それがいいの
肌の上を滑る手のひらを、少しくすぐったく感じて、アスランはふるりと体を震わせた。
とたん、ぱっと顔を上げて。
顔をのぞき込んできた、アスランの恋人。
「あ、気持ちよかったですか！？」
惜しい。
「いや、くすぐったい」
素直にアスランが答えると。
「何ですかソレ！？」
雰囲気台無しー！と騒ぐシンは、自分がそれをぶっ壊してしていることに、たぶん、気がついていない。
「お前とシてる時点で、雰囲気もなにもないだろう」
だからアスランは、そう、バカ正直に教えてやった。
とたん、シンは涙目になって。
「だって、雰囲気とかどうやって作ったらいいんですが・・・」
「・・・んー」
それには、アスランも首を傾げる。
「俺も知らない」
アスラン・ザラ。
雰囲気も空気も、あんまり関係ない男。
それを思い出し、シンはもういいですと涙声のまま呟いた。
「アンタにそんなもん聞いた俺が悪かったです」
だから、とにかく感じさせてあげなくちゃと、どう考えても絶対感じる、脚の間のモノに触れる。
って、なんかもう勃ち始めてるし。
くすぐったいとか言ってたけど、結構気持ちよかったのかな。
シンは、それだけで機嫌を直した。
ぱっと変わったシンの表情に、アスランはちょっと、頬をゆるめる。
行動は大ざっぱだし、雰囲気は作れないし、まだまだいろいろヘタクソだし。
欠点を上げればキリがないけれど、それでもシンはアスランの恋人なのだ。
恋人が嬉しそうにしてくれれば、アスランだって、嬉しい。
「っあ・・・・・」
それに。
「気持ちいい？アスランさん」
シンだって、一生懸命アスランの良いようにと頑張ってくれているのだと思うと。
やっぱり、凄く嬉しい。
「ん・・・もう少し、強くても、イイ」
「痛くない？」
「ん」
気を使ってくれると、嬉しい。
アスランを弄る手はぎこちなくて、自分でするときはきっともっと巧いだろうにとも思うのだけれど。
それでも、一生懸命になり過ぎているせいだとわかるから、そのぎこちなささえ愛おしくて、気持ちがいい。
だから。
「シン」
名前を呼んでやって、アスランを柔らかく掴んだ手を取って。
それを、もっと後ろに導いてやる。
「いいの？」
そうすると、シンは嬉しそうにして、それでも遠慮がちに、そこに触れる。
初めてした時に、傷を付けてしまったことを、未だに怖がっているのだと知っているアスランは、少しもどかしく思うのだけれど。
でもやっぱり、それも嬉しいのだ。
「あ、新しいローション買ってきたんです」
ゆっくりとソコに触れて、傷つけないように、細心の注意を払って。
それでもシンの注意なものだから、時々うっかりして。
薬局のおじさん推奨の、ちょっと良いローションの滑りが良すぎて、勢い良く指が奥まで入って、お互いにびっくりしたりなんかして。
「っ！」
「うわ、すいません！」
「い、や・・・」
でもそれも、やっぱり、気持ちいいのだ。
「なんだか・・・たぶんもう大丈夫だ」
「え、もう？」
ホント？ホント？と、心配なのと嬉しいのとが、見事にごっちゃになった顔でのぞき込まれる。
ホントだよ、と言ってやると、ぱあっと笑って、それからじたじたとズボンを脱いだ。
アスランは、シンのその仕草が好きだった。
ぽうっと見上げながらシンを待つ、その時間が好きだった。
「アスラン、さん」
興奮を抑えきれない声で、名前を呼ばれて。
熱い手のひらで、脚を支えられて。
頑張っているシンが、がんばって入ってくる、この瞬間が、好きだった。
「っ、あ・・・・」
それでも、あんまり啼いてやるのも癪なので、息を逃がして声を殺す。
そうするとシンは、アスランを感じさせようと、せっせと腰を使って、もっと頑張ってくれるのだ。
「ふ、ぅ、ン・・・・」
腰をよじれば、当たりどころが変わる。
それが気持ちよくて、また、喘ぐ。
「きもちいい？アスランさん」
「ん・・・・」
頷く代わりに腕を引き寄せ、声に出さずに抱きしめろと促して。
繋がっているソコを、もっと、もっとと押しつけて。
「ん、ぁ、・・・シ、ン」
シンのソレが、自分の襞を、くちゃくちゃとかき回してくれるのを、たのしむ。
実は、シンのモノは、アスランには、少しだけ、ちいさい。
一番感じるその場所に、当たるか当たらないか、もの凄く微妙なところまでしか届かない。
でも。
「っ、あ、シ、ン。シン・・・っ！」
そのもどかしさにハマった、と言ったら、シンはきっと、さっきよりももっと涙目になって、「何ですかソレー！？」とか騒ぐのだろう。
さすがにわかっているので、アスランもそれは言わずに。
シンの、細い首を引き寄せて。
その仕儀差に、いっそう煽られたシンは、もっともっとと頑張ってくれて。
「はっ、ああっ、も・・・・っ」
もどかしい快楽に、体中を悶えさせて、感じる。
それがイイ。
「アスランさん、アスランさんっ・・・！」
シンの声が、間近で聞こえる。
それに応えて、汗のにおいのする髪に、キスをしてやる。
とたん、無理な姿勢でキスをしてきて、中のものが浅くなった。
だから、もっと、と腰を押し付けると。
唇が離れて、真っ赤な瞳と目が合った。
それがにこりと笑んだのを見て、アスランは達する。
もどかしいけれど。
雰囲気もないけれど。
それでも。
「シン」
手を伸ばす。
抱きしめる。
「アスランさん」
抱きしめ返される、熱い腕。
アスランは、それが。
シンが、いいのだ。