「どうしてそんなにしたいんだお前は」

「どーしてアンタ、そんなにしたくないんですか」

やっと仕事が終わった、アスランのベッドの上。

ほとんどお見合い状態で座り込み、困るアスランの目の前で、シンは思い切り良く服を脱ぎ捨てた。

「いや、したくないわけじゃないんだが・・・」

甲斐性無し、と腹を蹴ると、ため息と共に足首を捕まえられて吊り上げられ。

すっかりやる気のシンは、もう全部脱いでしまっていたから、恥ずかしいトコロ丸見えで、ちょっと、慌てる。

「うわ、ちょっ、離し・・・・」

「ああ、すまない」

ぱっと手を離されて、みっともなく脚が落ちて。

それを見てくすくすと笑っているのを見ると、なんだかムカついてきた。

「その気になんないなら、させてあげます」

「ふぅん、何を、してくれるのかな」

余裕の声に、挑発されて。

それでも、シンに思いつくことといえば、前に、アスランにしてもらったことくらいだった。

少年は意を決して、キッチリと着込んだままだったアスランの軍服に手を掛ける。

丈の長い上着を持ち上げて、スラックスのベルトを外して。

ちょっと焦って指をもつれさせながら、ジッパーに、指を掛けて。

そこまでしたところで、不意にアスランがシンの頭を撫でた。

「いいよ、やっぱり」

見上げると、妙に眇めた目つきでシンを見ていて、慌てる。

「なんでですか」

なんでこんなにしたがらないかな、この人は。

いっそブン殴ってでも・・・と、シンが思いかけた時、髪を撫でていた手がするりとシンの頬を包んだ。

もう片方の手も添えられ、仰のかされて。

「俺が、してやりたいからさ」

その言葉だけでも、腰が砕けるのに、その上優しいキスまでもらってしまった。

俺、この人好きで良かったなぁと、シンは幸せに霞む頭で、そう思った。

「俺だって、まだ1回しかやったことないんだから、期待はするなよ」

生真面目にそう言う人に、シンはこくこくと頷きながら、そのくせ期待でいっぱいだった。

だって、この人と触れ合えるだけで、もの凄く嬉しい。

アタマ霞むようなキス、もらって。

首とか、胸とか、気持ちいいところにも、いっぱい触ってもらって。

てゆーかこの人の手すげえキモチイイんだけど！

「あっ・・・」

恥ずかしい声が出て、ごまかしたくて口を開いた。

「わかんないけど・・・やっぱ、あんた上手いと思う」

「そうか？」

そこで、もの凄く不審そうな顔をするのはなんでかな。

そんなことを思っていると、わき腹を優しく撫でていた手のひらが、するりとシンのものを包んだ。

「んっ」

「これは、上手いんだ」

自信ありげに笑うアスランが、なんだか格好よくて、そんな場合でもないのに、なんだか見とれてしまう。

「んんっ・・・」

しかも確かに、手でしてもらってるだけなのに、自分でするのと全然違う。

「たぶん、てか、めちゃめちゃ上手・・・」

「ありがとう」

そこで、はにかんで笑うのは反則だと思う。

どきどきが止まらなくなって、困る。

シンのものを指で刺激しながら、アスランは感じている少年の顔を、そっとうかがった。

かわいいなぁと、思った。

自分のようにスレてなくて、強がって見せるけど、素直で。

可愛い。

可愛いついでに、ちゅっとその可愛い先端に口付ければ、体ぜんぶがびくんと奮えて息を詰めた。

「遠慮せずいっていいぞ」

「遠慮じゃなくて、どっちかっていうとプライドなんですけど・・・」

アスランはそれを、鼻で笑った。

「こんな格好しててプライドも何も」

「ひっど、・・・ふぁ」

ぱくりと先を咥えられ、しなやかな指が、するりと裏を撫で下ろす。

そのまま横の双珠をくすぐられ、気持ちよくてたまらない。

「ん・・・ちょ、アスラン、さ・・・・」

若い体はすぐに絶頂を求め、そしてアスランの愛撫には容赦がない。

ずる、と喉奥まで収められ、ちら、と見上げた翠の瞳と目が合うと、もう、我慢が効かなかった。

「あ・・っう」

とくんとそれを飲み込まれるのは、なんだか凄く恥ずかしい。

ぺろぺろと、こぼれた分の始末をされるのも。

真っ赤になったシンの頬にキスをして、長い前髪をかき上げて、赤い瞳を覗き込む。

すっかり潤んだそれを、やっぱり可愛いと思いながら、アスランは深い深い声で囁いた。

「いいのか？」

「俺、何しに来たと思ってんですか」

「いや、溜まってるだけなら、出すの手伝ってやるだけでもいいかと思ったんだが」

「馬鹿にすんなよ」

シンの低い声がちょっと怖くて、アスランはごめんと謝った。

しまったな。怒らせるつもりじゃなかったんだが。

まあ、そうなら仕方ない。

諦めるか。

「ちょっと待ってろ」

「うわ、この期に及んで逃げる気ですか」

ベッドを下りたアスランに、慌てたシンがくってかかる。

信用ないなと思いつつ、まあ仕方ないなとアスランは笑った。

「準備だよ。何か潤滑剤の代わりになる物・・・シン、シャンプーとボディーソープどっちがいい」

なんていうか、妙なところでデリカシーのない人だ。

「確か、シャンプーの方が沁みなかったような・・・」

「沁みるんですか？てか、あんたそれでヤったことあるんですか？」

しかも両方。

「沁みたような・・・気がするんだが、確かアレはボディーソープ・・・？」

突っ込めば突っ込むほど、色々と怖そうなトコの出てくる人だ。

シンは内心冷や汗をかく。

しかしアスランは、そんなシンの心中など知らぬ気に、ベッドにポイと、シャンプーのボトルと小さな箱を放り出した。

「コレ何ですか？」

見慣れない白い箱を拾い上げ、シンは早速開けてみる。

「コンドームだよ。中で出すと、始末が悪いだろう」

「へー」

興味しんしんで中身を引っ張り出したシンに、アスランはふと思いついて聞いてみた。

「お前、童貞か？」

「１８でそうだった人に言われたくないんですけど」

むくれたシンに、慌てて言い訳をする。

「あんまり物珍しそうにしてるから、聞いてみただけだよ」

ぺりぺりと中袋まで開けてしまったそれを取り上げて、アスランは再びシンの足首を掴み上げ、バランスを崩した体をベッドに倒した。

「俺だって自分で使うとは思わなかったさ。・・・それから、お前はこっち」

すい、とアスランの体が近づいて、ひや、と、ソコに冷たい感触。しかしそれはすぐに温くなり、シンの中へ入ってくる。

「うゃ」

くすくすと笑う、アスランの声が、脚の間から聞こえる。無茶苦茶恥ずかしい。

「ヘンな声出すな」

「だ、だってっ」

慌てて起き上がろうとするが、つい、と胸を押されてあっさりとシーツに沈められた。急に動かした腹筋が、ちょっと痛い。

「慣れてないからだろ。わかってるよ」

くんっ、と奥まで指を突っ込まれた。

弄られる快感を覚えているソコは、きゅうっとアスランの指を締め付ける。

「ひゃ」

「可愛いな」

「可愛いって言うな・・・っ、あっ」

指を２本に増やされて、それを揃えて感じるところをつつかれた。

勝手に揺れる腰を、もう片方の手で押さえつけられ、支配される感覚に、性感がどんどん上がっていく。

やっぱ、この人すげえ上手い。

「んっ、あ、アスランさ・・・」

もっと欲しい、と。さすがに声に出来ない訴えに、アスランは小さく笑って「待ってろよ」と囁いた。

「待ってろ待ってろって、あんたそればっかり」

「急いでも、良いことないぞ。お前が痛い思いするだけだ」

身をもってそれを知っているのか、アスランはため息をついて、それからだいぶ蕩けたシンのソコに、シャンプーを足した。

沁みないけれど、さっきよりも冷たい気がする。

いや、そうじゃなくて。

自分の体が熱くなっているのだと気が付いて、シンはふる、と身を震わせた。

いかせてもらったばかりのそれも、もう頭を持ち上げて、もっと、と、恥ずかしいほどの欲求を伝えている。

「アスラン、さん・・・」

「だから、待ってろよ。コレ自分につけるの初めてで・・・」

何をつけているのかに思い至り、シンはまた起き上がろうとして、今度は額を小突かれた。

「見てて面白いもんじゃないぞ」

「え、でもどうやって付け・・・っやぁっ」

両膝を裏から掴まれて、しっかりと広げて持ち上げられる、恥ずかしい格好。

しかも。

「なんであんた脱いでないんですか！？」

「ああ、忘れてた」

「忘れんなーーっ！」

「すまない。でも、もう俺も限界だから」

ふ、と、顔が近くなって、頬に優しいキス。

優しい声。

「今は、少し我慢してくれ」

「ソレ、反則・・・ってうわあああっ」

ずく、と入られるときは、やっぱり痛い。

思わず逃げを打った腰は、しかしアスランの膝でしっかりと固定されて、まったく動かない。

「や、やっ」

「だから、我慢しろって」

声は優しいのに、動きには容赦がない。ずるずると、それはたちまちシンの奥まで侵入ってしまって。

「う、ぁ・・・・」

「苦しいか？」

ふるふると首を振ったのは、ほとんど反射だったけれど。アスランは、「偉い」と耳元で囁いて、そのまま耳朶を甘く噛んだ。

「ひゃ」

「ん、耳、イイか？」

「イイかって、あんたやめ・・・」

人にそんなことを聞いておいて、アスランはもうシンの前を弄りはじめている。

ナニやってんだよ！

「イイみたいだな。良かった」

んなコト言うなよ！

「動くぞ」

だからそんなイイ声で言うな！

シンの心の叫びも知らず、アスランはゆっくりとシンを突き上げだした。

「あ・・・や、はっ、あ、くぅ・・・・」

ナカを掻き回されるのは、まだ、あんまり慣れない。

それでも、体を支えてくれる腕は、安心できて。

望んだ熱は、心地良くて。

「ふぁ、あ、あ、アスラン、さん・・・」

「ん・・・っ、こらシンっ、締めるな」

ぐうっと奥まで占められて、そんなことまで、言われて。

「ば、かやろっ」

「馬鹿とはなんだよ、馬鹿とは・・・・この」

「やっ、ちょっ、ああああっ」

中を抉る動きを早められ、思い切り良く揺さぶられて、シンはもう、アスランにしがみ付き、甘い声で泣き喚くしかなくなった。

でも、見下ろすアスランのまなざしは優しくて。

シアワセ、と思ったとたんに、絶頂が、来た。

「だからなんでそこで落ち込むんですか」

「いや、別に落ち込んでるわけじゃ・・・」

「あんた、そゆトコわかり易いよな」

「・・・・・」

その後、シンにねだり倒されて、アスランも脱がされてもう１Ｒ。

ぐしゃぐしゃのシーツの上に座り込み、何故か落ち込んでしまったアスランに悪態を吐きつつも、シンはふと不安になった。

「なあ、もしかして、俺良くなかった？」

「は？いや、そんなわけないだろう」

「じゃあなんで落ち込んでんです」

「・・・・・・・・・」

アスランはシンから目をそらし、じいっとをシーツを見ている。

「結局、お前に手を出してしまったなと思って・・・その、ごめん」

シンは思わず拳をつくった。

誘ったの、俺だぞ？

「ふざけんなこの甲斐性なし！」

驚いたような顔をした人の手のひらに、それはあっさりと捕まったけれど。

ごめん、と、もう一度呟いたアスランが、優しく抱きしめてくれたから。

まあいいや、とシンは思った。

もともと当たるとも思っていなかったし。

「ごめん」

何度も謝るその人を、シンは悪戯っぽく睨んだ。

「じゃあ、キスしてくれたら許してあげます」

見上げた翠の瞳が、ちょっと見開かれてから、やわらかく笑む。

「それで、許してくれるなら」

優しいキス。優しい、人。

シンの好きな人は、優しすぎて、ちょっと甲斐性なしなのだった。

そんなところもイイ、なんて思ったのは、もちろん内緒だけど。

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