大きいってことは
でかい図体して懐かれると、なんだかとってもうっとおしいと、気づいたのはいつだったか。
うっとうしいというか。
その。
「シン、うっとおしい」
とりあえずわかっている単語で呻くと、ぴたりとくっついた体から、恨めしげな声が上がる。
「うっとうしいって、ヒドくないですか、それ」
「うっといしいものをうっとうしいと言って何が悪い」
「だって、シた後はくっつきたいでしょ」
「・・・・・」
アスランは、しばし熟考した。
背中に感じる、早めの鼓動。
アスランを囲い込む長い腕。
逃がさないとばかりに絡められた足。
時折、いたずらに首筋に吸いつく唇。
した後に、こうしてくっついて過ごすのは、確かにとても気持ちがいい。
気持ちいいけれど。
このままうっかり眠りこけそうなくらいには、気持ちがいいのだけれど。
「・・・・・うっとうしい」
「何なんだよそれー！」
ぎゅむ、と、抱き込む力が強くなった。
首筋にいたずらしていた唇が、がぶ、と耳に噛みついて。
「っ、こら・・・・」
ぬるり、と、舌を差し込まれそうになったところで首を振ると、今度は腰を引き寄せられた。
「馬、鹿・・・・」
「アンタが興奮させるからでしょうが！」
散々に、アスランの中で吐き出して、さすがに満足していたはずのソレが、半ば硬さを取り戻しながら、アスランの腰に押し当てられる。
まだ、戯れだとわかっている。
でも。
それでも。
「ん、っ・・・・」
「うわ、そゆ声出さないくださいってば」
アスランの声に煽られて、なんだか準備OKになってしまったソレを持て余し、シンはおろおろと大きな手でアスランの頬を包んで、まだ濡れたままの耳朶に、熱い息を吹き込んだ。
「ねえ、シちゃダメ？」
いつの間にか、追いつかれ、追い越された身長と体格。
うっとうしいほどでかくなったというのに、こういう甘え方は変わらない。
そうして、アスランがそれに弱いのも、また。
「もう一回、だけだからな・・・」
「やった！アスランさん大好き」
「こんな時ばかり・・・・っ、あ、」
ず、と侵入ってくるシンに、続く言葉を奪われる。
つい先ほどまで、擦られ感じさせられていた場所なのだ。未だ引かない熱を点されるには、十分すぎる、その刺激。
「うわ、まだ凄いやらかい・・・・」
「言、うな。っ、あ・・・・・」
不意に大きな波がきて、頭が一瞬白くなる。
早すぎるだろう、という思考の端は、ずるりと引き抜かれたシンでちぎれた。
「や、もっ・・・」
「もっと？こう？」
「ぅ・・・・っ！」
また深々と穿たれて、ふるふると腰が震えてしまう。
きゅう、と食い締めたナカの動きまで、まるごと犯される快楽に沈む。
「ぅんっ、はぅんっ、あ、ああんっ」
ほとばしるのは、雌の喘ぎ。
強い雄に支配され、悦ぶ性を持つ体。
「シ、ン。シンっ・・・・」
夢中になって名を呼べば、その体を引き寄せられて。
これ以上ないほどに、密着していたと思っていた肌を、もっともっとと貪欲に、求められ、愛されて。
「うん。凄い、気持ちいいや、アスランさん・・・・」
出会った頃よりも、少しだけ低くなった声で、そう囁かれて。
大きくかぶりを振ったアスランは、そのまま。
その日、幾度目かの精をほとばしらせた。
汗にまみれた長い腕が、まだ荒く息をつくアスランの、背中を回って絡まった。
「だから、うっとうしいと」
「だーっ！だからヒドイですよ！」
なんだかもう涙目になって、アスランよりもずいぶんと大きくなってしまったシンは、ぐいと恋人の頭を抱きこんで、すりすりとその髪に懐いている。
「でかい図体して懐くな」
「なんでアスランさん拗ねてんの？」
不思議そうなシンの声に、アスランはむっと言葉を返す。
「お前じゃないんだ、拗ねたりするか」
「ええ、だって拗ねてますよ」
「・・・いい加減にしろ」
すっかりへそを曲げてしまったらしく、毛布を被って丸くなってしまったアスランを、可愛いなぁとか思いながら。
シンは、自分の行動を反芻した。
それでも。
「何で拗ねたかな・・・」
「拗ねてない！」
毛布の中の、くぐもった抗議の声。
その本当の理由を、シンは知らない。
いつまでも子供だと思っていた恋人が、いつの間にか自分よりも、大きくなってしまったことが悔しいだなんて。
そんな恋人の、可愛い嫉妬を。
気づけるほどには、まだ。
シンは、大人ではないのだった。