空穂
闇にほの白く浮かび上がる、白い肩に手を伸ばす。
やわらかな熱を孕んだそれは、泰明の指にしっとりと寄り添い､ゆるやかな鼓動をつたえた。
とくん、とくんと。規則正しい振動に乗るように､永泉のあたたかな気が泰明の手のひらに染み入る。
ゆるゆると、骨をつたい､筋をつたい。
肘をとおって肩から胸へ。
そこにほかりと空いた、泰明の空穂の中へ。
あたたかな水をそそぐように。
ゆるやかな熱で満たすように。
とうとうと。
流れ入る。
「やすあきどの・・・？」
甘くかすれた声が､泰明を呼ぶ。
細いからだが身じろいで､背中に掛けた衣がするりと落ちた。
「寒くはないか」
それを頚まで掛けてやり､遠く、触れていた肌を､深く､やさしく抱きしめる。
「はい」
泰明の空穂に、永泉の笑顔が、満ちる。
「泰明殿が､いてくださいますから・・・」
熱が、満ちて。
融ける。
やがて、胸元を温めだした寝息を心地よく抱き、泰明も、眠る。
その胸の内に、もう、空穂は存在しなかった。