旦那様のお土産 ｖ
シンは子わんこです。
甘い物大好き子わんこです。
最近、『あまから』のお味を覚えた子わんこです。
お正月に、お砂糖と醤油で、おもち食べたんだよ。
骨が取れなくて嫌んなっちゃうお魚も、あまからーく、よーく煮て、『かんろに』にしてもらえば、丸ごとおいしく食べられるんだよ！
さてさて。
今日は、旦那様だけお出かけでした。
お仕事じゃないんだって。
えっとね、「ぷらんとみんぞくナントカナントカがっかい」に行って来ますだったんだって。
「また変な物持って帰ってくるなよ」
って、ご主人様はちょっとイヤンな顔してたけど、帰ってきた旦那様のお土産は、ナッツの入ったチョコレートでした。
「これは、太平洋赤道付近で最もポピュラーな土産で・・・」
「シン、一日ひとつだぞ」
「うん！」
チョコはいっぱい食べると鼻血出ちゃうもんね！
シン、手のひらの肉球とおんなじくらいの、まあるいチョコにご満悦ｖ
ご主人様も、無難なお土産に、ホッとひと安心。
さてさて。
みんなでチョコを食べた後、ご主人様はお仕事です。
せっかくシンがお休みなのになーっ。
でも、昨日までたくさん遊んでもらったし。仕方がないですね。
レイもお部屋に行っちゃったし。
なのでシンは、居間で一人遊び。
黒い積み木がケルベロス。
赤い積み木がセイバーで、青い積み木がフリーダム。
フリーダムに捕まった、ご主人様のセイバーを、シンのケルベロスが助けてあげるんです！
「レイ、シアター展開だ！おうっ！」
一人で盛り上がってるシンに、旦那様が声をかけます。
「小僧、それを外でやるなよ」
「なんでだようっ！」
シンに、軍事機密なんてわかりませんから。
「やるとアスランが困るんだ」
ほんとに困るのは旦那様ですけどね。
「そっか、わかったよ！」
ほんとにわかったのかな。
わかってないよな。
もうワンランクアップして、「男の約束」にした方がいいかなぁ。
そんなことを考えながら、旦那様は台所で、奥様には見せなかった、もうひとつの『お土産』をお皿に出しました。
濃いあめ色のボディから、金色に光る脚が、ピンピンピンと伸びていて。
甘くてしょっぱくていい匂い。
「かんろに？」
「どちらかと言えば、佃煮だな」
「むし？」
「ああ、イナゴだ」
旦那様の本当のお土産、イナゴの佃煮。
「アスランには言うなよ。一大事になるからな」
前に、ざざむし買ってきた時はエライことになったっけ。
「うん！」
ママご主人様には内緒のこういう時には、旦那様、シンにも『分け前』くれるんだ。
だからシンは、わくわくして、積み木持ったまま、お皿とグラスを持った旦那様の後をくっついて、テーブルの足元で背伸びします。
旦那様、お箸でひとつ食べてから、
「たべるー！」
って大騒ぎのシンに、
「食べるじゃないだろ、小僧」
「ちょーだい！！」
「５０点だな」
仕方がない、って、ひとつくれました。
「わーい！」
ぱりぱりもぐもぐ、ごっくん。
イナゴの佃煮、『あまから』でおいしいですｖ
「もう一個ー！」
「そうばくばく食うもんじゃないぞ」
「一個だけ！」
「一個だけ、だな」
「えっと、五個！」
「半端に欲張るな！」
シンと旦那様が、珍しく仲良くおやつをしていると、旦那様が急にお皿を持って立ち上がりました。
その足元で、シンが騒ぎます。
「いなごー！もっとーー！」
「イナゴって何だ！」
ばったん、とドアを開けて、ご主人様登場ー！
「イザーク！それ何だ！」
「なんでキサマはそう嫌いなものを嗅ぎ分ける！？」
「何だって聞いてるんだ俺は！」
「酒のつまみだ、貴様にはやらん！」
誤魔化そうとした旦那様の足元で。
「あ、足だｖ」
シンが、テーブルに落ちちゃってたイナゴの足を見つけて、ちいちゃくて摘まめないそれを、肉球にぺたりと付けて、ぱくん。
「足って・・・やっぱり虫じゃないか、食うな！！」
「大事な食文化だ！」
「文化なら別にしろ！」
ぎゃあぎゃあぎゃあ。
喧嘩ケンカのご主人様と旦那様。
いつものことだけどね。
だからシンは、旦那様が持ったままの、イナゴのお皿をじいっと見上げてます。
もう一個、食べたいなぁ。
シンがそう思った時でした。
ご主人様が、旦那様を蹴っ飛ばそうとして。
それを避けた旦那様、足元のシンを避けようとして、バランス崩して。
お皿の上のイナゴ、くっついて塊のまんま・・・
シン、大きなお口、開けました。
塊のまんまのイナゴ、お口でぜーんぶ・・・じゃなかったけど、見事にキャッチしましたｖｖ
そいで。
ごっくん。
飲んじゃいました。
だってだって、ご主人様、むし食べると怒るんだもん。
お口に入ってても、「飲むな！」って言って、でも吐き出しても怒るんだもん。
嫌んなっちゃう。
「飲むな！吐けーーー！」
ご主人様、それ、子わんこにさえ見透かされちゃってるセリフ。
「飲んじゃったー！」
だからシンは、あーんってお口を開けてみせて。
キャッチしそこなって、お口の端っこに引っかかってたイナゴがぽろりと落ちて。
ご主人様、ぐらり。
それでも、元エースパイロットの意地と根性でなんとか踏み止まりましたよ。
「もういい勝手にしろ！！」
ご主人様、半泣きでお部屋を出てっちゃいました。
「・・・・・・」
それを見送った旦那様、はあーっ、と大きなため息。
「勝手に嗅ぎつけて勝手に騒ぎやがって・・・まったく」
そうして、落っこちたイナゴをシンより先に拾い集め、ぶーぶー言うシンを尻目にきちんと片付けちゃって。
お皿に出さなかったイナゴは、厳重梱包で冷蔵庫の奥へ。
そいで、棚の中から買い置きのクッキー（カルシウム強化、低脂肪のミルククッキー。マツトモシロヒの自社製品で、ちょっと太目のワンちゃん用）を一枚シンに渡してから、ゆっくりと奥様を追っかけました。
シンも追っかけようと思ったんだけど、クッキー食べたらお腹いっぱいで、眠たくなっちゃって。
黒い積み木のケルベロスと、赤い積み木のセイバーを持ったまんま、ぽかぽか日の当たる居間の床で。
「ぐぅ」
お昼寝しちゃいました。
だから、ご主人様が駆け込んで、旦那様が追っかけたお仕事部屋で、何が起こってたかなんて。
子わんこ、知りませんよｖ
せお様が踏まれました、子わんこ板のカウンター「いなごごっくん（１７５５９）」のキリリクですー！