カズっちゃんに会ったのは、蛮ちゃんを探して街をうろうろしてた時だった。

「あ、カヅっちゃんだー」

「こんにちは、銀次さん」

カズっちゃんは今日もキレイで優しそうで、だからちょっと心細くなってたオレは思わずぎゅーって抱きついた。

「ねー、カヅっちゃん。蛮ちゃん見なかった？」

「いいえ。どうかしたんですか？」

あー、見てないのかー。

がっくりきたオレの背中をぽんぽん叩いて、カヅちゃんが心配そうに覗き込んでくるから、オレは慌てて首を振った。

「ううん。またおいてかれただけ。まーったく、すぐどっか行っちゃうんだから・・・」

ぐーーー

あう。

言いかけたトコでお腹が鳴って、オレはまたがっくり。

カヅっちゃんにくすくす笑われちゃったじゃないか蛮ちゃーん。

「僕もそろそろ食事にしようと思ってたので、一緒にどうですか？今手持ちがないので、僕の家で何か作るので、かまわなければ」

あうー、優しいよカヅっちゃーん。

うんうんってうなずくと、カヅっちゃんはにっこり笑って俺に手を差し出した。

その手と、ぎゅうって手をつなぐ。

カヅっちゃんの手は、前と変わんなくって、やっぱりあったかかった。

「そういえば、カヅっちゃんちって初めてだね」

今までも何回かごちそうしてもらったことあったけど、いっつも外だったから。

「そうですね。あまり一所に居つかないものですから・・・・どうぞ」

通してもらった部屋は、ワンルームだけどきれいに片付いてて、カヅっちゃんらしいなって思う。

そいで、カヅっちゃんは、『インスタントばかりで申し訳ないんですけど』って言って、スパゲティーと野菜のスープを作ってくれて、食べてる間にお肉焼いてくれて、それ食べ終わるころに炊き込みごはんが炊けて、オレ、久しぶりにお腹いっぱいご飯を食べた。

「ごちそうさまー。ありがとうカヅっちゃん」

お腹いっぱいって幸せだよう。

「どういたしまして」

床にごろんて転がると、にっこり笑ったカヅっちゃんが、最後にオレンジジュースをくれた。

おいしいよー。

「おかわり、いりますか？」

「うん！」

コップにもっと注いでくれたあと、カヅっちゃんもおんなじコップを持ってオレの横に座った。

へへへ。

オレとカヅっちゃんは、VOLTSの頃には、その、そんなコトとかもしてたから、仲いいんだ。

「でも、いっつも食べさせてもらってばっかりで悪いなぁ。ねえカヅっちゃん。オレになんかできるコトとかない？」

お金はないけど。

「いいんですよ。一人で食べるより、銀次さんと食べた方がずっと美味しいんですから」

「えー、でもなんか悪いよ」

だいたいカヅっちゃん食べてた？オレ食べるのに一生懸命でよく憶えてないけど、何か作ってるか、にこにこオレのこと見てるかしか、してなかったような気も・・・

「ねー、カズっちゃあん」

なんだか情けなくなってタレてみる。

そしたらカヅっちゃん、オレを膝の上に乗っけてくれた。

わあーい、きもちいいー。

「じゃあ、ひとつだけ、お願いしてもいいですか？」

「うんうん、何？」

「今夜・・・泊まっていきませんか？どうせ、美堂君が見つからないと、寝る場所もないでしょう？」

カヅっちゃんの甘い声が、耳のすぐそばで聞こえる。

「うんっ、泊めてくれんの？ありが・・・」

ってええええええええ！

「朝ごはんもつけますよ。どうですか？」

細い指が、タレるとほとんどなくなっちゃう首の辺り撫でてるよー。

わああああああ。

お腹減ってると、そういうのって後回しになっちゃうけど、今お腹いっぱいだからほんとにその気になっちゃうんだけどカヅっちゃん！

おいしいご飯食べて、おいしいカヅっちゃん食べて、おいしい朝ごはん・・・・

でもそれ、すごい情けない気がするんだけどカヅっちゃあん！

どきそきしながらカヅっちゃんの顔見上げると、カヅっちゃんは初めてみるような・・・ええと、なんていうのかな、すごく穏やかっていうか、静かっていうか。ああそっか、いつもカヅっちゃんそうなんだけど、今日はもう特別っていうか、・・・そんな顔してたから、オレはすこんと落ち着いた。

「えーと、いいの？」

「ええ。快くしてくださいね」

「うん！」

久しぶりに見るカヅっちゃんの体は、やっぱりキレイで、ちょっとヤらしい。

ちりちりと音をたてて髪留めを外す仕草なんか、誘ってるみたいで・・・・

ていうか、誘ってんだね。

だからオレは、髪留めを持ったまんまの手を掴んで、自分の方に引き寄せた。

そしたらすぐにキスをねだってくるカヅっちゃんが可愛くって、いっぱいキスをした。

「ん・・・銀次、さ・・・」

濡れた唇が、オレの名前を呼んでくれるのは、すっごいクる。

「カヅっちゃん、可愛い」

キレイで気持ちいい胸や背中をたくさん撫でて、全身がピンク色になるのを愉しんだ。

カヅっちゃんだってされるばっかりじゃなくて、時々オレの指や腕にキスをくれるから、すぐに、ふたりで気持ちよくなれる。

「カヅっちゃん、後ろ、いい？」

「はい・・・んんっ」

カヅっちゃんの口に指を挿し込むと、唾液をたっぷり乗せてくれるから、それをこぼさないように後ろにまわして、狭いその場所を開きにかかった。

「あれ？カヅっちゃん、もしかして、随分してない？」

カヅっちゃんのここ、いっつも狭くって気持ちよかったんだけど、それにしても今日は狭すぎるよ。

「ええ・・・でも、大丈夫ですよ・・・・処女じゃないんだから、すぐ、入ります・・・・」

「でもさ、オイルとかない？このまんましたら、絶対痛いよ」

オレ、カヅっちゃんに痛い思いなんかさせたくないよ。

「大丈夫です・・・ね、銀次さん・・・・」

身をくねらせてオレから体を離したカヅっちゃんは、そのままおずおずと脚を開いて、オレに濡れたそこを見せ付ける。

あうー、だめだ。男の本能に負けちゃうよー。

オレは、形のいい脚を掴んで、もっと大きく広げさせた。

「ごめんね、カヅっちゃん。痛かったら言ってね」

止められるかどうかはわかんないけど。

「はい、銀次さん。・・・・っ、くぅ・・・・・」

うわぁ、狭い。でも、すごい気持ちいい。

屈みこんで、もっと深く突っ込みながら長い髪をかき上げて、隠れてたカヅっちゃんの顔を覗き込む。

きっと、すごく痛いんだろうな。キレイな瞳に涙を浮かべたカヅっちゃんは、それでもオレの顔を見て、吐息だけで「ぎんじさん・・・」ってつぶやいた。

反則だよ、カヅっちゃん。

そんなふうにしたら、どんな男でもオチちゃうよ。

ぎゅうぎゅうと、痛いくらいに締め付けてくるカヅっちゃんの中を、オレはめちゃくちゃに突き上げた。

「あっ、あっ、あぅ、んぅ、あああん・・・」

カヅっちゃんの声とか表情からじゃ、痛いのかイイのか、よくわかんない。

でも、オレの動きに合わせてくる腰の動きが、痛いばっかりじゃないのを伝えてくるし、前の方は、もう雫をこぼしながらいっぱいに張ってて、嬉しい。

「銀次さん、ぎんじさ・・・ああっ、ぎんっ・・・じ・・・・」

ああ、カヅっちゃん、可愛いなぁ。

そのまんまオレは、カヅっちゃんの中に出しちゃって、カヅっちゃんもオレの手の中に吐き出して。でもお互い久しぶりだったもんだから、それだけじゃ、足りなくって。

「銀次さん・・・もっと・・・？」

甘ったるく歪んだ声で、聞いてくるカヅっちゃん。

「うん。いいかな？」

「嬉しいです・・・」

今日のカヅっちゃん、すごいかわい・・・

「ぎんじ、さん・・・・」

きゅうっと、細い指がオレの腕に食い込んだ。

痛いくらいの力で。

痛いのは、腕のはずなのに、なんでかな。

胸が痛い。

ああ、そっか。

かわいい、んじゃない。

かわいそう、なんだ。

隙間もないくらい、ぴったりくっついてるのに、それでも足りないみたいで、きゅうきゅうとオレの胸に額をすり付けてるカヅっちゃん。

無限城で抱き合ってたとき、こんなことなかった。

きっと。

オレは、外で幸せだけど、

カヅっちゃんは外で幸せじゃないんだろうな。

だって外には蛮ちゃんがいるけど、

だって外には十兵衛はいないんだから。

だからオレは、ぎゅうってカヅっちゃんを抱きしめてあげた。

無限城で、寒くて寒くて仕方がなくて、でも、寒いことにさえ気がつかなかったオレを、あっためてくれたカヅっちゃん。

だから、カヅっちゃんが寒いとき、オレがあっためてあげられたらいいな。

「あ・・・あ・・・・はんっ・・・・」

今度は緩やかに動き出したオレに感じて、ひくひく動くカヅっちゃんの体がどうしょうもなく可愛くって、俺はいっぱい、・・・ちょっと、いっぱい過ぎなくらい、カヅっちゃんを可愛がっちゃった。

だってカヅっちゃん可愛いんだもん。

だってオレ、カヅっちゃんすっごいスキだもんな。

「すみません。何か、餌で銀次さん釣ってしまったみたいになってしまいましたね」

「ううん！ありがと。ごちそーさまぁ」

朝ごはんは、ごはんとお味噌汁と魚の缶詰と、コレなんだろ？野菜？なんかそんなので、オレまた、お腹いっぱい食べて。

「お腹いっぱいになりましたか？銀次さん」

「うん！」

「じゃあ、残りはおにぎりにしておきますから、美堂クンと食べてくださいね」

「うん。・・・ねえ、カヅっちゃん」

「はい？」

『十兵衛が側にいなくて、カヅっちゃんはそれでいいの？』

そう言おうとして、口を開いて。

でも、やっぱりやめて、オレはカヅっちゃんが作ってたおにぎりをひとつ、開いたままの口に突っ込んだ。

なんか、よくわかんないけど、それはたぶん、オレが言っちゃ、いけないんだ。

「おいしいね、カヅっちゃん」

「ありがとうございます」

にっこり笑ったカヅっちゃんに見送られて、オレは新宿の街に出た。

空が青い。

太陽の光がちょっと、目にしみる。

でもすぐに、十二社通りにてんとうむし君を見つけて、その側でタバコ吸ってる蛮ちゃん見つけて、オレは走っていく。

「蛮ちゃ〜ん」

「何やってたんだよ、銀次ィ」

ああ、蛮ちゃん機嫌悪そうだ。おにぎり全部取られちゃうかな。ひとつ、先に食べといて良かったな。

ぼくん、とひとつ、殴られて、それでも蛮ちゃんいて良かったってすごく思う。

スキなヒト、側にいて。

すごくよかったって、オレ思うよ。カヅっちゃん。