あいたい
ルルーシュ。
君に、逢いたい。
加速は十分だった。
右腕の損傷は、問題ではなかった。
問題だったのは、自分の注意力だ。
ルルーシュの乗るガウェインに集中しすぎて、あの紅い機体が接近していることに気付かなかった。
ルルーシュを、殺すことが出来なかった。
フロートシステムを壊されても、高速で駆け去る機体。
あれに、君が乗っていたのに。
モニターだけではなく、レーダーも常に注意。
明日の課題だ。
でも、できるかな。
君を前にして、そんなに冷静でいられるかな。
ああそうか、今日は、先に弾丸を使い果たしたのもまずかった。
今なら、冷静になってそう思える。
でも。
君に逢うために。
君と戦うためには、その前に、たくさんの黒の騎士団のKMFと戦わなくちゃいけないんだ。
なるべく武器を温存するには。
なるべく、効率良く奴らを倒すには、どうしたらいいんだろう。
やっぱりスピードを生かして、後ろに回り込んでコックピットを狙うのが、武器効率を考えたら一番なんだろう。
一機につき、ヴァリス一発で済んだなら、その分、君と戦う時のために、弾を取って置けるから。
でも、そうしたらエネルギー効率が・・・難しいな。
フロートアタッチメントだけでも、だいぶエネルギーを食うのに。
本当は全部、君と戦うためだけに使いたい。
僕の武器、僕のエネルギー、僕の想い、すべて。
すべて、君を殺すためだけに。
ルルーシュ。
あれから、僕は君のことばかり考えている。
どうやって、君を殺そうかと。
どうやったら、君を殺せるのかと。
僕の中は、君への憎しみでいっぱいなんだ。
そう。
ユフィを殺した君を。
僕は、何よりも、誰よりも憎んでいる。
だけど、何故かな。
もう、ユフィの顔も思い出せない。
僕の中は、君だけでいっぱいなんだ。
深夜の格納庫。
休むのもデヴァイサーの仕事のうちだって、セシルさんは言うけれど。
でも、僕に休息は必要ない。
あれから僕は眠っていない。
それでも、今。
体の芯から指先まで、力が溢れているのがよくわかる。
ルルーシュ。
君を倒すための力だ。
君を、殺すための力だ。
その力に支配されている自分を。
僕は、君と同じくらいに憎んでいる。
そうして、何故かな。
とても誇らしく、嬉しく思うよ。
見上げたランスロットは、修理され、整備されて。
また、君と戦うために、ここにある。
早く乗りたい。
早く、君と戦いたい。
今度こそ僕は、君を殺す。
今度こそ、失敗しない。
だから、早く。
今日の戦闘を思い返しながら、僕の手は、無意識に、操縦桿を操る動きを模している。
加速は、十分だった。
でも、あの速さでは、僕の想いには追いつかない。
もっと出力が上げられるかもって、ロイドさんが言っていた。
デヴァイサーの耐久実験なんか必要ない。
だって、理論上は、それでランスロットがもっと強くなるんでしょう？
僕は。
ランスロットは、もっと強くならなくちゃ。
ガウェインを倒すために。
君を殺すために。
もっともっと、強く。
ねえ、ルルーシュ。
僕はあれから、君のことばかり考えているよ。
今日・・・いや、もう、昨日か。
あの黒いKMFの中で、君はどんなふうに戦っていたんだろう。
君を殺すことでいっぱいだった僕のように。
僕を殺すことでいっぱいだった？
だったら。
だったら、嬉しい。
君の、綺麗な白い手が。
僕を殺すためだけに、操縦桿を操って、ハドロン砲の引き金を引く。
それを想像するだけで、僕の胸は震える。
その時、君は何を想うのだろう。
僕には、想像もつかないけれど。
でも。
でも、僕と同じように。
僕のことばかりを想いながら、戦っていてくれたなら、嬉しい。
だって僕は。
君のことだけを想いながら、操縦桿を倒す。
君のことだけを想いながら、ペダルを、踏み込む。
君のことだけを想いながら、君を、殺す。
ああ、早く夜が明けないだろうか。
夜が明ければ、君とまた、戦える。
夜が明ければ、君を、殺しに行ける。
ルルーシュ。
早く、君に逢いたいよ。
逢って、君と戦いたい。
逢って、君を殺したい。
君を殺す手応えを。歓喜を。
早く、この手に感じたい。
ルルーシュ。
はやく、きみに。
あいたい、よ・・・・・