そんな夜
寝室から洩れ聞こえる声に、ああ、またかとシンは思う。
攻略中のゲームが一段落して、キッチンでコーヒーを入れていたときには気がつかなかったけれど、部屋に戻ろうと居間を通ればあからさまだ。
特に意識しなくても聞こえてしまうその声は、耳を澄ませば本当によく聞こえて。
「あぁ・・・あん・・・・っ」
高く上がる、アスランの声。
低く囁いているはずのイザークの声は、低い分だけ聞こえにくいけれど。
いいなぁ、とシンは思う。
実は、シンも何度か混ぜてもらっている。
アスランさんの手、気持ちいいんだよなぁ。
入れるのはダメ、と言われて、たいてい手でしてもらうのだけれど、それだけでもの凄く気持ちいいし、機嫌がよければ口でしてもらえることもある。
その代わり、イザークがいないときは、アスランは絶対そういうことはしてくれない。
そういうとこ固いんだよな、と思うことは、何故か不満よりも、よりアスランを好きだという気持ちに変わる。
それだけ愛されているイザークが、羨ましいな、とは思うけど。
でも、あの人は、俺のことだってかなり好きなんだって、最近凄く思えるようになった。
シンを呼んでくれる声や仕草。
抱きついたって、近頃は怒られない。
・・・代わりに、イザークに二人して怒られたりはするけれど。
「や、あ、・・・ああっ」
アスランの、極めた声。思わず体が反応する。
したいな。
ダメかな。
そうっと寝室のドアに近づいて、細く、それを開けてみた。
とたんに、ベッドの上でアスランを組み敷いていたイザークと目が合って、しまったと思う。
気がついたのがアスランなら、呼んでくれたかもしれないのに。
しかしイザークは、まだしっかりとアスランを貫いていたもので彼を突き上げ、声を上げさせてから、ニヤリと笑った。
「アスラン、仔犬が来てるぞ」
達したばかりのアスランは、状況がよく飲み込めないのか、ぽうっとした顔でシンを見上げている。
「だから犬じゃねえって・・・なあ、混ぜてくんない？」
どうせ怒られるならと、やけっぱちで胸を張った。馬鹿だ、自分。
しかし、完全にボケていたはずのアスランが、シンを見とめてふうっと笑んだ。
「・・・ああ、来いよ」
喘ぎにかすれた声が色っぽい。
「いいの？」
思わず、シンはアスランではなくイザークに聞いてしまったが、彼はふん、と笑って鷹揚に頷いた。
「まぁ、たまにはな」
「大人になったなぁイザーク」
「貴様とは違うっ！」
余計なことを言うアスランをうつ伏せにひっくり返すと、イザークはその腰を掴み上げてそのまま深く、突き上げた。
「あ・・・っ。馬・・・っ鹿」
「小僧の相手をしやすくしてやったんだ。ほら、来い」
犬のように呼ばれて、むっとしつつも逆らわずに、シンはアスランの前に膝を付いた。
「おじゃましまーす」
その言いように、アスランは思わず笑みをこぼす。
「ば・・・か、っあ・・・・」
「あんた、そればっか」
「うるさ・・・っしてやらないぞ」
言いながらも、アスランは片肘で体を支えて手を伸ばした。
だから、シンは慌てて自分でベルトを外して。
チャックに触れた長い指。そこから先は、その持ち主がしてくれる。
取り出されたシン自身は、アスランの痴態で、もう随分硬くなっていて。
それに、また笑ったアスランは、珍しく、すぐに口を開いてくれた。
「えっ、あっ、いいの？」
答えずに。
アスランは、シンのズボンを掴んで引き寄せる。
それに甘えて、既に赤く熟れきった唇に押し込めば、そこから背筋に、どうしようもない快が駆け上がった。
熱い口腔に含まれるだけで気持ちいいのに、アスランはすぐに舌を絡めてくれて。
「ん、ん・・・・」
よほど機嫌がいいのか、それとも単にしたい気分なのか、喉の奥まで使って、濃厚な奉仕をしてくれる。
「美味いか？淫乱」
そこでニヤリと笑ったイザークが、奥の奥で留めていた自分を、ずるりと抜きだしてみせるから。
「ぅんっ」
うめいたアスランの喉に、シンはぎゅうっと締めつけられた。
「ちょっ・・・深すぎ。息できてる？アスランさん」
「余裕だな貴様」
「だって・・・・うわっ」
イザークの揶揄に、反応したのは何故かアスランだった。
いっそ食らいつく勢いで、シンのものにしゃぶり付き、柔かく歯を当てて、まるで搾り取るように扱くから。
「アンタ、凄過ぎ、っ！」
「ん・・・んっ、んんっ」
それに合わせるように、イザークも腰を使い出したものだから、シンが堪えきれずに吐き出すのと一緒に、アスランも果ててしまっていた。
「うんっ、あ・・・」
あまりにも深く咥えていたもので、上手く飲み込めずに、アスランはぼたぼたとシンのものをこぼしてしまって。
そのさまがあんまりイヤラシイから、シンはイザークの様子をうかがいつつ、白濁に濡れた唇を、ぺろり、と、舐めてみる。
「ん・・・・」
イザークは機嫌よく笑っていて、アスランはもっと、というようにその唇を開いてみせるから。
シンは、ちゃんとしたキスをして。
苦い自分と一緒くたに、甘い彼をたっぷりと味わった。
「・・・まったく、貴様、コイツのどこがそんなにいい」
アスランから抜き出したイザークが、藍色の髪をかき回しながらそう言う。
「その言葉、そっくり返しますけど」
その動きに引かれるように、離れた顎を捕まえて、シン。
「たいがい失礼だぞお前ら・・・」
ぼやいたアスランは、イザークの膝を蹴ると、シンの指にも噛み付いた。
「痛っ、て」
シンはすぐに手を引いたけれど、イザークは慣れているのかものともせずに、その蹴った脚を掴み上げてしまう。
「フン、物好きなんだよ、俺は。・・・おい小僧、ヤってみるか？」
「え、いいの？」
「イザーク！」
嬉々としたシンの声に、驚くアスランの声が重なった。
「たまには、違うモノ咥えてみるのもいいだろう」
「ちがうものって・・・」
肘を崩してベッドに寝転んでいたアスランは、脚をイザークに取られたまま、蕩けた瞳でシンを見上げた。
淫らに色づく翠の瞳。
シンの心臓は跳ね上がる。
「・・・・お前が、いいなら」
「させてくださいっ！」
勢い込んだシンに、少し、笑って。
「本当に物好きだな、お前」
アスランはそう言って、もう片方の足でイザークを蹴って、どかした。
今まで「面倒見てもらう」ことはあったけれど、「させてもらう」なんて初めてで。
シンはどきどきしながらその肌に触れた。
指を押し返す弾力の、すべすべとした綺麗な脚。
それを押し上げればすぐに見える、ついさっきまで、イザークを飲み込んでいたそこ。
アスランの腕がするりと伸びて、シンの首に絡んで。
抱き寄せられた肌の匂い。
やばい。すっげーどきどきする。
「いいですか？アスランさん」
「ああ・・・」
笑った唇が、誘っているのがわかる。
だから、そこにキスをして。
それから、慎重に、自分を、彼の中へ。
「あ・・・ふっ」
「うゎ・・・」
そこは、熱くてきつくて、なのにやらかくて気持ちよくて。
それだけで、経験の少ない少年には、刺激が強すぎるというのに。
シンの下で、シンを受け入れて。
シンのモノで、感じてる人。
喘ぐように、息を継ぐ唇。
とろとろに溶けた、翠の瞳。
形の良い眉が、切なげに寄せられて。
シンの背を抱いた腕にも、きゅうっと力がこもる。
挙句に。
「シ、ン・・・」
そんな声で呼ばれたら。
俺・・・っ
「・・・あのな、早いぞ貴様ら」
呆れたようなイザークの声に、シンはやっと、我に返った。
思い切り放ってしまったアスランの中は、はっきりとわかるほどぐしゃぐしゃに濡れていて、桜色に染まった肌には、アスランが自分で放ったものが飛び散っていて。
「うるせ・・・っ」
その光景を振り払うように、シンはわめいて、起き上がろうとする。
「はんっ」
すると、中にまだシンを収めたままのアスランが、酷く艶めいた声を上げた。
「あ・・・ご、ごめ・・・・」
ずる、と抜き出すと、最後にそこが、きゅ、と名残惜しそうに絞られて。
若いシンに、それは、たまらなくて。
「早かったからな、もう一回くらいなら許してやる」
イザークはそう言うと、サイドテーブルのグラスに、カラリカラリと氷を足した。
「・・・何が、許してやる、だ」
先に反応したのはアスランで、呆然としている少年の腰に、そのまま脚を絡めて。
「お前も・・・あれで終わりじゃないだろ」
そう言って、艶めいた唇で笑うから。
「は・・・はいっ」
勢い込んだシンは、絡みつく細い腰を抱き上げて、今だ硬度を失っていないもので再び深く突き上げた。
「はんっ」
跳ねる体の艶やかさ。気持ちよく包み込む中。さっきよりも余裕のあるシンは、それに深く息をつく。
「アンタ、すごい・・・」
「馬、っ鹿・・・あふ」
試しに軽く引き抜いてみれば、擦れる被だがねっとりと絡みつくのがわかる。もの凄く、気持ちいい。
「当たり前だろう、俺が仕込んだんだからな」
横から手を出したイザークが、つい、とアスランの唇を撫でた。
とたん、腰が揺れて、中が締まる。
「ぅん・・・・」
「それだけで、感じちゃうの？」
アスランの反応に唇を尖らせたシンに、アルコールを含みながらイザークが笑った。
「ソレで、もっと感じさせてやればいいだろうが」
「・・・・っ、わかってますっ！」
むきになったシンは、一生懸命に腰を使いだす。
本当は、またすぐにでもイきたいのだけれど、男の意地と、自分に感じて喘いでいるアスランのために、必死で我慢だ。
それなのにイザークは、シーツに擦り付けられたアスランの髪をくしゃくしゃと撫でて、ほの赤く染まったアスランの頬や唇に、何度もキスをしはじめて。
それが、本当に愛しそうなキスで、アスランも、気持ちよさそうにそれを受け止めていて。
シンはちょっと、泣きたくなった。
「アスランさんっ」
呼ぶと、自分を見てくれた翠の瞳がちらりと笑んだ。
そうして、イザークにキスをひとつ返すと、とたんに邪険な仕草で押し退けて。
そうして、シンの腕を掴んで引き寄せる。
「仕方ない・・・奴だな、お前は」
彼は、そう言ってわずかに首を上げてくれるから。
シンは、がばりと覆い被さると、濡れた唇にキスをした。
深く体を折り曲げて、酷く辛そうな姿勢だったけれど、それでもアスランは丁寧にキスに応えてくれた。
それだけで、シンはすっかり舞い上がってしまう。
このヒトが、全部手に入ったような感覚。・・・錯覚。
「んぅっ」
中で動けば、喘いで泣いて。
体全部でシンに応えてくれるから。
シンは、夢中でその人の体を愛し尽くした。
この、淫らでヒドイ人。
やっぱり、大好きと思いながら。
ゼイゼイと息をつきながら、シンは勝ち誇ったようにアスランを見下ろした。
「どうでしたかっ！？」
「早い」
「アンタには聞いてません！」
後ろから呟いたイザークに怒鳴り返し、シンは圧し掛かったままの人に、繰り返し、聞いた。
「・・・・？？」
しかし、後ろでイかされたばかりのアスランは、完全にボケている。
とろんとした目でシンを見上げ、それから、酷く無垢に微笑んで。
「寝ないでください！」
「寝るな、こら」
二人がかりで起こされた。
「んーー」
それでも、その満足した様子に喜んで、シンはぐちゅりと自分を抜き出す。
「うわ」
とろ、と、シンのものを伝いおちたものが、アスランの脚にほたほたと落ちた。
もの凄く、いやらしい眺め。
思わずほうっと見とれてしまったシンを横目に、イザークがまた、横から手を出してくる。
「貸せ」
そう言うと、投げ出された脚を掴んで開き、ふっくりと染まったそこに、無造作に指をねじ込んでしまった。
「あっ、ん・・・・」
「随分出したな」
そこからは、シンとイザークの放ったものが、とろりと溢れて。
「や、め、イザークっ」
恥ずかしそうに身を捩ったアスランは、更に体内からふたりの体液を溢してしまい、指を入れられたままのそこを、ふるふると震わせる。
「綺麗にしてやってるんだ。感謝しろ」
ぞんざいに言い放ったイザークは、シンにグラスを押し付けて。
「次は、俺の番だな」
ニヤリと笑って、アスランの腰を引き寄せる。
「え、ええっ・・・・」
「この、馬鹿っ」
再びイザークに貫かれ、びくびくと身を跳ねさせるアスランを見せ付けられて、シンは受け取ってしまったグラスを握り締めた。
「アンタ、ずるい・・・」
「フン、もともとコレは俺のものだ」
「だ、れが・・・お前の、ものだっ！」
イザークの下でアスランがばたばたと暴れ、あーでもイイ眺め、などと思いながら、シンは渡されたアルコールをすする。
淫らで、のん気な。
そんな夜。