Double Play
学ランに続いて白いシャツをはだけさせると、シャツよりも、柔らかな白を持つ胸が現れる。
女のような膨らみのないそれが、しかしヒノミヤをひどく興奮させた。
コイツに会うまでは、まさか自分が男の体に欲情するとは思わなかった。
平らな胸の真ん中の、穿たれた傷跡に舌を這わせる。
「んっ・・・」
かすかな喘ぎにたまらなくなり、もつれる指でベルトを外し、黒いズボンを下着ごと引きずり下ろす。
きれいな脚だ、とヒノミヤは思った。
ヒノミヤをよくプールに蹴り落とすそれは、しなやかで強く、そうして、どうしようもなく艶やかだった。
「急ぎすぎだぞ」
「しょうがねえだろ」
いつものやりとりの後、ヒノミヤが兵部に口付け、黙らせたときだった。
コンコン
部屋のドアがノックされる。
「少佐、ちょっとよろしいですか」
兵部の腹心の声が、厚いドア越しに聞こえた。
よくねえよ。
思ったヒノミヤの頭を引き剥がし。
しかし兵部は、ひどく軽い口調でいらえた。
「いいよ」
「ば・・・っ！」
馬鹿、と言いそうになったヒノミヤの額に、兵部の踵がブチ当たった。
片足だけを大きく上げているものだから、脚の間が丸見えになり、ヒノミヤの頭に血が上る。
しかし。
「失礼します」
丁度、ヒノミヤの真正面にあったドアから、少し・・・だいぶ苦手とする幹部の髭面が覗いて、いったん上がった血が、さーっと音を立てて下がっていく。
「少佐・・・」
その光景に、真木はひとつ、ため息を付いた。
ソファの肘掛けに首を乗せて、逆さまに自分を見上げる主は、むき出しの脚を、信用ならない新入りの額にぶつけている。
あわあわと慌てているその新入りは、上半身が裸だった。
「取り込み中なら、そう言ってください」
真木だって、主の情事を邪魔したい訳ではない。
なんで俺を招き入れるんですか。
「だっておまえ、今ダメって言ったら明日の朝来るだろ」
しかし、兵部はヒノミヤの額に踵を置いたまま、それをゆらゆらと揺らして暢気に答えた。
ヒノミヤの目が、その脚の間と真木の顔とを行き来している。
気持ちは分かるが、その脚を下ろさせろヒノミヤ。
「コレだから、明日は寝坊がしたいんだ。今片づけた方がいい」
「・・・そうですか」
説教の一つでもしてやりたい状況だが、仕事をしようとはしてくれているのだ。
もういろいろと諦めている真木は、つかつかと兵部に歩み寄ると、まず上がっていた足首を掴み、ソファから落ちていたもう片方と揃えるようにして下ろした。
見えなくなった絶景に、惜しいようなほっとしたようなヒノミヤを無視して、真木はソファに寝ころんだままの兵部にいくつかの報告をし、それから明日あるらしい取引に、兵部が顔を出すか否かで揉め始めた。
「だから、明日は寝坊するって」
「取引は夜です。問題ありません」
そうして終いには兵部が折れ、ヒノミヤは密かに驚嘆した。
真木さんすげえ。
兵部が、したいことしかしない人間なのは、ほんの少し付き合っただけでわかるのだ。
その兵部に、「仕方ない」とか言わせたぞこの人。
トップがコレの組織を回しているのだから、ただ者であるはずがないのだが、それにしても真木さんすげえ。
「では、失礼します」
ヒノミヤの尊敬の眼差しと、兵部の恨みがましげな目を無視したまま真木が一礼する。
そのとたん、兵部の指が鳴り、真木の手から持っていた書類が消えた。
「丁度いいや、お前も混ざれよ」
「遠慮します！」
打って変わって楽しそうな兵部に、即答した真木は不自然な姿勢で固まった。
兵部のサイコキネシスだ。
「何だよ、さっきは僕が折れてやっただろ、今度はお前が言うこと聞けよ」
もっともらしいことを言う兵部に、真木が間髪入れずに言い返す。
「あんた本当に来るとは限らないじゃないですか！」
「そりゃそうだけど」
うわぁ、ひでえ。
呆れるヒノミヤなどまるでそこにいないかのように、子供じみた言い争いを続ける犯罪組織のトップとナンバー２。
ていうか。
「俺の意見は聞かねえのかよ」
「うるさい」
ヒノミヤの声を一刀両断して、兵部はすぐさま真木に向き直る。
いや、まあ。
立場上しょうがないんだろうけど・・・
「その服みんな、お前の部屋にテレポートさせてやろうか？」
「勘弁してください・・・」
がっくりとうなだれた真木の様子に、勝ちを確信して兵部は真木を押さえつけていた力を外した。
それから。
「何だい？もしかして妬いてんのお前？」
なんとなくしょんぼりしていたヒノミヤを振り返り、兵部は小首を傾げて見せる。
わかりやすくあざとい仕草だが、本人がわかってやっているだけあって、それはどうしようもなく男心をそそった。
「妬いてるっつーか」
自分で言って、ああそうか俺はこの二人の遠慮のない仲に妬いていたのかと気づかされて。
しかし認めるのも気に食わなくて、代わりに呆れ返った声を出した。
「おまえら、いつもこんなことしてんのかよ」
「たまにね」
「最近はなかったんだがな」
どうやら観念したらしい真木が、上着を脱ぎながらこちらに歩み寄る。
ホントに混ざる気か、と、身構えたヒノミヤにその上着がぶつけられて、兵部が「おっとなげねー」とお前にだけは言われたくないと、真木もヒノミヤも思うセリフを吐いた。
視界を覆う上着を取れば、真木はもう、ソファに座り込んだ兵部に口付けていた。
この二人がこういう仲だと薄々は知っていたけれど、目の前で見るとやっぱり妬ける。
だって、兵部の表情がさ。
俺としてるときと、なんか違って、こう・・・
「ぼんやりするな、駄犬」
そんなことを思っていると、げしげしと踵で腹を蹴られた。
そんなに力は入っていないが、地味に痛い。
「下は任せた」
こちらを見ずに言った真木の手は、兵部の胸の先の、赤く色づいたところをいじっている。
「へいへい」
つーか、任せちまうんだ。
腹に当たっていた足を手にとって、ちゅ、と踝にキスしながらヒノミヤは思う。
俺でさえ妬いてんのに、コイツ一体どうなってんだよ。
「んっ・・・っ」
そう思ったところで、兵部の喉から喘ぎが漏れた。
ヒノミヤのささやかな愛撫のせいじゃない。
喉にかかったその喘ぎは、キスの合間に思わず漏れた、といった風情で。
キスと胸だけで、そんな声を出させてしまうほど、真木は兵部を責め立てているらしい。
平気な、ワケないよな。
ヒノミヤはなんだか安心した。
この、無口で無愛想な男も、やっぱ妬いたりするんだ。
なら、もっと妬かせてやりたい。
兵部は、俺が、気持ちよくさせてやりたい。
そう思って、感じやすいことを知っている、内腿の柔らかいところに口付ける。
そのままべろりと舐め上げれば、ゆるり、と兵部の腰が浮いた。
気を良くして、脚の間の際どいところを、舌を使って愛撫する。
手のひらで、尻を掴んで揉み込めば、開かれた脚がヒノミヤの体を挟み込み、きゅうきゅうと気持ちの良い力で締め付けた。
それでも、時折ひくり、ひくりとヒノミヤの愛撫とは関係なく兵部の体が跳ねては戻り、艶やかな声が「あ、あん」と上がって触れた肌がふるふると震える。
ちらりと目を上げれば、真木の頭が兵部の胸に伏せられていた。
胸の先と、傷跡とを交互に舐めてやれば、兵部の体はたちまち溶けていくのは、ヒノミヤだって知っている。
負けたくなくて、たっぷりと舐めたそこに、唾液を落として指を差し込む。
「や・・・っ」
たっぷりと舐め解してやっていたとはいえ、本来受け入れる場所ではない入り口は、きゅうきゅうとヒノミヤの指を締め付けて。しかし内側はまるで歓待するように柔らかく受け止めてくる。
そのギャップがたまらずに、柔らかな襞を指先で散々突いてまわってやれば、兵部の体がずり上がり、鼻にかかった甘やかな声が上がった。
「あ・・・待っ、やっ、いっ・・・ンっ」
いく、とか、いきそう、とか言いたそうな声音だったが、それは真木のキスに封じられたらしい。
くちゅくちゅと羨ましい音が続き、ムカついたヒノミヤが指を二本に増やすと、んんっ、と喉の鳴る音が、触れている体から響いた。
さらりとして冷たいくらいだった兵部の肌は、男二人に嬲られて、しっとりとした熱を持って震えている。
ヒノミヤの体を挟んだ脚が、不意に跳ねてシーツを蹴った。
たまんねえ、と思ったところで、びく、と兵部の体が一際跳ねて、突っ込んだ指がヒノミヤにも思わぬところに突き当たった。
「っ、あン！」
丁度、真木のキスも外れていたらしい。
なんて声出しやがる、とヒノミヤが思わず唇を舐めたところで、不意に真木がこちらを振り返った。
「前を押さえてやれ、ヒノミヤ」
「押さえ・・・って」
言われた言葉を反復し、それから兵部の『前』を見る。
それは、すっかり立ち上がり、先端に透明な液体を滲ませていた。
ええと、それってされると苦しいんじゃ・・・
恐る恐る兵部の表情を伺うと、赤く色づいた口元を、どちらのものかわからない唾液でたっぷりと濡らし、しどけなく開いたそれを、ふ、と笑ませてくるものだから。
ああ、いいんですね、とヒノミヤは、突っ込んでいない方の指でもって輪を作り、兵部のものの根本を軽く戒めた。
ふるふると震えていたそれがひくんと跳ねて、しかし兵部は眉を寄せてゆるゆると腰を揺らした。
「も・・・ちょ、強く・・・それじゃ、出ちまう・・・・」
なんてこと、言いやがる。
思いながらも望み通り、押さえる指の輪を狭めてやれば、うんっ、といやらしく喉が鳴り、くちゅり、と生々しいキスの音が再開された。
ヒノミヤが手を離した片足は真木が掴んで開かれて、もう片方は、兵部が自分で抱え上げている。
エロい眺めだなーと思いながら、それでもヒノミヤが一番エロいと思う場所を、せっせと指で拓いていく。
兵部のそこは、少しの愛撫であっという間に男を受け入れるための性器に変わる。
女だって、もっと手が掛かるのがいるくらいだ。
「も、いいか？」
聞けば、しつこくキスをしていた真木の頭を押し退けて、どこか舌っ足らずな声で兵部が答えた。
「真木、様子見て」
「はい」
「はい？」
様子？
ヒノミヤが首を傾げると、真木の手が、ヒノミヤの方へ伸びてきた。
何だよ、と聞き返す間もなく、その手はヒノミヤが指を突っ込んでいる、兵部のそこへと触れて。
「んっ・・・」
兵部の体温に馴染んでいた指に、別の男のそれが触れ、そうして狭いその中へ、するりと一緒に入っていく。
なんとなく負けたくなくて、真木の指とは反対の方へ指を曲げれば、兵部の腰がゆるりと揺れた。
「ん・・・っ」
二人の男に指を差し込まれ、二人共に犯される期待に、兵部の体がふるりと震える。
うわー、やべえぞこれ。
くらくらしている若者には見向きもせずに、真木は事務的な声を出した。
「まだ少し、きついようですが」
「じゃあもういいや」
おいおい、会話噛み合ってねえぞ。
「少佐・・・」
真木も同じことを思ったのだろう。
盛大なため息が漏れて、しかし、入っていた指はぬるりと引いていった。
それと一緒にヒノミヤも指を引き抜くと、兵部は彼の腹を蹴り、そこを支点にして体を返した。
「ん、しょ」
「げ。痛ってえなおい」
「なんだよ」
甘く睨んで来る濡れた瞳。
目の前には、どうしようもなく劣情を誘う小さな尻。
「この僕が、わざわざこんなカッコしてやってんのに」
「俺が悪うございました・・・」
ここは謝っておくべきだろう。
ていうか、言うべきは礼なのか？どうなんだ。
「真木は、こっち」
ばふばふと、顎を乗せたソファの肘掛けを叩いて犬のように呼ばれ、それでも真木は何かをすっかり諦めた顔でそちらに回り、兵部の顔の前で、結構デカイものを取り出した。
その先端や幹に、ぺろり、ぺろりと小さな舌を這わせてから、たっぷりと艶を乗せた眼差しで、ちらりと真木を見上げて。
「あーん」
ヒノミヤの方からは、兵部が何をしているのかは見えないが、見えなくたってよくわかる。
真木の大きな手が兵部の後頭部を支え、そうして。
「むぅ・・・ン」
くぐもった喉の鳴る音と、目を細めた真木の表情。
あー、くそ。
ヒノミヤも負けていられない。
目の前の、可愛らしい・・・しかしいやらしい場所に、自分のものを押し当てる。
とたん、くい、と自ら押しつけてくる淫らさがたまらない。
そのままぐいと押し込めば、貪欲なそこはぬるりとヒノミヤを飲み込んで、味わうように包み込む。
「ん、ん・・・・っ」
苦しげに喉の鳴る音も、下肢を包んで締め付けられる快感もたまらない。
そのまま乱暴に抜き差しすれば、気持ちよく締まったそこが、たっぷりと絞り取ってくれることを、ヒノミヤは知っている。
でもさ。
兵部は、そうやってガンガン攻められるのも好きだけど。
こういうのも、結構・・・
そう思って、最近覚えた感じる場所を、先の方で幾度も突いてやると。
「んっ、んっ、んんっ・・・っ」
抱えた尻がびくびく震え、そのままきゅうっときつく締まった。
やっべ、イっちまう。
ヒノミヤは、ぎゅうっと歯を食いしばり、快楽の波をなんとか堪えきった。
「あー、くそ、具合良過ぎんだよてめぇ」
「むー！」
真木のものを頬張ったまま、抗議するように呻いた兵部のちいさな頭を、ちらりとこちらを見た真木の、大きな手のひらが包み込む。
そうして、ぐい、と引き寄せれば、兵部の喉が苦しげに鳴り、ヒノミヤをくわえたそこが、痛いほどに締め付けてきた。
うわー、がっつり喉かよ。
あの兵部京介にイラマチオって、すげえな真木さん。
真木の意外な一面に感嘆しかけて。
ヒノミヤは、学ランをまとったままのしなやかな腕が、その真木の腰に絡められるさまに、たちまち考えを改めた。
・・・いや。
すげえのは、コイツか。
上も下もふさがれて、気持ちよさそうに腰を揺らし、自ら喉までくわえ込み、中をきゅうきゅうと締め付ける。
目の前で震える白い背中は、快楽を貪りながら淫らにうねり、その絶景を眺めながら、きつく、熱く、やわらかい、気持ちのいい場所を抜き差しする快楽は、一度味わったらそれまでの、タチの悪いクスリのようだ。
「ったく、よ・・・っ」
一際深いところまで押し込んで、あまりの深さにのたうつ腰を、押さえ込んで注ぎ込む。
びくびくと震えている兵部の足元は、既に自分の放ったもので濡れていた。
「んっ、ぐ・・・げふっ、げほっ」
続いて、兵部の喉が鳴り、大きくせき込みだした。
真木のものは大きすぎて、兵部の口にはとうてい収まりきっていないのだが、それでも口腔深くで射精したのは、ヒノミヤにもよくわかった。
あー、アッチもきもちいーんだよなー
イった後の恍惚の中、薄らぼんやりとそんなことを考えていると、兵部が真木に抗議の声を上げた。
「奥で、出すなよっ」
まあ、そうだよな。
ていうか、そのついでみたいに俺の締めんな。
「吹いちまっただろ・・・」
恨みがましげに男を見上げた兵部は、しかしすぐに赤い舌を出し、これみよがしにシーツに落ちた真木の精をぺろりぺろりと舐め取り出した。
一心にそれを舐め取る姿は、まるで子猫がこぼしてしまったミルクを舐めているかのようで。
その様子は、たまらなく男心をそそった。
「・・・兵部、あのさ」
ずるり、と引き抜きながらのヒノミヤの呟きに、ひょいと顔を上げた兵部の唇は、真木のもので汚れている。
それを、ニイ、と歪めて。
「次は、逆な？」
そう言うと、兵部はヒノミヤのものをこぼす尻でぺたりとソファに座り込み、それから真木を見上げて。
「どっからするのがいい？」
「・・・ご機嫌ですね」
「まあねｖ」
はあ、とため息をついた真木は、兵部の顎を捕まえて、自分のものを含んでいた唇にちゅ、とキスをしてやってから、ぐいとその頭をヒノミヤの方へ押し出した。
「後ろの方が、咥えやすいでしょう」
そのまま、腰を抱かれてソファの肘掛けに下半身を引っかけられて、しかし兵部はじたじたとその足で真木を蹴った。
「やだ。さっき後ろだったから違うのがいい」
「なら聞かんでください」
ずる、と、兵部の体が更にヒノミヤの方へ寄せられる。
その頭をヒノミヤが膝に乗せるのを確認して、真木は兵部の体を横向きにして、片足を大きく開かせ抱え上げた。
後背側位でするつもりのようだ。
「んｖ」
兵部は満足そうに、ヒノミヤの腰に腕を絡めた。
これでも少しくわえづらいだろうが、その辺はヒノミヤに調整しろということだ。
「へいへい・・・っと」
確かに、このままだとやりづらい。
無理な姿勢でさせるのも興奮するが、兵部の場合は途中で投げ出される可能性があるので、避けた方が賢明だ。
腰をずらして兵部の口元にソレが来るように調整してやると、兵部はそれを手に取って、鼻先を押しつけるようにして笑って言った。
「真木のでか過ぎてさー、顎痛くなっちまうんだもん。しゃぶるならヒノミヤのが丁度、いいや、っあ！」
「悪かったですね」
後ろの方では、真木がそこに指を差し込んで、ヒノミヤの放ったものを掻き出している。
「ホンっト、なんで、こんなに育っちまったんだ、ろ・・・」
昔は小さくて可愛かったのにさぁ。
ヒノミヤのものに指を掛けたまま、首をねじって真木の方を振り返る兵部の視線を、ヒノミヤも思わず追ってしまう。
「どこを見て言ってるんですか」
「ドコって、ココ？」
ヒノミヤのものから片手だけ離し、びし、と兵部は真木のモノを指さした。
「小さかったんだ・・・っで！」
ぼかりと真木の炭素繊維に殴られて、ヒノミヤは痛む頭を抱え込んだ。
ははっ、とその様子を笑っていた兵部の体が、いきなりびくびくと震え上がった。
真木が、その昔はともかく、今はとても大きなものを、兵部の中に押し込んだのだ。
「ふぁ・・・っ」
上がった声に、苦痛の色はない。
赤い唇は、あぁ、と気持ちよさそうな吐息をこぼすだけで。
その唇に、自分のものの先端を押しつけると、それはまた、ニコリ、と魅力的に笑って。
大きく開いたそれに含まれながら、ヒノミヤは、はあ、と、快感の吐息をこぼした。
それを見上げた兵部の瞳が、チェシャ猫のように笑う。
しかしすぐに、それも後ろからの快楽に融けて堕ちて。
あとはただ、獣のように貪り合う時間があるだけだった。