支配者
ギルバートの太いものが、深く、アスランの中を蹂躙していた。
「っあ・・・ん、は、ぁ・・・・・・」
しがみ付いたシーツは、熱と汗を吸って不快な感覚を返しているはずなのに、アスランにそれを感じ取る余裕はない。
「はっ・・・ん、はんっ、あんっ」
ただ、深いところを目指すようだった動きが、規則正しいものに変わる。
狭かった肉は、彼の大きさに拡げられ。
擦られ、熟れきった襞は、アスランにダイレクトな快感を伝えて。
「気持ちいいんだね？」
「あぅ・・・ン」
前を触れられれば、それだけで弾けてしまいそうになって。
恥も外聞もなく腰を揺らし、その瞬間を迎えようと啼くと、やさしく包み込んでくれたはずのその手が、きゅっと根元を戒め、許さずに。
「まだ、だよ。君はさっきイったばかりなのだから」
その声にさえ身を震わせるアスランに、ギルバートは笑いさえ滲ませて、すっかり手の内にある少年に、とどめのように囁いた。
「今日は朝まで付き合ってくれるという約束だろう？・・・なら、我慢しないと持たないよ」
「はっ、ぁ・・・い。・・・っ、ああっ・・・・」
やっとのことで返事を搾り出したアスランは、再びの動きにほろほろと涙をこぼし、シーツに吸わせる。
自分の中が、彼を食い締めるのがよくわかる。
達せない苦しみに、びくびくと痙攣する勝手な肉に合わせ、彼はいっそう酷くアスランの体を扱った。
「いっ、や・・・・あっ、あぅ・・・・・っ」
耐えかねて逃れようと足掻いても、身の内深く男を迎え入れ、もう十分に陵辱を加えられた体は言うことなど聞かず。
代わりに、いっそう深くまで打ち込まれた楔が、惨く押し開かれたその奥に、どくどくと幾度目かの精を注ぎこんでいた。
赤い軍服を剥ぎ取られ、恥ずかしくてたまらない姿を取らされて。最も秘められるべき場所を他人に晒し、体の中までを、好きなように嬲られて。
それでもアスランは、その行為に無上の快楽を感じていた。
支配される快感。
抗えない相手、抗えない姿勢、抗えない状況、抗えない、快感。
それに、身も心もすべて預けて。
自分を、放棄する快感。
今、アスランは何も考えなくていい。
男に蹂躙されるだけの肉の塊に、どんな思考がいるだろう。
苦痛も快感も、ただ与えられるだけのものであり、アスランはただ、それを甘受し、のたうって相手を悦ばせれば、それでいい。
「ぁ・・・・・」
最後の一滴までを受け止めさせられ、ずる、と抜き出されると、アスランはそのまま細い声を上げてシーツに倒れ伏した。
腰の辺りが、真新しい粘液で濡れている。いつ自分が射精したかなど、まったくわからなかった。
「アスラン、こちらを向いて。そう、顔を見せてくれないか？」
言い方は柔らかいが、それは紛れもなく強制。
ベッドに張り付いたかのような腕を無理やり立てて肩を浮かせ、なんとか上半身だけよじる。
それだけで、体重を掛けられた腰が痛んだ。
朝までなど、とても持ちそうにない。
「いい顔だ。最中ももちろんいい表情をするけれど、君はこういう時、また格別の美しさを見せるね」
「・・・ありがとうございます」
かすれた声が、それでも引っかかりもせずに出たことが不思議だった。
それに、ギルバートは満足げに笑い。
「さて、君の方もそろそろ限界のようだし、少し趣向を変えてみようか」
アスランの体力が限界に近いとわかっていても、ギルバートには彼を責める手を緩める気はさらさらない。
なんでもないことのように取り出された手錠。
両手首を拘束するそれに、アスランは進んで手を差し込んだ。
かちり、と、輪の締まる音。
触れる金属。
冷たい。
その感触にゾクゾクする。
疲れ切った腰に震えが走り、注がれたものがこぷりと溢れる。
「ああ、出てきてしまったね。その手で、中から掻き出せるかい？」
できると、アスランがそれをすると知った上での命令に、素直に従う。
彼に見えるようにと腰を上げようとして失敗し、また、失敗し。
三度目に、ようやく立った膝の間を、ひと括りに繋がれた両手がくぐっていく。
そうして、力に入らない指を自らの穴に押し込め、押し広げて。
「ふぅっ・・・・」
がくがくとする膝はかろうじて崩れず、既に汗と精液で濡れた腿を、新しい汚れが伝い落ちていく。
「ん、あ・・・・」
「いやらしい、眺めだね」
そんなこと、見えなくても、わかる。
しかしわざわざ口にされたことで、アスランの指は羞恥に強張り。
それもすぐにまた、ギルバートの望むままに淫らな作業を繰り返す。
「うん。いい子だ」
言葉と共に、冷たい手のひらが差し上げられた尻に触れた。
そうしてするりとそれを撫で、濡れた腿を浅く滑って腰の前へとまわされる。
「自分で触って、感じてしまったんだね」
シーツに顔を埋めながら、アスランはこくんと頷いた。頬に触れたシーツと髪に、さりさりと肌を擦られるだけでも感じてしまう。
「手錠も、イイかい？」
こくこくと頷くたびに、指に感じる自身の内部が、ひくひくと震えるのがわかる。
彼の手の中の自分が、期待に硬く張りつめていくのが、わかる。
はやく・・・
声にならなかった願いを、しかしギルバートはその優しさでもって叶えてくれた。
「はっ・・・ぅぁ・・・・っ」
受け入れた体に、もう啼き声を上げる力もない。
ことさら乱暴に抜き取られた指は体の下でシーツを掴み、金属の輪はアスランの手首をきりきりと傷付け、それを繋ぐ頑丈な鎖が、かちゃかちゃと鳴った。
後はもう、支配者にすべてを任せるだけ。
何も考えない。
何もしない。
何も・・・できない。
それだけ。
「君は、残酷だね・・・」
誰かの声が聞こえたような気がして、しかしすぐに「忘れてくれ」と言われたので。
アスランはそれを、きれいに忘れることにした。