えすえむ？
ディアッカからの誕生日プレゼントを開けたイザークは、その場で頭を抱え、どうやって奴を抹殺してやろうかと思案を巡らせた。
それを後ろからのぞき込んでしまったアスランは。・・・しかし、それが何だか、わからなかった。
「何だ？それ」
誕生日パーティーだと言って勝手にやって来て、勝手に騒ぐ友人たちを、やっとのことで追い返した夜。
やっと愛妻と二人きりになってほっとしたのもつかの間、その愛妻に、プレゼント開けろよと言われて、開けてしまったのがまずかった。
古書ら民芸品やら皿やら調理器具やら。
そんなものに混じって、どうやら親友という位置づけになるらしい男の寄越したものは。
「ああそうか、首輪とハーネスか。シンのにしては大きいから、レイのかな？」
「シャレにならんからやめろ」
いっそう頭を抱えてしまった旦那の肩越しに、のんきにプレゼントの箱をのぞき込むアスラン。
「だって」
そうだろ？と傾げられるその首に、手元の首輪をかける様を思い描き・・・イザークはふるふると首を振った。
俺は、断じて俺はそういう趣味はないはずだ！
「でも、レイに黒はどうだろうなぁ。それとも、こういう大人っぽいのが欲しい年頃かなぁ」
相変わらずわかっていないアスランに、業を煮やしたイザークは、それを掴んだままで目の前に突きつけた。
少しは思い知れ、この鈍感。
「お前だ、お前」
「は？俺？」
キョトンと見開く緑の瞳。
柔らかく揺れる藍の髪。
白磁よりも、柔らかい色合いのその首に。
この黒は似合い過ぎだぞあのバカ趣味だけはいいんだ腹立たしいことに！
親友に趣味の良さと悪さを、イザークが心中ひとしきり罵り終わった頃合いで。
「ああ！そういうのかこれ！」
やっとわかったらしいアスランが、ぽんと手を叩いて頷いた。
「わー、本皮だ。高かったんじゃないかな。愛されてるなぁ、お前」
いや、本当にわかってるのか？
どうなんだ。
「・・・使ってみるか？」
だから、そう言ったのは、わかっているかどうか確かめたかっただけなんだ。
イザークは後で、そう自己弁解した。
「なんだ、お前もやっぱり好きなんだな、こういうの」
だって、そんな答えが返ってくるなんて、思ってもみなかったのだから。
「男って、みんなそうなのかなぁ」
自分だってその端くれだろうがと、言おうとしてイザークはやめた。
たぶん、絶対。
意味のないハナシだと、気がついたからだった。
顎をつまんで上げさせて、まず、首輪をつけてやる。
幾度も喧嘩をしている身としては、こうして急所を晒されているだけでも、ぞくりと快感が走ってしまう。
次に、手首。
薄く血管の浮いたその内側は、ひどく感じやすいことを知っている。
両手首を金属のフックで繋げるようになっていたので、そのまま後ろ手にしてしまう。
それから。
「足首にしては、太いな・・・」
足輪にしては幅も周囲もありすぎる、残った一対の輪を手にして、イザークが首を傾げると。
「それ、腿か膝下だろ。そっちの部品は、繋げると棒になるんじゃないか？」
「・・・・・」
何で知ってる、何で。
初めは何だかすらわかっていなかったくせに！
イザークは頭を抱えかけたが、気を取り直して、目の前の諸々を繋ぐ設計図を頭に描いた。
そうか、これを膝付近に付けて、間に棒を差し込む、と。
膝が、閉じられなくなるのだ。
「マニアックだなぁ、ディアッカ。普通、ここまで付いてないぞ」
「どこの普通だ、それは」
言いながら、ヌンチャク状の部品を、繋げて棒に仕立て直していたイザークは、ふいとそれを放り出して立ち上がった。
「おい、ここまでやって放置か！？」
お前もたいがいマニアックだぞ！と、よくわからない罵倒を受けて、イザークはしぶしぶ振り返る。
「馬鹿者、こんなチャチな棒、お前すぐへし折るだろうが」
そうして、まだ残っている諸々の部品類の中から、特に丈夫そうな鎖とフックを取り出して、それらを幾度か引いて強度を確かめた。
「つい、うっかり」で引きちぎられて、破片で怪我でもしたら笑い話にもならないが、まあ、これなら大丈夫だろう。
そう判断してから、両足をそれぞれ、ベッドの頭と足の柱に繋いでしまう。
これで、棒がなくても脚が・・・・
「さすが、イザークだなぁ」
誉められても嬉しくない。
しかも、こんな格好のアスランに、だ。
いや。
しかし。
なんというか。
「似合うな、キサマ」
白い首に、黒い首輪。
後ろ手にシーツを掴み、やはり黒い皮の輪を、白い腿に食い込ませ、それを大きく開かされて・・・
「誉めてるのか？それ」
恥ずかしい場所をすべて晒したまま、へこりと首を傾げる姿。
相手が慣れた自分だからか、恥ずかしがる様子が欠片もないのがいまいちだが（何がいまいち？）それでもその卑猥な拘束具は、アスランの肌によく映えていた。
「・・・どうだかな」
誉めたのか俺は？
どうなんだ。
自分でもよくわからなくなったイザークに、不自由な膝をゆらゆらと揺らし、アスランは無邪気に口を開いた。
「議長には、よくこういうのが似合うって誉められたけどな」
やっぱりアイツか。
さらりと吐かれた【犯人】の名に、ため息をついたイザークは。
まあいいと気を取り直して、ベッドにぺたりと付かれた腰を引き寄せて。
ころりと寝ころぶ形になってしまったアスランは、それが自由にならないと確認するように、背中の下敷きになった腕と、膝とをもぞもぞと動かしてから。
「・・・変態」
既に潤み始めた緑の瞳で、とろりとイザークを睨んで見せた。
「誰がだ？」
すかさず言い返したイザークは、まだ何もされていないはずなのに、ゆるりと立ち上がり始めた足の間を指先で弾く。
「だっ・・・・て」
ここまでされれば、さすがに恥ずかしくなるのだろう。
頬を染めたアスランは、じたじたと膝を動かした。
ぎい、ぎい、と、鎖と、それに繋がれた柱が鳴る。
「こんな風にされたら、感じるに決まってるだろ！」
・・・ああ、知ってるとも。コイツはやたらとＭっ気がありやがるんだ。
「それを変態とは言わんのか」
「言うわけないだろ！」
自覚はカケラもないんだがな。
「なら、縛り上げられて股を無理矢理開かされて、突っ込んでくれと言わんばかりにひくひくしてやがる穴と、弄ってほしくて仕方ないコイツを見られて感じるのが、普通だと」
「うぅ・・・・」
さすがに分が悪いと思ったのだろう。
小さくうなったアスランは、ふいと潤んだ瞳を反らした。
もうこうなったらこちらのものだ。
イザークは、手触りの良い内腿をさらりと撫でながら、卑猥にうごめくその場所に、手を伸ばした。
四本の指で内腿を支えるようにしながら、入り口のあたりを親指の腹で擦り、ひく、と震えたところで、爪の先に変えてつつく。
「やっ・・・・」
もどかしい刺激に腰をよじると、弾みで指先が内にめりこんだ。
「んー・・・っ」
「そんなに咥えたいのか」
すぐに引けば、追うように突き出される腰。
それをわし掴むと、心地よい弾力に指先が痺れた。
「焦らすな、よ」
「そうか」
「ぅやっ！」
素っ頓狂な声を上げ、アスランが背筋を反らしてそこを食い締めた。
イザークが、人差し指を根本まで押し込んだのだ。
きゅう、と絞った後は、一生懸命にくるみ込み、感じようとする貪欲な襞。
それを笑って、すぐに引き出して。
「ひゃ、ぅっ！」
「もう少し、長い方がいいだろう」
今度は、中指を押し込んでやる。
幾度か抜き差ししてやれば、開かされた腿がふるふると震え、引かれた金具がギイギイ鳴った。
「ああ、太い方がいいんだったな」
そうして、今度は親指を。
手のひらが尻にぺったりとつくほどに押し込んで、残った４指でそこを揉みしだきながら、中の指はぐいぐいと乱暴に中を押し揉むように擦りたてる。
「うー、や、あっ。そこっ！」
腰を振り、不自由な肢体をじたじたとうごめかせながら、アスランは、すっかり潤みきった瞳でイザークを見上げた。
「もっ・・・と」
「ここか？」
「あんっ！」
アスランの、どこが感じやすいかなど、とうに、全部知っている。
親指でも十分届く、入り口の内側をぐいぐいと押してやれば、アスランは、びっくん、と、腰を跳ねさせて。
それで。
「もっと、って、言ってるだろ・・・っ」
がしゃがしゃと鎖を鳴らしながら。
ほの赤く染まった肌に、黒い皮を食い込ませながら。
それでも偉そうに言い放つ美貌の主は、どうしようもなくなまめかしく。
「フン、そっちか」
それでも、余裕のなさを悟られないようにと、イザークは声を低くした。
「せっかくその格好なんだ、もっとしおらしくおねだりせんか」
「誰がするか！」
「なら、しばらくそうしていろ」
引き留めるように締め付ける場所から、ずる、と指を引き抜く。
熱い中で温まったそれが、ひやりと冷えた。
「このバカ！変態！！」
アスランの声が、ひっくり返っている。
がっちゃがっちゃと鎖が鳴って、ムードもへったくれもないが、これはこれで楽しい。
「キサマだろうが、それは」
「エロ魔神！」
「どこで覚えてくるんだ、そういうのは」
「サディスト!」
「どちらかと言えばな。で、ココはこのままでいいんだな？それともまた指だけ入れておくか？」
ゆるりとそこを撫でてやれば、そこは物欲しげにひくりひくとりうごめいた。
「指じゃなくて、お前のそれ入れろって言ってるだろ！」
本当に。
この格好で、状況で、どうしてここまで偉そうなのか。
「聞けんな」
「ばかあっ！」
「で？」
指先を少し潜り込ませ、引き抜いては、また、少しだけ入れて。
それを幾度か繰り返すと、アスランの声に泣き声が混じり始めた。
「う、ぅ・・・っ」
欲に濡れきった緑の瞳が、悔しげに幾度か瞬いて。
それでも、逸らされることなくイザークを見上げたまま。
「入れてくれ、よ・・・・・・」
しおらしい、とはまた違うが、これはこれで可愛らしいおねだりに、イザークはニヤリと笑って頷いた。
「ギリギリ合格、ということにしておいてやる」
これ以上虐めても、泣いて暴れるのが関の山だろう。
そう思ったイザークは、暴れているうちにずり上がった体を引き戻し、脚を抱え上げるとアスランの待ちかねていたものをあてがった。
「ちょっ、これ外っ・・・！」
慌てたのはアスランだ。まさか、このままされるとは思ってなかったのだろう。
「せっかくなんだ、キサマも楽しめ」
イザークは端からそのつもりだ。
じらされて食いつきの良いそこへ、一気に自分を沈め込む。
「やっ・・・ってあ、うわ、や、あ、ああああああぁん！」
もとから欲しがっていたアスランだ。
入れて動いてもらえばもう、ただただ、泣いて喘ぐばかりで。
不自由な体いっぱいに、快楽を示してなくアスランに、イザークが夢中にならないわけがなく。
その夜は遅くまで、高い喘ぎ声と、鎖のきしむ音が、聞こえ続けていた。
翌朝。
正直まあ、ちょっと殴り合いになるくらいは覚悟していたイザークは、その肌あちこちに、昨夜の跡を艶めかしく残したままのアスランに。
「えっと・・・・ちょっと、ヨかったなって」
またしてやってもいいぞ？と、可愛らしく笑われて、それはそれでどうなんだと頭を抱え。
そうして。
「隊長、鎖の音は高くて、俺たちの耳にはよく聞こえてしまいます。シンが目を覚ますので、するのなら他のものに変えてください」
友人の預かり子にはそう言れ、更に、頭を抱えたという。