あかい、かわいい唇が、ちまっと開く。

そこへ、楊枝の先の白瓜が、あむ、と仕舞い込まれ。

ちょっと膨らんだ頬が、むくむくと動く。

やがてそれが小さくなると、白い喉が、とくん、と上下する。

それから、唇がもう一度開いて・・・

「・・・・泰明殿、どうか、なさったのですか？」

今度は、言の葉をつむいだ。

夏の午後、白瓜を手土産に仁和寺を訪れた泰明を、永泉は満面の笑みで迎えた。

寺の者に瓜を切ってもらい、風通しの良い簀子の上、ふたりで並ぶ。

「おまえのくちびるは、かわいいな」

思ったとおりのことを口にすると、

「え・・・・・」

と呟いて、ぱあっと赤くなった。

かわいい。

「え、あの、その・・・・」

そう言ってうつむいてしまうと、かわいい顔が見えなくなってしまう。

それを残念に思った泰明は、白瓜をつまみあげると、ずい、と永泉の口許に突き出した。

「食べろ」

「あ・・・」

更に、赤くなる永泉。

それでも、あかい口は、あーん、と開いて。

泰明の指ごと、白瓜を含む。

人差し指で、瓜を口の奥まで押し込むと、ちょっとびっくりして固くなった舌に触れた。

表面をなだめるように撫でてやると、それは、ふ、と柔らかく解ける。

そのまま指が口腔内を楽しむに任せ、指のほうは噛まないように、口の奥でもごもごと瓜を食むと、んっく、と飲み込んだ。

そのはずみで、ちゅっ、と吸ってしまった指は、わずかに白瓜の味。

その甘さに誘われて、いまだ留まったままのそれを丁寧に舐めはじめる。

少しざらつく指の腹に、強く舌を擦りつけると、甘みと、痺れるような快が永泉の中でさざめいた。

「ん・・・・ん」

指が舌を絡め取るように動き、曲げられた第二関節が頬の内側をくりくりと撫でまわしている。

ちゅ・・・

指に滴った唾液が、薄く開いたくちびると音をたてる。

そして、その音が、
永泉を、我に返らせた。

かあああああああっ

土産の瓜のようだった白い喉までが、あかく色づく。

慌てて離したくちびると指との間に、透明な糸が引いて、更に永泉を恥じ入らせた。

そうして、うつむいてしまった永泉に、あるかなしかの笑みを浮かべた泰明は。

もうひとつ、白瓜をつまんで永泉に差し出した。

あかい、あかい唇は。

恥じ入りながらも、恋人の指に従って。

あん、と

開く。

暑い、熱い

夏の、昼下がり