シンの宝物
誕生日に、バースデーケーキとハロをもらった。
去年もハロをもらったし、その前の年も、前の年も、やっぱり誕生日プレゼントはハロだった。
はじめはなんだこりゃと思ったし、文句も散々言ったけど、そのうちシンは気がついた。
アスランさんにとって、プレゼントって、ハロなんだ。
だからシンは、今年も大人しくハロをもらった。
今年のハロはエメラルドグリーンで、スイッチを入れると調子っぱずれに歌いながら跳ね回りだした。
「ハッピバースデーツーユー、ハッピバースデーツーユー、ハッピバースデーディアシーンー・・・シン！シン！オメデト！オメデト！」
「・・・なんで最後まで歌わないんですかコレ」
大人しくもらっても、これは突っ込まずにはいられない。
しかしアスランは、ハロを入れていた箱を片づけながら、やたらと綺麗な緑の瞳をまあるくして、「は？」とホントにわかっていない顔で首を傾げた。
「・・・いえ、いいです」
聞いた俺がバカでした。
速攻で諦めたシンは、飛び回るハロをはっしと捕まえて、とりあえずスイッチを切る。
アスランは残念そうな顔をしたけれど、ベッドの周りで跳ね回られても正直困る。
だからそれを、大事に机の上に置いて。
それから、大事な人を真正面からぎゅうっと抱きしめた。
「もいっこプレゼントください」
そうすれば、アスランはちょっと困ったような、でも、嬉しそうなくすぐったそうな声でもって、シンの耳元で答えてくれる。
「・・・しょうがないな」
しょうがないのはアンタだろ、と、言ってしまう前にキスをする。
ちゅ、ちゅっ、と、触れる唇は柔らかくて、とってもとっても気持ちいい。
しかも、気持ちいいだけじゃなくて、いい匂いがして。
もっともっと欲しくなって、シンはアスランを、ばたんとベッドに押し倒した。
あまりの勢いに、スプリングが跳ねる。
あらぬ方向に間に髪の毛を跳ねさせたアスランが、本当にしょうがないというような顔をして、シンを甘く睨んだ。
「シン、靴」
「はいはい」
ぽい、ぽいとベッドからはみ出した足から靴を放って、ついでに靴下も脱がせてしまう。
現れた足先は白くて、シンの喉をごくんとさせた。
「もうオトナなんだから、余裕を持てよ」
アスランの呆れた声を聞きながら、自分の靴も脱ぎ捨てて。
「アンタがエロ過ぎるんだろ」
そう言い切ってから、のしっとその上にのしかかる。
倒された弾みで乱れた髪の合間から、見上げる瞳を潤ませて。伸ばした指で、シンのボタンを外し出すアスランは、ホントにエロい。
シンも負けじとアスランのシャツに手を伸ばす。
布地一枚剥ぎ取るだけで、肌の匂いが強くなる。
アスランの、いい匂い。
大好き。
惹かれるままに、胸元にむしゃぶりつけば、滑らかな肌がシンの唇を迎えた。
さっきのキスも気持ち良かったけど。
こっちのキスも、気持ちいい。
ふごふごと胸に吸い付いていると、シンのボタンを外した指が、今度はシンの髪にかかって。
さらさらと、心地よく撫でてくれてから、不意にぎゅーっと髪を掴んで引っ張った。
「い・・・っ、何すんですか！」
無理矢理上げられた顔は涙目で、なんだかちょっと、とっても可愛い。
「ん」
「何なんですか！もう！」
なんだか満足げに頷いたアスランに、言っても仕方のない文句を付けながら、シンは愛撫を再開した。
あちこちキスした胸から腹へ。
ベルトを外してジッパー下げて、おヘソにキスして。
それから、おもむろにズボンの裾をひっ掴むと、ずるーり、と、長い脚からそれを抜き取ってしまう。
「うわ」
いきなりそう来るとは思わなかったアスランが、抜く途中で暴れたものだから、なんだか半端に下着がズレて、ちょっと面白いことになった。
「アスランさん、半ケツ」
「お前のせいだろ！」
シンのことを蹴り飛ばそうにも、ずり落ちたパンツがジャマで巧く蹴れない。
そんな珍しくじたじたしているアスランの様子に、うっかり見とれかけて。
それでも本気で蹴りに入られる前に、慌てて下着も引きずり下ろした。
「破けちゃいますって、アスランさん」
「なら、さっさと脱がせろ」
なんだか無茶なことを言って、結局胸を蹴り飛ばされたシンは、その足首をぱしんと捕まえた。
この脚で、本気で胸なんか蹴られたら心臓が止まる。
アスランが、他愛のないじゃれ合いを仕掛けてくるのは、甘えているのだと気が付いたのは、実は最近のことだった。
だってさ。
シンは、足首を掴まれて、絶妙なカンジに開かれた、脚の間を見下ろした。
ゆらゆらと揺れる膝が、大事なところを隠したり隠さなかったりしているのが、丸見えなんかよりも全然エロい。
この人を前にしたら俺、いつだって余裕なくなっちゃうんだから。
それでも、気がつけるようになったんだから、やっぱりオトナになったのかなぁ。
そう思って、思わずにへらとだらしない笑みをこぼすと、何かを察したアスランが、ちょっと力を入れてドカンと蹴った。
「い・・・っ、ナニすんですか！」
「気持ちの悪い笑い方をするな」
何だよソレとこぼしながら、シンはすべすべと気持ちのいい脚を両方とも捕まえて、その間に入り込んでしまった。
これで、もう蹴られない。
腹筋で起きあがって、殴ったり頭突いたりはできるけどさ。何度もやられたことあるけどさ。
今日は、俺の誕生日なんだから、アスランさんだって、きっとそこまえはしないだろう。
・・・たぶん。
希望的観測を胸に、シンは捕まえた脚にもキスをして。
ゆっくりゆっくり、でもちょっと急いで、そのキスを、脚の間まで落としていく。
「ん・・・っ」
アスランさんは、腿の内側がとっても弱い。
うんまあ、耳も首も背中も脇も、踝も足先もみんな弱いんだけどね。
だから、こうやって触ってあげれば、それだけでもう、気持ちよくなってくれる。
それでももっと。
もっと、気持ちのいいこと。
シンはちょっと考えてから、まず、少ーしだけ頭を持ち上げかけていた、アスランのモノの先に、キスをした。
「や、シンっ」
びくん、と跳ねた腰を、脚ごと押さえつけるようにして、ぱくんとくわえてむぐむぐする。
「い、いって・・・おいこら！・・・っ、あん！」
「むー、・・・気持ちいいくせに」
怒らせるとめんどくさいから、シンはぬるんと口の中のものを吐き出してそう呟く。
ぬるん、の刺激で一つ喘いで、それからアスランは、自分で脚を自分で開き、とろりと濡れた瞳を上目遣いにしてシンを誘った。
「シン、こっちだ」
「・・・わかってますって」
ああどうしよう、このヒトまじでエロいんですけど。
そう思いながらひとつ深呼吸して、シンはベッドヘッドに常備してしまった、ローションのボトルを手に取った。
あちこちベタベタにするのは好きじゃない。
だから、一度手の上に落とした粘度の高い液体を、指に絡めてそこへとなすりつける。
「んっ・・・・」
腿の内側も耳も首も背中も脇も、踝も足先も、もちろんさっき舐めてあげたやつも、みんな弱いアスランさんだけど、やっぱりここが、一番弱い。
ローションを足した指で、慎ましいフリをして閉じた場所を押せば、すぐに口を開けてぬるりとそれを飲み込んだ。
「あ、はぁ・・・・」
もどかしげに揺れようとした腰を押さえつけ、指をもっと深くする。
ぐりぐりとちょっと虐めるようにすれば、ゆらゆらと揺れていた足先が、ひくんと跳ねた。
「・・・、シンっ！」
「はいはい」
おざなりに答えながらも、アスランの無言の要求には逆らわない。
一度抜き出した指にもう一本を添えて、ローションまみれにしてまた、押し込んだ。
「んーーーーっv」
これだけで、そんな満足げな声出さないで欲しい。
もっといいもの、早く突っ込んであげたくって、俺、うずうずしてるのに。
「二本で気持ちいいの？アスランさん」
「ん・・・・」
二本でそこを擦り立てながら、ちょっとイジワルして聞いてみると、アスランは気持ちよさそうに閉じられていた瞳をゆるりと開けて、生理的な涙の絡んだ睫を瞬かせ。
それから赤い唇で、熱い吐息と共に、答えた。
「さんぼん・・・」
「そーじゃねえだろ」
そう突っ込みながらも、希望通り三本突っ込んでやって。
ぐっちゃぐっちゃと音を立て、まださすがに、三本だときついそこをかき混ぜる。
ローション、もっと足しとこう。
つか、アスランさんのナカ、今日もうごうごのずるずるで熱くってキモチイー
シンの足の間のものは、もう早くこのナカで気持ちよくなりたくってしょうがないのだけれど。
でも、もう少し、ガマン。
今突っ込んだら、さすがのアスランさんもちょっとイタイ。
まあイタイのも気持ちよくなっちゃうヒトだけど、その照れ隠しに暴れられると手に負えない。
だから、もっとキモチヨくなれるまで、ガマン。
「ん・・・っ、シン・・・」
「まだですよ」
「ああん・・・・」
「ヤらしい声出してもムダです」
「何が、ヤらしいって！」
「わざとじゃなかったんですか。あああもうめんどくせー！」
ぐちぐちと言い合いながら、ぐちゅぐちゅとそこを慣らしていくのは、もうどちらも手慣れたもの。
どのくらい柔らかくなれば、アスランが気持ちいいだけになるのかも、シンももう、よくわかっている。
「もういっかな」
呟くと、下から甘くとろけた声が上がった。
「いいって、さっきから・・・」
「言ってないだろ！」
そう突っ込んで。
シンはボタンの外されたシャツをざっくり脱いで、ついでにジーンズもずるんと脱いで。もうふにゃふにゃになった脚を抱き込んで、そのアスランの顔を覗き込んだ。
とろんと潤んだ緑の瞳。
ほんのりピンクに染まった頬。
赤くてキレイな唇を、誘うように薄く開いて。
「・・・はやく」
そんなふうに囁くものだから、もうたまらない。
「アンタって、ヒトは」
シンはそう低く呻いて、滑らかで気持ちのいい脚の間。もっと気持ちのいいそこへ、自分自身を押し込んでいく。
「ん、あ・・・・・・ンんっ」
気持ちよさそうなアスランの声。
そのアスランのナカに絡み付かれて、シンだってスゴく気持ちいい。
それでも、もっと、気持ちよくなりたいなって。
もっともっと、気持ちよくしてあげたいなって。
そう思って、ずるうり、と、それを引きずり出す。
「ンあ！あー・・・・っ」
それからまた、ナカへ。
「あンっ」
それをいっぱい繰り返して、いっぱいいっぱい気持ちよくなる。
今まで繰り返してきたように、いっぱい。
これからも繰り返すように、いっぱい、いーっぱい。
スイッチを入れると、ハロはまた、素っ頓狂な声で歌いだした。
「ハッピバースデー、ツーユー、オメデト、オメデト！」相変わらず半端なところで止まる歌に苦笑いしていると、ハロの電子音声に混じって、甘い声がまた、「おめでと」と言ってくれた。
シンはそれに満足して、騒ぐハロを抱えたまま、お祝いを言ってくれた唇にキスをした。
一緒の誕生日の数だけ、アスランさんのハロ。
シンの、大事な宝物。