湯上りの匂い
風呂上がりの肌って、どうしてこんなにいい匂いがするんだろう。
シンは、アスランの裸の胸元に鼻先をすり付けながら思った。
「んっ・・・何してる、んだ？」
怪訝に思ったらしいアスランが、刺激に甘く喘ぎながら聞いてくる。
「アスランさん、いい匂い」
くんくんと、鼻を鳴らしながらシンが言う。
胸一杯に吸い込むと、なんだかくらくらしてくるみたいだ。
「風呂入ったばかりだからだろ」
それなのに、アスランはそっけない。
そっけないっていうか、味気ない。
そうじゃなくて、と、シンは今度は首筋に鼻先を持っていき、すん、とひとつ鼻を鳴らして言った。
「どうして、風呂入った後だとこんないい匂いになるんだろ」
そりゃ、アスランさんっていつもなんだかいい匂いするけどさ。
やっぱり、今は格別だ。
「それは、汗や汚れを落としたからだろう？」
それでやっぱり、アスランはヘンなところで味気ない。
「なんで、汗とか落とすといい匂いになるのかな」
むきになったシンを、アスランは、当たり前だろうというような、呆れた顔をして見ている。
「それに」
シンは、むうっとしながら、それでも投げ出された脚に手を掛けた。
白い腿を抱え上げ、その内側の、なんだか一番いい匂いのするあたりに、また、鼻先を近づけて。
「シャワー浴びた後より、風呂浸かった後の方が、いい匂い」
そう呟いてから、ぺろりとそこを舐めた。
柔らかい肌と、滑らかな舌触り。
わずかに甘くてわずかにしょっぱい。
大好きな、アスランさんの味。
「んっ・・・、入浴剤かなんか、入れたか？」
頬も胸も腿もピンクに染めて、どうしようもなく色っぽいアスランさん。
なのにさー、なんでこーなのかなー、このヒトは。
「入れてませんよ。もう」
そうじゃなくて、とシンはひとつ、ため息をついて。
そういう話じゃなくってさ。
「アンタがいい匂いで、俺、むちゃくちゃ欲情しちゃうんですけど」
そう言うと、ちゅーっと、いい匂いのするそこに吹いついて、跡を残した。
「ぁ・・・・っ」
アスランは、びくんと肌を震わせて。
それから、熱っぽく潤んだ瞳でシンを睨み、その色っぽさで少年をぞくぞくさせながら、甘いあまい吐息と一緒に、色っぽくかすれた声で言った。
「欲情とか、言うな」
「・・・・っ！」
そのセリフと、視線と声とが、シンをいっそう欲情させた。
少年は、腿の滑らかさを楽しんでいた唇を、焦ったようにそのまま奥まで滑らせて。
「あ・・・んっ」
シンを受け入れてくれる場所に、たっぷりと唾液を乗せた舌で舐め上げる。
「シ・・・ン、こら、舐めるなって・・・・っ」
「んっ」
抗議の声をものともせずに、更に舌を押し込んで。
きゅうきゅうと、ちぎれそうな勢いで締め付けてくる場所を、たっぷりと舐めほぐしてあげて。
「やっ、あ・・・・シン・・・っ」
シンを挟み込んだアスランの膝が、ぎゅむ、と痛いくらいに脇腹に食い込んで着た頃を見計らい、シンはそこから口を離した。
「・・・・アンタ」
そうして、長い脚を持ち上げて。
それでもまだ、脚の間をのぞき込んだまま。
「ココも、いい匂い」
そう呟くと、アスランの頬が、快楽以上に赤く染まった。
「馬、鹿・・・っ、あああっ！」
罵倒の言葉は、あっと言う間に喘ぎに紛れて。
アスランは、ナカに入ってきたシンを、感じることでいっぱいになった。
さっきまで、たっぷりと舐められて濡れたそこを、シンの雄が、少年らしい性急な勢いで擦りたてていく。
「やっ、あっ、ああんっ！」
揺れる腰が止められず、きゅうきゅうと、彼を食い締めてしまうのも恥ずかしい。
「アスラン、さん」
シンの声が、落ちてきて。
その声に、更に煽られて。
アスランは、はしたなく喘ぎながらシンの背中に爪を立てた。
しがみついた肌は、アスランの大好きな若い雄の匂いで。
余計に、アスランを欲情させた。
「・・・・俺は」
たっぷりと快楽を味わった体を、のんびりとベッドに大きく伸ばして。
アスランは、シンの背中をつつきながら言った。
「風呂に入った後のお前の匂いも好きだが、入る前も好きだな」
なんで？と、振り返ったシンから、ミネラルウォーターのボトルをもらい、ひとしきり喉を潤してから。
アスランは、にこりと無邪気に笑った。
「汗臭い方が、シンらしい」
「何ですか、それ」
むうっと膨れたシンの頬。
ああ、と、アスランは思った。
シンは普通の顔よりも、怒っている方が可愛いし。
風呂上がりよりも、汗臭い方が可愛いなぁ、と。
言ったら怒るから、やめておこうか、それとも面白いから言ってみようか。
薄ぼんやりと考えているうちに、シンが第二ラウンドを始めてしまい。
結局、そのまま忘れてしまった。