その白い指を､口に含む。

笛を抑える先は思いの外硬く､舐めると舌を刺激して心地よい。

深く咥え込めば、その腹は柔らかくて、触れた舌がとろけそうだった。

関節をひとつひとつ甘噛みし、根本まで含みきる。

舌の根に巻き込まれた指先がひくんと跳ね､捕まえた手のひらごと、震えた。

「・・・・・きどの・・・・・・・」

何かを堪えるような声に、口を離さないまま顔を上げる。

禁色の瞳が揺れて､紅い唇が開いた。

「あ、の。もう・・・・」

こういう物言いをするとき､永泉自身、何を言いたいのかわかっていない。

それを知っている泰明は､かまわずに口腔内の指を舐った。

「ん・・・・」

ずるり、と咥えた指を吐き出し､隣の指に移る。

ずっと含んでいたものよりも冷えた刺激が心地よく､また、唾液が溢れた。

永泉は泣きかけているが､泰明は自分の楽しみを優先させることにする。

別に､痛いことや辛いことを強いているわけでもない。

ただ、指を舐めているだけだ。

自分の唾液に濡れた指が､頬に当たり、泰明の頬に冷たい線を描く。

口の中はこんなに熱いのに､不思議だった。

世界は不思議に満ちている。

その最たる存在を前に､泰明は舌の動きを緩めない。

冷たくて熱くて硬くて柔らかくて、旨くて心地よくてわけがわからない。

だから、確かめたい。

この存在を。

「や、やすあきどの・・・・あの・・・・・」

意を決したように、永泉が唇を震わせる。

「もう、お止めください・・・・」

恨めしげに永泉を見やり､泰明の唇が離れる。

『言の葉』にされ､なお聞き入れないのは子供か賊のすることだ。

今まであたたかい粘膜に覆われていた指が、ひやりと冷えて心もとなかった。

ちゅ、と最後に指先を吸われ、力の入らなくなった爪の先に血が通い､少し紅くなっている。

泰明は手を放さないまま､しげしげとその爪先を検分している。

「赤いな」

「はい・・・」

泰明の口が､また、開く。

「あの、本当にもう、その、汚いですし・・・」

「汚くはない」

言い切った唇が、再び指先を含む。

泰明の舌が動くたび、ぞくりぞくりと感じる快に、慣れない永泉は涙ぐむ。

「あの、その、おかしく、なってしまいますから・・・」

指を咥えたまま、泰明は。

「おかしくなるのは、閨でだろう」

今は違う、というのは子供の理屈。

挙句。

「お前の手は、旨いな」

五指すべてを舐め尽し、最後に親指の付け根を噛んで、泰明はやっと、永泉の手を放した｡

そして。

「お前は、すべて旨い」

永泉の指を舐めていた舌が、今度は唇へ。

ぺろ、と舐められて、自然と開いた唇に、深く口付けられ。

永泉は、乾ききらない指で泰明の衣に縋った。

「すべて・・・泰明殿のものです・・・・・」

わずかな息継ぎの合間にささやかれた言葉に、泰明は満足し。

再び、その旨い唇を貪った。

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