Direct body Direct mind
敏感になった粘膜を、熱いもので擦られるのは、とても、とても気持ちが良かった。
「は、ぁっ」
上から熱い吐息がこぼれ落ち、それを合図にしたかのように、さざ波のような心地よさが、大きなうねりになった。
その波に逆らわず、巧く乗る方法は知っている。
ビジネスライクな相手なら、ここはあえて乗らずに相手の様子をうかがう余裕を残すものなのだが、これは、そういう相手ではない。
ならば。
「ぁ・・・あ・・・・・っ」
腰から背筋へ沸き上がる、圧倒的な快に身を任せると、ぐい、と肩を掴まれた。
その、熱い指の感触さえ、気持ちいい。
知らず閉じていた目を開けると、高い高い熱をはらんだ少年の瞳が間近にあって。
そのまま落ちてきた口付けに、止めを刺されるように、森次玲二は達していた。
普段、息をしていることさえ忘れそうな唇が、しどけなく開いてはぁはぁと熱い吐息をこぼしている。
眼鏡越しではない瞳は黒々と濡れて、その縁から涙がこぼれていることに、早瀬は今になって気が付いた。
自分がヘタクソで痛かったというのは、この人に限ってはありえない。
なら。
泣くほど、気持ちよかった、とか。
そう思ったとたん、一度イってやっと冷めかけていたアタマに、また、かあっと血が上った。
「ん・・・っ」
掴み締めたままだった、指に吸いつく白い脚がびくりと震える。
彼のナカで、また、自分が力を持ったのがわかった。
「森次さん、俺」
そこから先は巧く言葉にならず、あわあわと余計な吐息だけがもれていく。
こんな時、なんて言ったらいいかなんてわからない。
恋愛なんて初めてだし、セックスだってまだ３回目だし、相手は森次玲二だし。
しかも、その森次は。
「わかった、から。一度抜け」
低くかすれて熱を持った声でそう言うと、ぐい、と早瀬の腰を押し返して。
「コンドームは普通、２回射精できるようには出来ていない」
そんな、セックスにまだ夢や希望のある少年に、あんまりなセリフを淡々と吐いてくれて、余計に早瀬をあわあわさせた。
「えっ、あっ、ハイ」
ものすごく気持ちのいいナカから、ゆっくりと自分を引き抜いていく。
「んっ・・・」
抜けと言ったのは自分なのに、一瞬目を閉じて、ちいさく喘いだ恋人の。
そのさまと声が、抜き出す刺激にあいまって、早瀬のモノは、もう完全復活を遂げていた。
元気過ぎるって、俺。
ていうかエロ過ぎるんだよ森次さんが！
目の前の肢体に責任を転嫁して、早瀬はわたつく指先で、モノに被さったゴムを剥がしにかかった。
初めての時にコレを用意したのは早瀬だけれど、使い方は、森次に実地で教わった。
用意したのは誉めてもらったけれど、使い方がよくわからなかったので減点だそうだ。
目の前の上司は、いろんな意味で、早瀬の「先生」なのだ。
「何をもたもたしている」
しかも、その先生は、やっぱりあわあわしている早瀬の指を押し退けて、ずるりとそれをひっぺがすと、あっという間に口を縛って、見もせずにゴミ箱へ放った。
もちろん、それはナイス、インだ。
でも、早瀬にはそれをゆっくり見届ける余裕もなくて。
自分で買った箱をかたかたと開け、中からひと連なりのパッケージを引っ張り出す。
森次さん、焦れてる。
早く、また欲しいってコトだよな。
それは嬉しいんだけど、でもだから、早くしないとまた怒られるんだよいや別に怖いから急いでるワケじゃないケド！
なんだかちょっと震える指で、ぺりぺりと個包装を切り取って。それを開けようとしたところで、下の方から、低くかすれた声が上がった。
「もういい。面倒くさい」
手の中のパッケージを、ひょいと奪い取られる。
つけてくれんのかな、と、道明寺たちと見たエロ動画の展開を思い出したけれど、森次はそれを、使用済みと同じくぽいとゴミ箱に投げてしまった。
「そのままでいい」
そのまま・・・って。
えっと、ええっと。
えええええええ！！
早瀬はまじまじと、決して大人しくなく、自分に組み敷かれてくれている人を見下ろした。
快楽の涙に濡れた瞳。
大きく開いたままの脚。
放ったもので濡れた腹。
くわえていた早瀬を引き抜かれ、赤く染まって、未だにひくひく震えている、そこ。
そこに。
生のまんまで突っ込んでいいってコト？
いや待て！
「えっと、あの、でも」
意味不明に呟いて、なんとか時間を稼ぎながら、早瀬は自分でも悪くないと思っている頭を、一生懸命フルで回転させた。
いや待て。ちょっと待て。相手は森次玲二だぞ。
だいたい察しはしたけれど、コレが正解とは限らない。
時々派手にかまされる、ド天然っぷりはもう、身に染みて知っている。
だからって聞いて不正解だったらもの凄く怖い！
厄介な相手を好きになった、と思うのはこういう時だ。
でも、早く結論出さないとこのヒトじれてるし！
あわあわあわ。
目に見えてパニックを起こしている早瀬を眺め、森次はひとつ、ため息をついた。
まったく。
何を考えているのかはだいたいわかるが、こうも対応力が低くて良いものか。
・・・いや。
に、と、思わず口の端に笑みが浮かんだ。
早瀬のあわあわ具合が、目に見えて上がった。
コイツの度胸は、私がよく知っている。
コレは、私相手のことだからだ。
そう思えば、可愛いものじゃないか。
「ファクター同士なんだ。病気の心配をする必要もないだろう」
とりあえずそう言って、くつくつと笑いながら早瀬を見上げた。
「濡れているから丁度いい・・・さっさとしろ」
「は、はいっ」
せ、正解。
ほっと一息ついた早瀬は、気を取り直して恐る恐る、といった風情で、森次のそこに、剥き出しの自分を押し当てた。
ぴた、と、吹い付くような入り口。
そこに先端を食まれて、それだけでもう息を飲む。
うわ、やっばい。
思わず森次の顔に視線を移せば、黒々と濡れた瞳が、なんだか楽しそうに早瀬を見上げている。
ああ、なんか凄く機嫌いいな。
コレなら、多少失敗しても許してもらえるかも。
だから早瀬は思いきって、森次のナカに自分を押し込んだ。
うわ、わ。
直に感じる粘膜は、薄い膜越しとは全然違う。
しっとりと絡み付かれる心地は、堪えていないとすぐにイってしまいそうだった。
それでも、頑張らないと、と歯を食いしばり、とにかく奥まで入れきると。
森次の瞳が、とろりととろけるように細められ、それから。
「あ・・・ぁ。イイ、な・・・・・」
とっぷりと甘く濡れた声で、そんなことを言われてしまい、早瀬はひとつ息を飲んだ。
きゅむ、と、濡れた感触まではっきりとわかる肉に、敏感な場所を絞られて、ちょっと泣きそうに気持ちいいんだけど。
でも。
長い脚を大きく開き、そこに少年をくわえ込んだまま。いつもは鋭い眼差しを、とろりとろりと蕩けさせて、早瀬を見上げる年上の恋人。
このヒト、満足させてあげなけりゃ、オトコじゃないだろ、俺！
なんだか情けなかった早瀬の、顔つきが変わったのがひと目でわかった。
そう、コレ、だ。
笑みを浮かべかけた口元は、しかしずるりと引き抜かれる感覚に、小さく喘いでひくりと震え。
すぐさま深々と貫かれ、笑みも忘れて高々と啼いた。
「あ・・・・ぁっ」
直に感じる早瀬の熱は、森次のナカを熱く蕩かす。
ずくずくと、稚拙ながらも一生懸命な動きで自分を犯す愛しい楔に、夢中になるその一瞬。
「す、いません森次さん。俺、ちょっともう」
情けない声が降ってきて、今度こそ森次は笑ってしまった。
「そんなに、イイのか」
「あ・・・当たり前ですよ！」
ぐ、と、足を押さえていた手のひらに力が入って、弾みでナカの角度も変わる。
くちゅ、と、ソコが濡れた音を立てて、森次はひく、と身を震わせて。
「そう、か」
イイだの何だのとそんなことは、誰にでも、飽きるほどに言われていたのたが。
その言葉に、こうまで興奮したのは初めてだった。
「なら、イけ」
組み敷かれているとは思えない、高慢な言葉とともに、自分を見上げた森次の。
濡れた瞳と唇が、ぞっとするような艶を掃いて、笑う。
ゾクリ、と、早瀬の背筋に異様な興奮がわき起こった。
彼に触れている場所、すべてが、痺れるような快感を訴えて、震えた。
「はいっ」
それでもちゃんと返事が出てしまうのは、森次の躾のたまものか。
たまらなく気持ちのいい体を、直に感じながら、一生懸命に腰を動かして。
ものすごくもったいないと思いつつも、早瀬は、その気持ちのいい体の中に、あっという間に吐き出していた。
「なんか、凄くイケナイこと教わった気がします・・・」
ナカで出してしまった後の、後始末の方法を教えてもらい、濡れた指をティッシュで拭うと早瀬は情けない声を出した。
さっさとイかれた森次が、それだけで許してくれるハズもなく、また、煽られまくった早瀬も、それくらいで満足できるワケもなく。
あれから何度も、もちろん生でヤってしまい、森次の中は、なんだか凄いことになっていた。
しかし、森次はソレを何とも思わないのか、いっそすっきりした顔で答えてくれる。
「今更だろう」
早瀬はまだ１６だから、彼と関係を持つ森次は立派な犯罪者だ。
ハイそうですね、と、恐らくそんなことはカケラもわかっていない様子で呟くと、早瀬はティッシュをゴミ箱に放り、上目遣いで森次を見た。
「あのう、森次さん」
「何だ」
にべもない返事だが、それがデフォルトだと知っているので、今更早瀬も怯まない。
「次からも、コレ用意した方がいいですか？」
枕元に放り出されまま、忘れ去られた小箱を指さす早瀬を見て。
「・・・・・」
少し、自分はコイツを甘やかせすぎたかもしれないと、顔には全く出さずに、森次は深く反省した。
「自分で判断しろ」
そのくらい、できなくてどうする。
「ええっ！ちょっと！ソレ凄い難しいんですケド！」
騒ぐ早瀬を今度こそ無視して、森次はころりと横になった。
満足しきった体は、すぐに、眠りへ落ちていった。