温泉に行こう
温泉に行こう、と言い出したのは、シンの方だった。
休暇が取れるのかとか、なんで温泉なんだとか。アスランがぐだぐだと言っているうちにそれは決定事項になっていた。
アスランは、地雷さえ踏まなければ押せ押せなのだと、最近悟ったシンが、さっさと宿も足も押さえてしまったのだ。
「・・・で、なんで温泉なんだ、シン」
押し込まれたリニアの中、それでも物珍しそうに窓の外を眺めるアスランを、シンは楽しく眺めやる。
「だって、ここんとこ、あんたも俺も、忙しくって全然二人でいられなかったじゃないですか」
オーブ軍の技術部で、技術者兼テストパイロットそしているアスランも。
同じくオーブ軍に入ったはいいが、あっという間に営倉入りを食らった挙句、技術部の下働きに異動させられたシンも。
戦後の復興のため、廉価な作業用ＭＳの開発だの、エネルギー不足解消のための、ジェネレーター開発だのに追い回されて、今まで休暇もままならなかったのだ。
「・・・それは休暇の理由だろう」
「オーブじゃ、休暇っていったら温泉なんです！」
「なんなんだそれは・・・・」
呆れ顔のアスランの声に、シンはむっとして。
それでも、ボックス席の前から手を伸ばされ、頭を撫でられて、あっという間に機嫌を直した。
「まあ、確かに、な」
そうして、アスランは少し目を細めて。
「二人でゆっくり旅行なんて、したことなかったもんな・・・」
「ほんとですよ。・・・あ、じゃ、これって新婚旅行？」
「バカ言うな」
アスランにばっさり否定され、シンはちょっとムッとして。
「てゆかあんた、旅行なんかしたことあんの？仕事じゃなくって、観光とかでさ」
「・・・・」
シンは、真剣に何かを思い出そうとしているらしいアスランの、自分の頭に置かれたままの手を、そっと下ろして手に取った。
そんなこと、真剣に思い出すことじゃないだろ。
すぐに出てこないってことはさ。
なかったのと、あんまり変わんないじゃん。
「ああ、一応あった」
しかしアスランは、不意に嬉しそうに言って軽くシンの手を握った。
たぶん、無意識の動作だろう。
「母に、ユニウス市の熱帯農場に連れて行ってもらったんだ。父と三人で」
「・・・そうですか」
地雷踏んだ、と思ったけれど、アスランは別に気にした風もなく、シンの手から手を離し、少年の頭をもう一度撫でて、それから車窓に視線を戻した。
その顔が、さっきよりも少し、幸せそうに見えて。
シンも、なんだか安心した。
自分で設定しておいて何だけれど。
温泉は失敗だった。
シンは、機嫌よく温泉につかるアスランを横目に見ながら、こっそり小さくため息をつく。
アスランが、大きな浴槽の中で緩く腕を伸ばすと、そのなめらかな肌の上を、ほんの少し粘性を持った湯がとろとろと滑っていく。
白い手がかき乱した湯の面が、設えられたオレンジのライトを弾いて、ちらちらと光っている。
その光越しに、隠す気もないらしい足の間なんかが見えてしまって。
いや、男湯なんだから、隠すことなんかないんだけど。
だからそれが余計にイヤというか、なんというか・・・・
「広い風呂っていいな。疲れが取れる。お前が薦めた理由がなんとなくわかったよ」
そんなシンの心中も知らず、アスランはなんだか御機嫌だ。
この人が喜んでくれるのは、嬉しいんだけど。
だけど！
シンがぷるぷるしていることを、しかしアスランは気にも留めない。
シンの機嫌が急に悪くなることなど、良くあることだからだ。
察しの悪いアスランは、いちいち気にしていたら付き合えない。
だから、無意味に腕を伸ばしては湯を掻いて、その湯ざわりやら波紋やらを勝手に暢気に楽しんでいる。
そうしているうちに、ぱしゃん、と湯が跳ねて、シンの頬にかかった。
「ああ、すまない」
「いえ、いいですけど」
シンはばしゃりと顔を洗うと、そのままざばんと立ち上がった。
「俺、先に上がってます。・・・あんたものぼせる前に出てくださいよ」
「お前、誰に物を言ってるんだ」
「家の風呂で寝てる、あんたに言ってるんです」
「・・・・・・・・待て、俺も出よう」
他にも入浴している人がいるのだから、ここで寝てしまうのは、鈍いアスランでもやはり恥ずかしい。
シンに続いて立ち上がったアスランの、あちこちに傷の残る体。
その上を、名残惜しく纏いついたお湯が、とろりとろりと滑り落ちて。
その肌を、オレンジ色の光がほの明るく照らしていた。
「・・・・」
少年は、前かがみになりそうな事態を、マユやステラを思い出すという戦法で何とか避けて、さっさと脱衣場に駆け込んだ。
「シン、軽く拭いてから上がった方がいいんじゃないのか？床が濡れるぞ」
そして、後ろで偉そうに言うアスランに、なんだかなぁと腹が立った。
「あんたさぁ」
「ああ、なんだ？」
フェイスタオルで体を拭い、シンに並んだアスランは涼しい顔だ。
「自分の体・・・その、自覚しろよ」
エロいんだから。
俺、他の奴なんかに見せたくないんだから。
そう匂わせたつもりのシンに、バスタオルを渡したアスランは、自分のタオルも取りながら、自分の体を見下ろして言う。
「・・・だからってな。消すにも入院が必要と言われたし・・・・・・・」
「何の話ですか」
「戦争で傷を負った人間は、今なら少なくないだろう。自分で思うより、周りは気にしないと思うぞ」
「何の話ですか！」
「だからお前も、もう気にするなよ」
「だからそう言うことじゃないんですってば！」
シンは、タオルでざっと体を拭き、それをばっさりとアスランの上から被せた。
「向こうの洗い場にいる奴と、湯船の向こう側に浸かってた奴！すっげーヤらしい目であんた見てたの気が付かなかったのかよ！」
だから、シンは気が気じゃなかったのに。
「あのなぁ、シン」
アスランは、しみじみと言って。
それから、少し声を小さくした。
「こんなのに欲情するのはお前くらいだぞ、ばかやろう」
「もういいです！」
シンは、ざっと浴衣を引っ掛けて、浴場を後にした。
やっぱり、温泉なんてやめればよかった。
「シン」
「・・・・」
「おい、シン！」
「・・・・」
「いい加減怒るぞ」
「もう怒ってんじゃないですか・・・・」
むっつりしたまま夕食を終えて、布団の上に胡坐をかいた少年は、なんだか凄くいじけている。
丸くなった背中が可愛いなぁとか、アスランは思ったのだけれど、せっかく二人で旅行に来たのだし、このままで良いということはないだろう。
ため息をついて、アスランはシンの肩に手をかけた。
そんなに力を入れたつもりはなかったのに、シンの体はそのままころんと布団に転がって。
赤い瞳が、恨めしげに、情けなさそうに見上げていた。
「いいかげん、機嫌直せ」
「別に、機嫌悪いわけじゃないです」
「お前、顔に全部出るからわかるぞ」
「だってさ・・・・・」
シンは、アスランの浴衣の袖を掴んだ。
しっとりとした木綿の感触。
それよりも、もっと心地の良い肌が、この中に包まれていることを、シンは知っている。
「あんたの体、他の奴に見せるの、嫌だ」
「なら、なんで温泉なんかに連れてきたんだ」
「そこまで考えてなかったんですよ」
「馬鹿だな」
「馬鹿で悪かったですね」
「悪くはないさ」
そうしてアスランは、シンのまだ少し濡れている髪を撫でた。
「温泉、気持ちよかったぞ？」
「あんたさあ・・・・・・」
シンはたまらず、布団から背を浮かせて、覆い被さるアスランに抱きついた。
まだ少し、湯の温みの残る。
湯の香のする、肌。
「天然で誘うの、やめてくださいよ」
「・・・いや、今のは本気で誘ったんだが」
「わかりにくいです。あんたにイカれてなきゃ、気がつかないよ」
「お前、わかったじゃないか。でも天然じゃないぞ」
「なんでそこにこだわるかな」
シンはそれでも、手探りでアスランの浴衣の帯を解いた。
重力で、ぱさりと襟が落ちてきて、アスランの胸があらわになる。
「あ、パンツはいてる」
「当たり前だろう・・・・」
「え、だってわざと誘ったって言うから」
「・・・・誘うって、普通、そこまでするものなのか？」
「わかりませんけど」
でも、そこでそんなこと聞くあんたは、絶対天然。
そう思いながら、シンはよいしょとアスランと体の位置を入れ換えた。
誘ってくれるアスランは、色っぽくてドキドキして凄くイイのだけれど、あの体勢だと、やっぱり少し、やりにくい。
アスランも、大人しくシンに組み敷かれ、しかも片膝を立てて、更に少年を挑発してくれる。
「あんた、やらしい」
「これなら、ちゃんと誘ってるってわかるのか？」
「わかんなかったら男じゃないです」
「難しいな」
「あんただって男でしょうが！」
言い合いながら、シンはアスランの喉に、繰り返しキスをした。
そうして、唇を喉から胸へ、ゆっくりと下ろしていく。
口付けて、舌を這わせて。
そのたびに、白い肌の震えるのを楽しんで。
「脱がせていい？」
「いま、さら・・・・・」
「うん。でもさ」
下着に指を引っ掛けて引きずり下ろすと、既に頭を持ち上げはじめていたそれが、シンの視線にぴくりと震えた。
「見られるのって、気持ちいい？」
「いいわけないだろ・・・・」
いいながらも、アスランの腰が揺れている。
やっぱり、気持ちいいんじゃないか。
そう思いながら、シンはちゅくりと音を立てて、アスランのものに吸い付いた。
「んっ・・・・」
それはたちまち硬くなり、もっと、とでも言うかのように、アスランの腰が何度か浮いた。
それを両手で捕まえたシンは、狭間にそっと指を這わせる。
「濡ら、せ。馬鹿・・・・」
「ふぁい」
咥えたまま返事をすると、たまりかねたように頭を叩かれる。
でも、それも咥えたままだったので、うっかり歯を立てられて。
アスランは、甘い悲鳴を上げてのたうつ羽目になった。
「何やってんですか」
「・・・・ばかやろう」
「あんたがでしょ、さっきのは」
「・・・・・・」
むっつり黙ったアスランに、軽く勝利感を楽しんでから、シンはたっぷりと指を舐めて、再びそこにあてがった。
今度は、つぷりと楽に入る。
シンに会う前から、『愛される』ことに慣れた体は、至極簡単に、異物を体内に受け入れてしまう。
それを、ちょっぴり悔しく思いながら、シンはその指を、くいくいと奥へ押し込んだ。
「ん、こら、シン・・・・」
急な動きを、叱る声音。
脚開いて、あそこに指突っ込まれて。なのにそんな声出して、翠に瞳で睨む人。
まったくもう。
どうしちゃおうかな。
少し考えてから、シンはずるりと指を抜き出して、アスランの体をころりと返した。
「こっちの方が楽ですよね」
そうして、腰を抱き上げて、そこを覆っていた浴衣の裾を、ばさりと捲り上げ、シンに腰だけを突き出すような、そんな恥ずかしい格好をさせてしまう。
「ち、が・・・っ」
脚を開くのと、後ろからするのと。
何故だかアスランは、後ろからする方を恥ずかしがる。
シンとしては、どちらもイヤラシイと思うのだけれど・・・・その辺の基準はわからない。
ただ分かるのは、アスランは後ろからの方を恥ずかしがって。
恥ずかしがる分、こっちの方が感じるということ。
だからシンは、そのまま、晒されたそこにまた指を突っ込んでかき回した。
「あっ、あ・・・・あ、あぁ・・・・」
観念したのか、気持ちよくてどうでも良くなってしまったのか。
アスランはその姿勢のまま、シーツにいしがみ付いて大人しく悶えている。
いや、大人しく、ではなくて。
イヤラシイ腰が、もっと、とでも言うかのように、イヤラシク揺れている。
「やらしー・・・ねえ、アスランさん、もう、いい？」
そんな媚態を見せられれば、年若い少年はもう、たまらなくなってしまうのだ。
早く、このぐちゃぐちゃした中に入りたい。
入って、気持ちよくなりたい。
下肢が痛いほどに張って、もう、我慢できない。
「いい・・・から、シン・・・・・」
この姿勢を嫌がっていたはずのアスランが、そのまま腰を高く差し上げてくる。
シーツに片頬を付いて、甘く濡れた翠の瞳が、とろりとした光を纏ってシンを見上げていた。
シンの目からは、上半身と二の腕までは、宿の薄い浴衣に包まれたまま。
それが、酷く倒錯的で、そそる。
「うん。アスランさん」
ありがと、と、そこは素直にお礼を言って。
少年は、ずるりとそこから指を引き抜いた。
最終的に、三本の指を飲んでいたそこは、赤い肉を見せながら、ひくりひくりと蠢いていた。
そのイヤラシイ場所に、シンは取り出した自分のものを押し付ける。
そこは、ずるりずるりと程よい抵抗を示しながら、ゆっくりとシンを飲み込んでいった。
「ア・・・あっ・・・・あ・・・・・」
アスランの声は、苦しさを滲ませながらも、どこまでも気持ちよさそうで。
奥まで含ませきってしまえば。
「あぅ・・・ん」
と、満足げに喘ぐ。
「気持ちいい？アスランさん」
言いながらゆっくりと腰を回すと、とたんに汗の浮いた背中がびくりと跳ねて、シンを飲んだそこがきゅうっと締まる。
「き・・・くなよ。はんっ」
そう。
聞かなくても、アスランの体全部が、気持ちいい、と訴えている。
硬くしこった胸の先も、シンに握りこまれ、快感をセーブさせられているものも。
甘く擦れた喘ぎ声も、熱くとろけた瞳まで。
全部。
「ン、あっ、シン・・・・・っ」
シンにあわせるように腰を揺らしながら、アスランが強請るような声を上げた。
シンの手の中に捕らえられた前は、内からの刺激で、もうすっかり育ちきり、早くイきたいと、せがむように震えている。
「まだ・・・待ってください。一緒にイきましょう？」
「な、ら、早く・・・っ」
アスランの腰が押し付けられる。
ぴったりと腰に吸い付いた双丘の肉が、びくびくと痙攣しているのが分かって、シンは思わず苦笑してしまった。
挿れられて、感じて。
早くイかせてと、腰を突き出して。
なんて、イヤラシイ体。
大好き。
「わかってますってば」
シンは、捕まえていた前を話すと、しっかりと細い腰を掴み直した。
アスランもシーツをきつく掴んだのだろう。
中も、きゅう、ときつくなる。
「アスランさん。力抜いてください。そんなに締めたら動けないです」
「動、け、このばか」
「馬鹿ったって・・・・もう知りませんよ！？」
荒く言ったシンは、そのきつさを突き破るように、ぐいと無理やり腰を引いた。
「ひっ・・・・」
文字通り、きつく絞り込まれ、シンの方だってちょっと痛い。
でも。
「あっ、んっ、ああっ・・・・」
無理やりに突き動かしていけば、やがて痛みは消えていた。
アスランのそこが、シンに丁度いいきつさになって、シンを受け入れて、シンを気持ちよくしてくれて。
シンを、幸せにしてくれる。
「アスランさん、アスランさんっ・・・・」
「ん・・・くっ・・・シ、ン、も・・・っあ、ああっ！」
高く上がった声と共に、また、きつく絞られて。
その襞の動きに促されるまま、シンはアスランの中を、自分の精でびしょびしょにした。
そうしてアスランも、内を深く犯されたまま、乱れ落ちた浴衣の上に、たっぷりと吐精してしまったのだった。
「っ・・・・・あ・・・・・・」
一度、出してしまった後は、動くのがとっても楽になる。
だからシンは、アスランが自失を起こしているうちにと、抜けかけたそれを、また深くして。
中がゆっくり、ゆっくりと、シンの精を味わうさまを愉しんだ。
甘い襞の蠕動は、天国のような心地良さだ。
「んっ・・・・シ、ン・・・っ」
自分の中で、育っていくものに気が付いたのだろう。アスランが戸惑ったような声を上げる。
「・・・わかります？あんたの中で、大きくなってくの」
「くっ・・・・・」
アスランが気が付いたせいか、そこがまた、きつい締まりを取り戻す。
その締め付けに刺激されて、シンのものが、また、ぐんと大きくなった。
「やっ・・・め・・・・・・」
「でも、アスランさん気持ちいいでしょ？」
そう。
シンのものに呼応するように、アスランのものも、つたないながらも力を持ち始めていた。
「だ・・・めだ。一度、抜いて・・・・」
「いいじゃないですか。このまま、ね？」
少年の甘えた声が、アスランの背筋をゾクゾクと震わせる。
「んっ！」
自分の中のシンのものが、ゆっくりと大きくなっていくさまを、アスランは身を震わせて、過敏な襞で存分に感じ取っていた。
シン、の。
どんどん大きくなって。
俺の中。
あぁ・・・・駄目、だ。
「ひ・・・・んっ・・・・・！」
「？・・・え、あ、アスランさんっ！？」
とうとう泣き出してしまったアスランが、ふるりと身を震わせる。
シーツを掴んだ指が痙攣して、上がった小さな声がシンに事態を伝えてくれた。
「後ろだけイっちゃった？これだけで？？」
「も、や・・・・・っ」
どうにかして。
濡れた瞳で縋られて、少年は完全に力を取り戻す。
最奥まで押し広げられ、アスランはまた、可愛い悲鳴を上げた。
「ひんっ」
「・・・・すいません。でもちゃんと、気持ちよくしてあげますから」
「ば・・・っ」
罵倒したくても、もう言葉にならないのだろう。
アスランは大きく首を振ると、シンの手に身をゆだねきった。
酷く感動しながら、シンはその体をぎゅっと抱きしめて。
そんな刺激にさえ、ぴくぴくと反応する人をいとおしく思いながら。
気持ちいいその人の中で、その人を、気持ちよくさせてあげるために動き出す。
「んっ、や、あ、あン、あっ・・・・」
普段のアスランからは、想像もつかないような、高く甘い声がひっきりなしに上がる。
その声の響きまで、十二分に愉しみながら、シンは何度も、何度でも、その人の中に注ぎ込んでいた。
「・・・・風呂で嫉妬して、馬鹿みたいだな、俺」
小さく呟いた恋人に、精も根も尽き果てていたアスランは、それでも薄目を開けて見上げてやった。
垣間見えた翠に満足して、シンも笑って言葉を続ける。
「あんなあんた見られるのって、今は、俺だけなのにさ」
「・・・・当たり前だ、馬鹿」
「バカバカ言い過ぎですよ」
「・・・・バカ」
吐息で言ったアスランは、そのまま、また目を閉じてしまった。
おそらく、今度は眠ってしまったのだろう。
そんな恋人にキスをしながら、シンは明日はどうしようかと頭をめぐらせた。
無理をさせてしまったから、朝はのんびりして。
それから、二人で少し歩こうか。
この人、俺の恋人なんだって、見せびらかして歩きたい。
夜にはまた風呂に入って、エッチして。
風呂でだって、見せびらかしてやるんだ。
こんなキレイな人、俺の恋人なんだぞって。
幸福に、思わず頬が緩んで。
そんな、だらしのない顔のまま、少年も眠りに落ちていく。
二人の新婚旅行の夜は。
こうして更けていったのだった。