その髪の先まで
短くなった髪の間を十兵衛の指がかいくぐり、その感触を確かめるように、柔らかくかきまわした。
「切ったんだな」
「うん」
頷いて、下がった顎を取られて仰のくと、自然に、目が閉じる。
触れるだけのキス。十兵衛にしては珍しい。
目を開けて、逞しい首に腕を絡め。
もっと、と、ねだる。
とたん、降りてくる熱いキス。
十兵衛、の。
そのまま抱き込まれ、昂ぶった十兵衛を全身に感じた。
嬉しい。
君を奪り還せたことが、理屈じゃなく、カラダでわかって、嬉しい。
「じゅうべえ・・・」
自分の声が、すっかり濡れているのが恥ずかしい。
「かづき」
十兵衛の声も、ひどく熱を持って。
腰にまわされた手のひらに、明確な欲求を持って力がこめられる。
押し付けられた熱。くらくらしそうだ。
「ん・・・ねえ、ベッド・・・・」
くだけた下肢を、腰の手のひらだけで支えられ、喉に、項にと吸い付かれ、すっかりとろけた声で誘う花月を、十兵衛は勢い良く抱き上げ、ベッドへ落とした。
再び髪を乱されてのキス。
するりと指を通った髪は、すぐに途切れて指を寂しくさせたが、長い髪を背にしない花月は、以前よりもずっと、幼く見えて。
そう、初めて会ったときも、このくらいの長さだった。
初めて、この髪に触れた時の熱い思いは、未だ十兵衛の胸にある。
今はもう、それだけでは足りないけれど。
緩く体を包んだ上着を取り去り、しなやかな体を際立たせるアンダーを一息に胸まで掴み上げる。
現れた胸の先は、既に赤く尖っていて、食べ頃に熟れていた。
それに、噛み付き。
「あんっ」
悲鳴を上げさせ。
もう片方も、軽く撫でてやりながら、久々の指に吸い付く肌を愉しんだ。
「あ・・・じゅうべ・・・・」
久しぶりの手のひらに、ぞくぞくしてしがみつく。
思わず彼に摺り寄せていた腰を、強い力で押し返された。
甘い予感が下肢を震わせ、十兵衛はその望みどおりにベルトを外し、一息にそれを引き下ろして白い脚をあらわにした。
「・・・っ・・・・・」
羞恥と、期待と。既に濡れはじめたものがひやりと冷える感覚に、身を震わせる花月を抱きしめ、十兵衛はその裸体のしなやかさを確かめる。
「変わらないな、お前は」
髪を切ろうと、瞳に痕を受けようと。
「変わるわけないよ」
囁いた唇に、口付けて。
十兵衛は、花月の下肢に、指を添えた。
「あ・・・」
侵される期待に、ひくつくそこ。
軽く笑って差し込めば、何の潤いも与えられていないはずのそこは、難なくそれを受け入れていく。
「あ、んっ、十兵衛・・・」
指に絡みつき、熱くうねる襞。
かき分けられる感覚に、花月は身を震わせた。
「ここは、変わったがな」
初めて十兵衛を受け入れたとき、痛みに泣いていたそこが、今は、十兵衛欲しさに甘く甘く泣き濡れる。
「君の・・・せいだよ・・・・っ、あん」
「ああ」
増やされた指に軽く声を上げた花月は、するりと男の背へと腕を投げた。
「責任・・・取って、くれるんだろう？」
「もちろんだ」
間髪入れず返された答えに、艶やかに笑った花月に口付け。
十兵衛は、そのしなやかな脚を大きく開かせ、自分のために変わった可愛らしい場所に己のものを突き立てた。
「あ、あぁん・・・・」
甘い声が喉をついて、背にまわった腕に力がこもる。
花月の内は、熱く淫らに十兵衛を迎え入れた。
「今日は離せないぞ」
十兵衛の声も、自然に熱くなり。
「う、ん。・・・離さ、ないで・・・・」
花月の艶やかな声が、それに重なる。
短くなった髪を、何度も梳きながら。
その先までも愛しい存在を、十兵衛は、きつくきつく抱きしめる。
後は、ただ。
時間が、思いを快楽に重ね。
しとやかに、過ぎていく。