。いつもだって、恥ずかしいから小袖のままなのに、そんなことされたらぜんぜん意味がない。
「や・・・やめて、やめてくださいっ！」
思わずらしくない大声を出してしまい、はっとして泰明を見た。
泰明はいつもの無表情だけれど、永泉の目には、しゅーんとうなだれる仔犬のように見える。・・・目の錯覚だろうか？
「やはり、私に触れられるのは嫌なのか？」
「そ・・・そういう問題ではないのです・・・」
触られるのは嫌じゃない。・・・だって、こんなに気持ちがいいのに。
「ではどういう問題だ。何故、嫌がる」
ほんとのほんとに本気の泰明が聞く。
でもだってこんなこと。
泰明殿と私は・・・友人じゃないけど情人じゃないし。もちろん、恋人でもないのだし・・・
「答えろ、永泉」
恋人じゃ、ないけれど。
でも、でも・・・
「あの・・・私、恥ずかしいのが嫌なのです。決して、泰明殿に触れられるのが嫌なわけではないのです」
きゅっ、と、泰明の腕をつかんだ。硬くて強くて頼もしい、大好きな腕。
この腕に。
「泰明殿に触れられるのは・・・すき、です・・・」
何かがとても怖くて、泰明の顔は見られなかった。
でも、泰明がすこし笑ったのは、気配でわかる。
「そうか」
そうして、嬉しそうに手が伸びて。
また、あの恥ずかしいところに。
「―――っ！でも！それは、恥ずかしいのです・・・恥ずかしいのは・・・嫌・・・」
「どうしたら良いのだ」
永泉は、意を決して言った。
「灯りを・・・消して、ください・・・」
灯りを消した、部屋の中。
ふわり、と小袖を取られ、震える肌が、外気に曝される。
泰明が、息を飲むのがわかった。
永泉には、あたりは闇にしか見えないけれど、泰明には見えているのかもしれない。
そう思うと、恥ずかしい。
「や・・・泰明殿・・・？」
耐えられなくなって声をあげると、そうっと抱き寄せられた。
「おまえは・・・美しいな」
見えている。
「・・・っ！」
触れ合った肌が燃えるようだった。
恥ずかしいけど、恥ずかしいけど。
でも。
それさえも、気持ち良くって。
「あんっ・・・や、やすあきどのぉ」
脚を、抱えるように広げさせられて、再び、恥ずかしいところに泰明の指を感じて永泉は声を上げた。
それは、またずりずりと永泉の中に入ってきて、言いようのない感覚に陥れる。
それは、思わず暴れ出してしまいたいような、きゅうっと小さくなってしまいたいような。
すごくすごく、変な感じ。
でも、思わず泰明の体にすがりつくと、そのしっかりとした感触にほっとした。
大丈夫。
だって、泰明殿なんだから。
と、思っていると、
「あ、あああん」
指が当たると、思わず声が上がってしまうところを見つけられて、さらに指を二本に増やされて、いっそうぐちゃぐちゃにされてしまった。
その上、前をぱくんと咥えられて。
「ひゃ、あぅん」
ごくん、と飲まれてしまって。
「永泉・・・いいか？」
だってだって、たくさんいじられて、すごくすごく、敏感になってしまったそこに、熱い、熱いものをすり付けられたら・・・
「は、い・・・あ、あああっ、や・・・っ」
『や、』って言ってしまったのは、ものの弾み。なのに、
「・・・嫌なのか？」
そんな、はんぶん入っちゃってるようなとこで聞かないでくださいーーーーっ
もともと、そのためにあるわけではない場所は、いーっぱいに押し開かれてキチキチ痛むのだけど。永泉は、ううん、と、一生懸命首を横にふった。
「嫌じゃ、な・・・」
「そうか」
「んあ・・・」
ぎゅうっ、と、しがみついた体から声がすると、それはぴったりと抱き合って、半分つながった永泉の体に響く。
永泉は、それが、気持ちいいことに気がついてしまった。
だからそれからのこりはんぶんが入ってくると、いっそう高く声を上がってしまう。
「きゃ、ああああああああん」
ぐちゃぐちゃにされてしまった粘膜を、熱くて硬いものでこすられるのは、初めて感じる苦しさと背中あわせの心地よさ。
「気持ち良いか・・・？」
かすれた泰明の声に、知らず、腰を揺らめかせてしまっていたことに気づき、永泉は全身を固くした。・・・したら。
「んん・・・っ」
きゅうっ、と、自分の中の泰明を、もっと強く感じてしまって。しがみついた体から、もっともっと泰明を感じてしまって。
中も外も全部、泰明でいっぱいになってしまって。
「私も、気持ちがいい」
「うんっ・・・あ・・・」
泰明の、気持ちのいい言葉が、永泉をもっと気持ちよくしてしまう。
気持ちよくって、気持ち良くって。
もう、なにがなんだか・・・わからなくなって、しまった。
「はふぅ・・・」
いっぱいされて、挙句に後始末までされてしまって、まだ、ぽうっとしてしまっている永泉を、定位置のひざの上に乗せて、泰明はご満悦。
「永泉・・・」
髪に顔を突っ込むようにして、すりすりして。泰明は幸福そうに言った。
「もう一度、言ってくれ」
「なにを、ですか・・・」
頭の働いていない永泉は、かくん、と首をかしげる。
「好きだと。私に触れられることが、好きだと」
耳のそばで、やさしくささやかれて、ぽうっとしたままの永泉は、素直に答えた。
「・・・はい・・・、やすあきどの・・・好きです。泰明殿が、すき・・・」
泰明の動きが一瞬止まり、何か変だと永泉は顔をあげようとした。しかし、すぐにきゅうっと抱きしめられて、髪の中で心地よい声がしたので、変に思ったことなどどうでも良くなってしまった。
「・・・・・・・その方が良い。それを、もう一度だ」
「はい・・・泰明殿、泰明殿が、すきです・・・」
「もう一度」
「泰明殿、すき・・・・・。あの、やすあきどの・・・・？」
永泉の、甘えた声。
「なんだ」
やさしい声に、とろける笑顔が返る。
「やすあきどのは・・・・？」
そうして、もらった答えに満足した永泉は、その笑顔のまま眠りについた。
さて、このあと、夜が明け、明るくなってから。
顔の呪いが消えた泰明と、昨夜の行為を思い出しては、真っ赤になってわたわたする永泉とで、ちょっと大変なことになるのだけれど。
とりあえずは、めでたし、めでたし。