おやすみ
きれいなひと、だな。
シンは、眠るアスランの顔を覗き込み、そっとその頬に指を滑らせた。
以外に柔らかな感触が嬉しくて、唇を寄せて、キスをして。
触れた唇の心地よさと、それが許される状況が嬉しくて。
もっと、何かしたくなって。
先刻まで、夢中になって貪った体は、シーツの下に隠されている。
そこにまで、悪戯する勇気はない。
シンは、少しクセのある藍色の髪に指を差し込んだ。
絡み付いては、するりと逃げる。
まるで、その人自身のような触り心地に、微笑って。
ふと触れた耳朶の柔らかさに、驚いて。
恐る恐る、指先で、なぞって。
湧いた欲求に逆らい切れず、唇で、触れて。
体を、許された時には、己の欲望に夢中で気が付かなかった、たくさんのことが、見えてくる。
このシーツ剥いだら、もっと見えるんだよな。
ごくり、と生唾を飲み込む。
いやでも、ここでヘンなことしたら、次がなくなるかも知れない。
でも、もともと次があるかなんてわからないんだから、今見ないともう二度と拝めないかも知れないし。
えっと。
えっと。
そっと。
そーっと。
シーツを、持ち上げて。
まずあらわれた、薄い肩に、どきどきする。
それから。
も、ちょっと。
「シン」
「うわぁっ」
いきなり開かれた、翡翠の瞳。
思わず飛び下がったシンは、勢いあまってベッドから落ちた。
「何やってるんだよ、お前・・・」
ベッドの上から見下ろして、ほら、と差し出された手につかまり、シンはおたおたと視線を彷徨わせる。
さっき覗いた肩の下、白い胸とか、その先端の紅さとか。
妙に滑らかな腰のラインとか、シンがつけたキスマークまで、まる見えで。
「あ、あの・・・すみません」
少年を引き上げた腕は、細いくせに力強くて、その手で、今度は目をこしこしと擦っていて、可愛い。
「寝ないなら、部屋に戻れよ。シャワー使っていいから・・・」
「すみませんっ、居させてくださいっ」
追い出されるのは、ゴメンだ。
「なら、寝ろ」
ふい、とアスランの腕が伸びて、シンの首を捕まえた。
そのまま、ぐい、と引き寄せられ、ばたんとベッドに倒れ込む。
うわあぁっ
肌理の細かい白い胸が、目の前。
汗を含んだ肌の、甘い匂い。
まわされた腕のぬくもり。
怖々と顔を上げると、柔らかく細められた翡翠色の瞳と目が合った。
「おやすみ」
紅い唇が、すうっと近づいて、思わず見張った目尻に触れる。
「お、おやすみなさい・・・・」
シンの応えに満足そうに微笑って、アスランは、またすぐに柔らかな寝息をたて始めた。
おやすみ・・・・・って、眠れねぇよ！
それでも、目の前に、実に幸福そうな寝顔。
やさしい腕に、抱かれて。
心地良いぬくもりと幸福感に、やがてシンも眠りにつく。
大好きな人と見る夢は、その人の肌のように、甘く、やさしいものだった。