体格のまったく違う友雅に、後ろから抱きすくめられると、永泉の体はすっかり埋もれてしまう。

その上、幾重にも重ねられた僧衣を取られてしまえば、手の中の仔猫のようなものだった。

 

 

藤姫の館で、友雅に会ったのは偶然だったと、永泉は信じて疑っていない。

『お送りしましょう。藤姫が牛車を貸してくださるそうですよ』

その言葉に、一も二もなく頷いたのは、こうして抱きしめてくれるのを知っていたから。

 

 

「これは・・・何本ですか？」

ぐちゅり、と、指を押し入れられる。そこが既に濡れていることを知らしめられたようで、永泉は甘苦しく吐息をついた。

「ぁ・・・一本・・・？」

はじめたばかりなのだから、と永泉が答えると、友雅は笑いを含んだ声で正解を答える。

「残念、二本です」

では、何も施されなかった場所へ、一度に二本も挿れられて、痛みすらないほどはしたなく濡れているのか。そう思う羞恥は、永泉の体を熱くする。

「では、これは？」

先ほどよりも強い圧迫感に、まわらない頭で思いついたままを言ってみた。

「あぅ・・・さ・・・さんぼん・・・？」

「四本です。少し・・・締りがなさすぎますよ」

それは嘘だった。永泉の中で妖しく動き出した友雅の指は、差し入れられたときとは違ってきつく締め付けられている。

「はん・・・・す、すみませ・・・・んんっ」

四本の指に好き放題いじりまわされて、永泉の体が甘くこわばる。

「間違いばかりですし・・・少し、お仕置きしますか？」

「は、い・・・・」

震えながら答えた唇を塞ぎ、友雅は永泉を更なる快楽へと突き落とす。

 

初めて、永泉抱いたのはもう六年も前の話。

当時、まだ東宮だった今上帝に、「頼む」と言われて、「頼まれた」ちいさな皇子。

そのとき既に、そこで快感を得ることを知っていた体は、よほどこういうことに向いていたのだろう。

 

「あ・・・あん・・・ああ・・・・」

密やかに快楽を訴える声を洩らし、自身にすがり付いてくる、柔らかい体を抱き止めながら、友雅は小さく笑う。

ぐちぐちと、濡れた音をたてるそこを一生懸命に揺らして、快楽を受け止める可愛い情人。

この方は、どんな恋をして、そしてどんな風に花開くのか。

それを思うと、楽しみで仕方がなかった。

 

 

 

 

 

「それで、あの、泰明殿が、私がそのつど思うことも、確かに真実なのだと、そう仰って下さったのです・・・・」

秘め事の後の、緩く解けたような時間。

後始末をしてもらった体を情人の腕の中に預け、嬉しそうに玄武の札を手に入れたときの話をする永泉に、友雅は笑みを禁じえない。　

つい先日までは、自分は八葉として何の役にも立たないと落ち込むこの年若い法親王を、何度もこの身で慰めてやっていたというのに。

この変わりようはどうだろう。

 

「このようなときに、他の男の話などするものではありませんよ、永泉様」

「え・・・・」

とたん、ぱあっと赤くなった永泉に、友雅はおやおや、と呟いた。

この少年が、自らの対となる安部家の陰陽師に、ことのほか好意を寄せていることは知っていた。

しかしまさかこれほどとは。

「こんなところまで赤くして」

隠すことを忘れられた、今だ幼い象徴を手のひらで包み込み、ぴくんと跳ねる体を抱きこみながら、くすくすと笑う。

まったく、あの無粋な陰陽師にはもったいない。

「泰明殿に、こうして欲しいのでしょう？」

手の中のものをやわやわと刺激してやりながら、意地の悪い言葉を、そこと同じに赤く染まった耳朶に流し込む。

「あ・・・あぁ、そんな・・・・」

喘ぐ声は、思えば以前よりも艶を帯びていた。

 

幾ばくかの寂しさも覚えるが、それより今は、この幼い情人の恋を祝福してやろう。

可愛らしい法親王、その、初めての恋を。

 

 

お役御免の日も近い。