ちょうどいい
シンの恋人は、ふたつ年上で、それからなんだか、いろいろ経験豊富っぽい。
ザフトにいた時は、なんだか古い知り合いみたいなのからよく、シンにでもわかるセクシュアルな冗談とか言われてたし。
オーブに来てからは、やっぱり知り合いっぽいヒトから、シンにでもわかるあからさまなお誘いとかあったし。
それでも、アスランはシンを選んでくれて。
シンがいいんだって、言ってくれて。
だからそれでいいんだけども、でもでも。
俺、ちゃんとアスランさんにふさわしい男になれてるのかな？
と、やっぱり年若い少年は思うワケで。
そうしてそのアスランは、今日も、その無意識の色香をダダ漏れにしているのだ。
アスランの恋人は、ふたつ年下で、それからなんだか、いろいろかわいい。
たまに生意気が過ぎてムカついてぶっとばしてしまったりもするけれど、その後でぎゃんぎゃん泣いているさまを見るのは、やっぱりかわいい。
この子を選んで、良かったなぁとアスランは思う。
他人に言われなくても、わかっている。
いつも、いつも。
自分が何かを選ぶときは、それを『選ばざるを得ない』状況になっていて。
その前にあった、本当の選択肢に気がつかないアスランは、いつだって、本当に何かを選んだことなんかない。
それでも。
シンだけは、アスランが自分で選んだものなのだ。
アスランの、恋人なのだ。
「アンタまたうちの上司に色目使っただろ！」
「人聞きの悪いことを言うな！」
家に帰るなり怒鳴り散らしたシンを、アスランはその場でぶっとばした。
幸い、玄関のドアはもう閉まっていて、外に漏れたのは、シンがドアにぶつかった音だけだった。
「痛っ！！だって、アイツ、アンタのコトスゴい美人だって！いっつもスッゲーカタいヤツなのに！そーゆーコト言うヒトじゃナイのに！」
ドアを背に座り込んだシンの主張に、アスランは、もうなんだか怒る気も失せてしまった。
「お前、なんだかもの凄く頭悪そうになってるぞ・・・」
頭悪いというより、子供返りか。
ジタジタしない分だけ、まだマシか。
よいしょと起きあがって、もともと赤い目を白目まで赤くしながら見上げてくる恋人に、ひとつ、大きなため息をついて。
それからアスランは、そのため息に腹を立てたシンが、また何かバカなことをわめき出す前に、その口を塞いでやった。
自分の、唇で。
ただでさえ体温の高いシンの唇は、怒っているからもっと熱い。
この熱が、アスランは大好きだった。
はじめは戸惑っていたシンの唇が、すぐに反応して、食いついてきて。
唇よりも、もっと熱い舌が、ぬるりと自分の中に入ってきて。
後は、シンの好きにさせてやる。
「ごまかされた・・・・」
たっぷりとキスを堪能したシンが、ゆっくりと唇を離しながら言う。
「だから、人聞きの悪いことを言うな」
言って、アスランはごつんと、痛くない拳をシンの頭に落とした。
シンだって、わかっているのだ。
自分の恋人が、誰から見たってキレイだって。
でもさ。
【美人】って言われると、やっぱニュアンス変わってくるじゃないか。
「アンタその色気なんとかしてください」
「またワケのわからないことを・・・・」
くたりと懐いたシンの体を、アスランはぐいと押しやった。
「メシ、食うだろ？」
「メシよりアンタ食いたい」
予想していた答えに、また、ごつんと拳を落とす。
「いらないんだな。わかった」
「アンタぽかぽか殴りすぎですよ！」
わめいたシンは、それでもやっぱり、アスランの３倍は食べた。
このヒトのこういうトコ、知ってるヤツいっぱいいるんだろうな。
夕食を食べて、風呂に入って少しバタバタして。
やっと潜り込んだベッドの中、アスランを下敷きにしてシンは思う。
「んっ・・・なん、だよ」
手を止められて、じいっと見下ろされて。
焦れたらしいアスランが、ぺちんとシンの頬を叩いた。
「うん、アンタキレイだなって」
「何を・・・」
そこで言葉を切ったのは、照れたのか、それともシンが愛撫を再開したからか。
大きく開いた足の間、柔らかな皮膚は繰り返し撫でられて、ひどく敏感になっている。
そこにちゅうっと吸いつけば、びくんと腰まで震えて、そうして赤い跡がついた。
「キレイで、すごい、エロい」
さっきから、シンを迎え入れるところはひくひくと震えっぱなしだ。
どうしよっかな、と思ったけれど、シンもこれ以上ガマンができないので、ローションを引っ張りだしてそこに垂らす。
「冷っ！」
「あ、すいません」
全然悪く思っていなさそうな謝り方は、恋人譲り。
その自覚がないアスランは、シンを蹴ろうとして、しかしそこに指を突っ込まれたことで、それどころではなくなった。
「んっ・・・・！」
アスランのそこは、いつだってきゅうきゅうしていて熱くって、もの凄く気持ちがいい。
この中に、入れると思うだけで。
シンはもう、いっぱいいっぱいになってしまう。
「・・・・っ、シ、ン」
感じていることを隠さない、淫らな襞がシンの指をたっぷりと包む。
早く入りたくてめちゃくちゃに動かせば、アスランは腰を揺すって応えてきた。
「も、う」
「うん」
シンは、アスラン以外の人と経験がないのだけれど。
ていうか、そんなのぜんぜん、考えたこともないけれど。
それでも、年上の経験豊富な相手を喜ばせたくって、頑張っていろいろ調べたりもしたのだ。
だから、たぶん、と、思うのだけれど。
普通だったら、もっといっぱい、慣らしてあげなくちゃいけないんじゃないかな。
それでも、アスランはすぐに欲しがるし。
シンの指を飲んで、きゅうきゅうと嬉しそうなそこは、すぐに入れちゃって、ぜんぜん大丈夫だし。
それはそれで、すぐ入りたいシンには有り難いのだけれど。
でも。
と、少年は思うのだ。
でもさ。
それって、アスランさん慣れ過ぎってこと？
それとも。
俺、やっぱり小さいのかな？
「シン・・・？」
アスランが、また、不思議そうにシンを見上げてくる。
不思議そうと言うよりも、心配そうという感じ。
だからシンは、なんでもなさそうに意地悪く笑って。
「もう、入れちゃっていいですか？」
「っ！」
あからさまな言いように、赤くなるウブさはあるくせに。
シンを押しつけられたそこは、早く早くとその先端に食らいついてくるから、たまらない。
勢いのままに、ずる、と、ひと息に根本まで飲み込ませて。
・・・飲み込まれて。
シンは、ふうっと息をついた。
とりあえずそうしないと、まだ少しきついアスランの中で、あっと言う間にイってしまいそうだ。
「ん・・・あ・・・・・」
アスランの、とろりと濡れた緑の瞳がシンを見上げて。
それから、長い腕がシンの首に絡みつく。
いつの間にか汗みずくになっていた首筋を、熱い腕が這うさまに、ぞくぞくする。
そうして。
「はいって、る」
かすれた声でささやかれ、少年の息はさらに上がった。
「う、ん」
ああ、もう、どうしよう。
アスランの中に【はいってる】シンは、もう、どくどくといっている。
ガマンできないと、いっている。
「動いて、いいですよね」
「ん・・・」
頷いたのだか、呻いたのだか。
わからないけれどもアスランは、そのまま可愛らしくシンの額に自分のそれを合わせた。
さらさらと触れるアスランの髪。
ふわりと香る、汗の匂い。
だからもう、やばいって。
それを了承と取るしかなくて、シンは、一生懸命に腰を動かしだした。
うっかりイってしまわないように。
でも、ちゃんとアスランを喜ばせてあげられるように。
「あ、あ、あ、あ、あ・・・っ。あ、あアン・・・っ」
幼い楔に、いいように中を蹂躙されて。
その細い体にしがみつき、体中で少年を感じながら、アスランは思った。
こういうことをした相手なら、それこそ、自慢にならない程度にはいるのだけれど。
それでも、やっぱり。
脚に食い込む細い指。
首筋にかかる熱い息。
それから、自分の中でせっせと動くかわいいもの。
うん、やっぱり。
俺にはやっぱり、シンが一番、ちょうどいいんだよな。
アスランの選んだシンだから、シンの欲しがったアスランだから。
だから、やっぱり。
アスランには、シンが。
シンには、アスランが。
やっぱり、一番、ちょうどいいのだ。