１．桐山


柔らかな黒髪を、わし掴みにして、枕に押しつける。
「っ、えい、じ。ゃ、め・・・・・っ」
無理矢理に振り返った玲二の瞳が、黒々と濡れてとってもキレイだ。
「ウソばっかり。すっごいキモチイイくせに」
ココ、すっごいキュウキュウしてるよ？と言ってやれば、ソコはまた、キュウと締まって。
英治を映した漆黒の瞳が切なげに細められ、それでも、閉じられることも、逸らされることもなかった。
セックスする時、玲二はいつも、英治の顔を見たがった。
そんな玲二をスゴく可愛いと思う英治は、しかし後ろからするのが大好きで。
だって、サ。
ぐ、と深くすれば、びくびく震える玲二のカラダ。
腰だけを、高く英治に差し出して。イヤがるクセに、従順に、感じて喘いで見せる玲二。
この姿勢の方が、この、大好きな幼なじみを支配していると、強く、強く感じることができるから。
黒い瞳が瞬いて、辛そうに細められても、閉じられることはない。
これが、赤く光るとき、玲二に敵う奴なんかいない。
いるとすれば、ボクくらいだ。
そんな玲二が、気持ちいいのを我慢しながら、一生懸命英治を見つめて。
英治の、一挙一動を伺いながら、時折腰を揺らめかせて。
英治が、ちゃんと気持ちいいか、確かめている。
その【事実】が、英治をより機嫌良くさせた。
「玲二は、サ」
「っ、あ・・・・っ」
上がる声が、キモチイイ。
「凄く、可愛いよね」
そう言った英治の唇を。
快楽に濡れた瞳で、森次は、ただ、じっと見ていた。

それが、あの雨の夜とは、また違ったかたちに歪むさまを。
ただ、じっと。

３．早瀬

森次さんは、スる時、顔を見るのがスキみたいだった。
黒々と濡れた瞳が、まっすぐに自分を映して。
時々、堪えきれないとでもいうかのように、切なげに細められる瞬間が、早瀬はとても、好きだった。

いつも、黒いスーツにぴっちりと隠されて。
時々いっそ、機械かなんかでできてるんじゃないかと思うようなこの人のカラダが、こんなにイヤラシイなんて、一体誰が思うだろう。
それを知っているのは、このカラダを抱いた人間だけ。
それが、そんなに少なくはないことを、早瀬も知っているのだけれど。
でも。

とろりと濡れた瞳が、早瀬を映して。
ねっとりと濡れた奥が、早瀬を締め付け。
そうして、赤く濡れた唇が。
「は、やせ・・・」
そう、呼んでくれるだけで、少年はもう、彼に夢中になってしまう。
「も、りつぐさん」
彼の与えてくれる快楽で、いっぱいになってしまう。
しかしそれは、森次も、同じ。

気持ちいいきもちいいキモチイイ。
内も外も、すべて、早瀬の熱でいっぱいになる。
その、快楽。
幾度か、瞳を瞬かせる。
ぼろりとこぼれた涙を擦るように拭い、ぺたり、と、頬を包んだ早瀬の手のひら。
真上から見下ろす、まっすぐな瞳。
「森次さん」
名を呼ぶ唇が、熱い吐息を吐いた後、真一文字に結ばれる。
・・・耐えられなかった。
「は、ぁ・・・・っ」
己の意志ではなく、跳ね上がってしまった脚を彼の腰にまとわりつかせ。
身をよじり、腕を上げ、すがりつくものを求め。
彼の背に、爪を立てながら、森次は目を閉じていた。

わかっている。
目を閉じても、わかっている。
あの目が、自分を射ていることが。
あの唇が。
ただ、口付けのためだけに、近づいていることが。
だから。
きつく閉じた眦に、少年の熱い唇が落とされて。
その、真摯な熱に。
彼は、ただ、ないた。