シンアス10のお題Ｂ

１．キス

「キスしてもいいですか」
そう聞くと。
「なんでお前は、いつもそう唐突なんだ」
少し怒ったフリをして。
それでも、アスランは仕方ないという顔をして、少し屈んでくれる。
たったの６センチなのに。
悔しいから、思い切り深くキスをした。
赤くなった耳が、可愛いと思った。

２．雨

「急に降ってきたな」
髪の先から雫を払い落とし、目に入ったのかごしごしとこすっている人が幼く見えて、シンは少し笑ってしまった。
「地球の雨、ですね」
「そりゃそうだろ。・・・・ああ、そうか」
取り出したハンカチを、シンの頭にぱさりと落とし。
「そうだな」
突然の雨は、プラントにはないものだから。
「濡れて行くか」
「風邪ひきますよ」
だから、雨に濡れたこの人も、地球だけのもの。

３．待ち合わせ

「まあ、だいたい予想はついてたけどな」
呟いて、アスランは時計から目を離した。
こんなにも待つ羽目になったのは、待ち合わせた時間よりも、ずっと早く来る自分も悪いのだ。
・・・・と思わなければやっていられない。
遅れて来たあいつに、なんて言って怒ろうか。
シンが来るまで、ずっとシンのことを考えている。
そんな時間も悪くない。

４．瞳

まず、魅かれたのはその瞳。

「アスランさんの目って、キレイですよね」
「そうか？」
読んでいた本の前に顔を突っ込まれて、アスランは不機嫌そうだ。
「ほら、邪魔だからどけよ」
ぐい、と頭を押しのけられ、シンは不承不承そこから退いて、かまってくれないアスランにもたれかかった。
それを横目に見て。
「・・・・・お前の目も、きれいだぞ」
「ホントですか？」
ぱっ、と笑った、その赤い瞳にどきどきした。
まず、魅かれたのは、その瞳。

５．喧嘩

「だからお前は出すぎなんだと、何度言えばわかるんだ！」
「あなたが遅いんでしょうただ単に！」
ＭＳを降りるなり、ぎゃあぎゃあと喚き出した二人に、もう慣れたはず整備班も、遠巻きにして近寄らない。
「あの時、俺が間に合わなかったらどうするつもりだったんだ！」
「ああ！余計なお世話ありがとうございます、お礼はこんなもんでイイですか！？」
ぐい、と、アスランの襟首を掴んだシンは、そのまま何かを言い返しかけた唇に、勢いよく自分のそれを押し付けた。
「・・・・・っ！」
ごっ！と、見事な音がして、アスランの拳がシンの鳩尾に入った。
その場にうずくまるシンを置いて、アスランは足早にそこを去っていく。

「相っ変わらず凄まじいわね」
呟いたルナマリアに、その場にいた全員が頷いた。

６．誘惑

誘惑、してる。
・・・・つもりなんか、ないんだろうなぁ。
シンは、自分のベッドですうすう眠っているアスランを見下ろし、暗澹とした気分になった。
わずかに開かれた唇から、やわらかな寝息が零れ。
緩められた襟から、滑らかな首筋が覗いている。
無造作に投げ出された四肢のうつくしさは、無粋な軍服の上からもよくわかって。
我慢しろ、オレ。
この誘惑に負ければ、確実に鉄拳制裁が待っている。

７．バースデー

「アスランさん、オレ、今日誕生日なんです！」
「ああ、そうなのか。おめでとう」
そう言ってアスランは、ぽんぽんとシンの頭を撫でた。
この感触は好きだ。
でも、子供扱いで嬉しくない。
「これで、あなたとひとつ違いですね」
オトナになったんだと、主張してみるけれど。
「来月にはまた、ふたつ違いだよ」
ぽんぽんぽん。
何が気に入ったのか、笑いながら頭を撫で続けるアスラン。
それでもいいんだ。
オレ、楽しみにしてたんだから。
あなたに近い、貴重な2ケ月弱を。

８．唇

いつも、固く引き結ばれているそれが、ふわりと解ける瞬間が好きだった。
「・・・・なんだ？」
こんなときは、緑の瞳も優しく笑んで。
「なんでもないです」
いつも、そんな顔をしていればいいのに。
そう思うと同時に。
そんな顔、自分以外には見せて欲しくないな、とも思う。
勝手に手が伸びて、その唇に触れる。
「ん？」
「いえ・・・・」
指先が触れたままの唇が、更に深い笑みをつくった。
くい、と、押し付ける仕草は、触れた指へのキスだろう。
いつも、固く引き結ばれているそれが、そんなふうに動くなんて、たぶん、シンしか知らない。
だから、それで満足することにした。

９．海

「海ってキライなんです」
そう言った彼は、昏い熱のこもった瞳で、夕日の沈む水平線を睨んでいた。
「そうか」
嫌いだと言いながらも、ここを動かないシンに付き合い、アスランは手すりにもたれかかった。
夕暮れの潮風が二人の間を流れ、消えていく。
「シン」
片手を上げて。
「目を傷めるぞ」
涙を流せないそれを、塞ぐ。
俺も、海を嫌いになりそうだ。
指先の熱を感じながら、アスランはぼんやりそう思った。

１０．お酒

「お酒まで強いなんて、ヒドイじゃないですかぁ」
「わかったから、暴れるな」
暴れても、力の入っていないシンを無造作に引きずりながら、アスランは心底後悔していた。
別に、コーディネイターなら成人といっていい年頃だ。
自分たちだって、この年には飲んでいた。
だから止めなかったし、軽くならと思って付き合ったのに。
「あいつら・・・こいつが弱いの、知ってたな・・・・・」
さっさと逃げたレイやヴィーノたちが、確信犯だったのは間違いない。
「アスランさぁん・・・・」
まだ何やら呻いているシンの足を、わざと曲がり角に当てつつ、アスランはシンの部屋へと急いだ。
先に戻った同室のレイが、しっかりドアをロックしていることも知らずに。

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ちょっと８．唇、別ver.

いつも、固く引き結ばれているそれが、ふわりと解ける瞬間が好きだった。
「・・・・なんだ？」
こんなときは、緑の瞳も優しく笑んで。
「なんでもないです」
いつも、そんな顔をしていればいいのに。
そう思うと同時に。
そんな顔、自分以外には見せて欲しくないな、とも思う。
勝手に手が伸びて、その唇に触れる。
「ん？」
「いえ・・・・」
自分の行動をどうしようかと、一瞬悩んだシンに気がついているのかいないのか。
アスランは、何気なくその指先を唇に含み。
「・・・・・なっ！」
ぺっ、と吐き出した。
「まずい」
「・・・・・・・・」
情緒も何もない人だ、と、シンは改めて頭を抱えた。