オトナ
カーテンの隙間から漏れるかすかな光が、アスランの滑らかな背中を浮かび上がらせて。
とても、とても綺麗だった。
「・・・シン？」
急に黙り込んだ恋人を不審に思ったのか、アスランは顔だけを上げて、傍らに座り込んだシンを見上げる。
まだ、上気したままの頬。
熱に潤んだままの瞳。
薄い唇が、うっすらと、甘い吐息をついて。
「うん、アスランさん、キレイだなって思って」
素直にそう言えば、照れたアスランはなんだかわからないことを口の中でつぶやきながら、ぽふりと枕に顔を埋めた。
かわいい。
しかし、すぐに顔を上げて。
とろりとした目でシンを見上げて。
笑って。
「お前ももう２１か・・・大人になったなぁ」
そう言って、わずかに身を起こして、シンの頭をがしがしと撫でた。
言っていることと行動がいまいち合っていない。
でも、そんなところもかわいいと思う。
そう、シンは今日、２１歳になった。
アスランはそれを祝ってくれて、プレゼントにハロをくれて、一緒にご飯を食べてくれて、泊まっていってくれて、多少好き放題しても、怒らないでいてくれて。
そうして、昔と変わらず、シンの頭を撫でてくれて。
「アンタそれ、大人の男にすることじゃないですよ」
「２１くらいで大人って言うな」
「さっきと言ってること違う・・・」
隣にぼふんと倒れ込むと、アスランは答えずにまた、シンの頭をがしがしと撫でた。
大人になった、と思ったのは本当だ。
出会った頃は、成長期特有の細い骨格と薄い筋肉を持っていた彼の、今、目に映る肩は逞しく。
アスランはそこに額をつけて。
しなやかな背中に腕をまわして、その肉体を愉しんだ。
一目でわかる、ほぼ混じりけなしのモンゴロイドだから、大人になっても大きくなりすぎることもなかった体。
それに悩んでいたこともあったけれど、アスランがこれが好きだと言えば、すぐに機嫌良く、その大好きな体でアスランを抱いてくれた。
大好きな、シンの体。
「アンタ、かわいい」
少しだけ低くなった、それでもかすかに甘さの残る声。
意外と器用な指が、そっと髪を撫でて、それから頬を支えて柔らかなキスをくれた。
初めての頃は、キスひとつで大騒ぎだったというのに、今ではちゃんとアスランをリードしてくれる。
プレゼントに寄越した５つ目のハロを、文句を言いつつもうれしそうにもらってくれたし、する前には明日の予定を気遣ってくれるし、先にシャワーを譲ってくれるし。
その、上手く、なったし。
何そんなことばっかり考えてるんだ俺。
「どしたんですか？」
「いや・・・」
こういうとき、何かを察してくれるようになったし。
「大人になったなと、思ってさ」
少しだけ顔をずらして、片目だけでシンの赤い瞳をのぞき込む。
そうすれば、先ほどのやりとりを思い出したのだろう、子供っぽいむっとした表情をのぞかせて、アスランを和ませた後に。
不意に、その瞳に獰猛な大人の雄の色を、映して。
「じゃ、大人のお祝い、もっとください」
そう言いながら、するりと背筋を撫で下ろした後に、ほんの少し前までシンを飲み込んでいて、未だ潤んでいたそこに、ぬるりと指を差し込んだ。
「ぁ・・・・」
ぬるり、ぬるり。
その滑りの良さは、アスランのそこが、喜んでシンを飲んでいた証拠。
「あ、締まった。気持ちいい？」
「ん・・・悪いわけ、ないだろ」
そう。
アスランが、シンの体のことばかり考えてしまったのは、もっと、シンが欲しかったから。
シンが、足りなかったから。
それをわかってくれるようになった彼は、ほんとうに大人になったと、そう思う。
「入れてあげますね」
脚を大きく開かされる。
恥ずかしくぬかるんだ場所に、シンの熱いものを感じて。
「は、あ・・・・・」
ぐうっと押し入ってくるものは、確かに、大人の男のもの。
「・・・・すご」
かすれた色っぽい声で、アスランの官能をあおってくるようになったのは、一体いつの頃からだったか。
「アスランさんのここ・・・凄い、気持ちいい」
「っ、シン・・・・シンっ」
シンの腕にしがみついて。
甘ったるい声でなきながら、アスランは思う。
シンがいて、良かった。
２１年前、君が生まれてくれて、良かった。
・・・死なないでいてくれて。
本当に、良かった。
その思いも、すぐに快楽の海に消えて。
後はただ、幸せな時間だけが、そこにあった。