エロいんです。バカなんです。
椎名は時々、なんかすんごいエロい、とてつしは思う。
「そういう目で見てるからだろ」
今も、ケチャップだけで味をつけたスパゲティをかき込む口元が、なんだかすんごいエロかったのでそう言うと、椎名はちらりとてつしを睨んでそう答え、それからごくごくと麦茶を飲み干した。
「だって、なあ」
味付けはケチャップだけなのに、具材はタマネギにマッシュルームにニンニク、ベーコンにソーセージと多彩なので、結構美味しく食べられる。
地獄堂での、いつもの昼食風景だ。
「なあ」
横で、ふぐふぐと口一杯に入れてしまったスパゲティを飲み込んだリョーチンに同意を求めると、真っ赤になった口のまま、「んー」、と首を傾げて。
「蒼ちゃんほどじゃないかな」
そう答えて、またスパゲティを頬張りだした。
「ノロケてんじゃねぇや」
皿に残ったベーコンやタマネギをかき集めつつ、てつしがぶつくさと呟く。
「先にノロケたの、てっちゃんだろ」
「俺はジジツをだなー」
自分の皿を平らげて、てつしは唯一手つかずだった、ていうかいつも手がつかないオヤジの分の皿に手を伸ばした。
「オヤジィ、ホントに食わないのか？」
「いらんと言っとるだろうが」
こちらを向きもしないオヤジにああそうかよと答え、てつしは少し冷めたスパゲティに自分のフォークをつっこんだ。
「あ！てっちゃんズルイ！」
「・・・作り甲斐がない」
リョーチンが慌てて、椎名はぼそりと呟いた。
「だいたい、蒼龍のオッサンのドコがエロいんだよ」
他人の分まで食べ始めたてつしに、半泣きのリョーチンが抗議する。
「蒼ちゃんはエロいよ！」
「リョーチン、それ誉め言葉じゃないし」
皿を片づけようと立ち上がった椎名がため息をついた。
ていうかもう、この会話はやめて欲しい。
「「だってさあ」」
ハモったバカ二人にうんざりとした椎名は、冷たい目をして二人を見下ろした。
「そういう目で、見てるからだろ」
その視線に、バカ二人は固まった。
しかし、背後で「ヒヒヒ」と起こった笑い声に、一人赤くなったのは結局椎名で。
ものすごく理不尽だと、無表情に憤慨した。
「ホント、エッロイよな」
「何、を・・・」
大きく開かせた足の間、まだ幼さを残す性器を晒して。
そうしてその奥までを、てつしに差し出して。
くちゅくちゅと音を立てて弄られて、ときおりびくびくと体を跳ねさせているさまは、語彙の少ないてつしには、エロいとしか言いようがない。
「何って、こことかさ」
ぐ、と、指を奥まで入れ込めば、びく、と椎名の脚がひきつった。
てつしの指をたっぷりと包み込む、あったかいナカもエロければ、自分で膝を持って脚を開いている、その眺めまで全部エロい。
「・・・・っ！」
椎名も、そのあたりのことはわかっているのだろう。
上気した頬を更に赤くして、ふい、と顔ごと視線を逸らす。
それでも、開いた脚を支える手はそのままだし。
横を向いたせいで晒された首筋は、やはり赤らんでてつしを誘った。
ああもう、どうにかしちまいてえ。
誘われるままに、首筋に唇を寄せると、そこはもう、しっとりとした汗に濡れていた。
ぺろりと舐めて、ふるふると震えるさまを楽しんだ後、そこにがりりと噛みつくと、椎名は高い声を上げて身を跳ねさせた。
「やっ！」
さっきからいじり倒しているせいで、とろけ始めているそこまできゅうと締めて。
明らかに痛みだけではない反応を返してしまった椎名は、とろとろに潤んだ瞳でてつしを睨んだ。
「てっちゃん！」
そんな顔、可愛いだけで、ちっとも怖くなんかない。
「悪ぃ」
悪びれずにそう言って、にいっと笑ったてつしの瞳から目をそらし、椎名はひとつ、熱い吐息をついた。
こんな時、椎名はどうしてもてつしにかなわない。
そんなことは、もう、とうにわかっているから。
「てっちゃん、もう、いいから」
恥ずかしさを押し殺し、やっとのことでそう言ったというのに、てつしはあっさりとそれを退けた。
「よくねえだろ」
そう低く囁かれて、椎名はふるると背筋を震わせた。
正直。
こういう時のてつしの声は、椎名の豊富な語彙を持ってしても、【エロい】という表現が一番しっくりくる。
「まだちっと硬ぇし。このまんま入れたら痛ぇだろ」
ぐ、と、また指を深くされた。
まだ早いことくらい、椎名自身にもよくわかっている。
それでも。
くちくちと絶えずいじられ続けている、そこがどうしようもなく熱くてもどかしい。
早く、とどめを刺して欲しい。
「平気・・・だって」
脚を支えていた片手を離し、椎名はてつしの腕を掴んだ。
そうしてそこから撫で上げるように、てつしの首に手を掛け、引き寄せる。
見上げる瞳は、とろりと潤んで濡れた黒。
赤い唇が、ちいさくてつしの名を呼んだ。
「てっちゃん」
それは、恐らく無意識だろう。
しかし、まだ幼い少年に、その媚態は毒過ぎた。
「この、バ・・・ッカ！」
てつしは乱暴に指を抜き出し、椎名の抱えていた脚を、よりいっそう押し開いた。
椎名が両手でてつしの首にしがみついてきて、その体温をいっぱいに感じながら、そこへ自分のものを押し当てる。
ずく、と、いつもより硬いそこに無理矢理に押し入ると、椎名の体がびくりと強ばった。
「・・・・・っ！」
そこも、ぎゅうぎゅうとてつしを食い締めて、気持ちいいっていうか、痛いっていうか、気持ちいいっていうか。
すっげえ、気持ちいい。
「椎名、締め過ぎ」
それでもやっと声を出す。
震える脚を一緒にさすると、ひくりと跳ねた踵が、てつしの腰に絡みついた。
「わ・・・かってる」
目を伏せて喉を震わせて、は、は、と意識して呼吸している様子で、力を抜こうとしているのはよくわかるのだが。
その様子がまたエロいものだから、てつしにはもう、たまらない。
まだ硬いそこに、無理矢理奥まで入れ切って、びくりと震えた椎名が息をつく間もなく思い切り引き出す。
「あ・・・っ！」
苦痛すれすれの充足感を、ほんの一瞬で奪われて、椎名は思わず大きく喘いだ。
ここは椎名の部屋だから、てつしの家よりも防音はしっかりしているとはいえ、自室に響いたその声は、経験の浅い少年を、いたたまれなくさせるには十分だった。
「・・・悪ぃ」
しかも、てつしはそう呟いて、また深々と椎名を突き刺して、引き抜いた。
「あ、あ、あああっ！」
そのまま、単調なリズムで擦られると、上限いっぱいだと思っていた性感が、どんどん高まっていくのがよくわかった。
もう、声などかまっていられない。
まだ幼いてつしの、まだ細くて、それでも力強い背中。
椎名はそこにしがみついて、与えられる快感を、もうただ耐えるしかない。
「やっ、あっ、あ、てっ、ちゃ・・・あん！」
ぐちゅぐちゅと、自分の中がいやらしくてつしにかき混ぜられて、そのたびに、恥ずかしい声が上がって響く。
その上、てつしは椎名の耳元に唇を寄せて、どうしようもなくエロい声で囁くのだ。
「中、出すぜ」
「・・・・・っ！」
いつだってそうしているのだから、わざわざそう宣言するのは卑怯だ。
そんなことを言われたら、椎名はその予感だけでイってしまいそうになる。
そうして、宣言どおりに中を熱いもので濡らされて。
椎名も、てつしの手に包まれて、導かれるままに吐き出す。
「っ、は、あ・・・・」
体の中にてつしのものを感じながら、てつしに抱かれての充足に、大きく息をつく椎名の、艶を増して濡れた唇。
赤らんだ目元と、伏せられた睫に絡んだ涙。
頬に張り付いた髪の黒さが、肌の色味を際だたせて。
くったりと力を失った体は、ぜんぶ、てつしに預けられたまま、無防備にすべてを晒している。
やべえ、と、てつしは思った。
弛緩していた椎名の体が、びくん、と跳ねた。
「え、待っ、て。・・・てっちゃ、まだ」
「すまねえ、ガマンできねえ」
２回目に突入するのはやぶさかでないが、少し休まないと正直しんどい。
そう思って慌てててつしを止めようとした椎名だったが、力を取り戻したてつしのもので、再び奥を攻められて。
余韻の醒めきらない体は、まったく自分の言うとおりにならず、むしろてつしに従順だった。
立て続けの蹂躙に喘ぎながら、それでも椎名は必死になって、黒々と濡れた瞳でてつしを睨んだ。
最後には、結局てつしの好きにさせるにしても、ここで勝手を許してしまったら、後が大変なのは目に見えている。
「て・・・っちゃんの、バ、カ・・・・ぁっ」
しかし、それはまったく逆効果だった。
「・・・・っ、この、バカ」
低く唸ったてつしの声に、椎名の体はぞくんと震えた。
まずい、と思う思考は、たちまち下肢を穿つ快楽に浚われた。
後はもう、結局てつしの好きなようになるのだ。
そんなことはわかっていても。
「バ・・・カ・・・・ぁ」
そう、言わずにはいられない椎名だった。
「待てって言っただろ！日本語もわかんねえのかどこまでバカなんだてっちゃん！」
「あんなエロい声でバカとか言われたら余計勃っちまうに決まってんだろ！」
「知るかそんなの！」
帰ったとたんに、ばったんばったん暴れるガキ二匹に遭遇した美麗母ちゃんは、しかしそのケンカの内容までは関知せず。
「てっちゃんの方がよっぽどエロいじゃないか！」
賢い息子のバカな叫びも、「元気ねえ」とあっさり流してくれたのだった。